日本人のマネッコの上手さにはいつも驚くが、ピッツァに関してもそれが言える。
昔はイタリアに行くと、石釜で焼いた本場のピッツァを食べるのが楽しみだった。それがいつの間にか、石釜ピッツァは日本でも珍しいものでなくなり、味も本場にひけを取らないものがどんどん登場してきた。
「モッツァレッラ・ブファッラ(水牛のモッツァレッラ)」なんてものも、幻の素材だと思っていたら、あらあら、Mizumizuにとって日本の田舎を代表してる(←失礼!)山口県山口市のレストランでも空輸のモッツァレッラ・ブファッラが食べられるではないか。
ただし、さすがにいかな空輸とはいえ、味はかなり抜けてしまったシロモノだが。
まだ石釜ピッツァが珍しいころは、ビールを併せて注文し、フォークとナイフでピッツァを食べてるだけで、
「あ、イタリア帰りですか?」
と言われたものだ。
そう、イタリアのピッツェリアでは、普通ピッツァを手でつまんで食べることはない。ナイフで切ってフォークで口に運ぶ。そして、ワインではなくビールと楽しむ。
・・・と言い切りたいところだが、実はちょっと自信がない。ピッツァ=ビールというのは、イタリアにいる間になんとなく「そういうもの」だと刷り込まれただけで、ピッツェリアのイタリア人客誰も彼もを注意して観察したわけではないからだ。
よくイタリアで日本人が食事のあとにカプチーノを飲んでる姿も、相当変な気がする(普通はエスプレッソで締める)のだが、日本で日本人がピッツァにワインを合わせてるのも、なんだかちょっと変に見える。
どうして、と聞かれると、「うッ・・・」と詰まるのだが、やっぱりピッツァには水っぽいビールだと思うのだ。
荻窪には、石釜ピッツァの店が複数ある。クリスピーな生地で有名なのは、「
ラ・ヴォーリア・マッタ」だが、ナポリ風のふわふわ生地で美味しいピッツァを出すのが、
Pizzeria da Giovanni (ピッツェリア・ダ・ジョヴァンニ)。
マルゲリータ、クワトロフロマッジなど、シンプルなピッツァを好むMizumizuは、マルゲリータ・フレスカを注文。
「フレスカ」とはフレッシュのことで、普通のピッツァ・マルゲリータがトマトソースを使うところを、生のトマトの薄切りを使っている。フレスカのほうが多少値段が張る。普通のトマトソースのものも食べたがどちらも十分に美味しかった。
少し焦げているのが、いかにも石釜直火ピッツァらしい。イタリアだともっと全面焦げ焦げのものを平気で出してくる店もある。もちろん、抗議すれば焼き直してくれるが、黙っていればそれでOKだということになる。
合わせたビールはやはりイタリアの「ナストロ・アズッロ」。イタリアでは多分、一番飲まれている、クセのない軽いビールだ。
隣りの客も向こうの客も、やっぱりピッツァと一緒にワインを飲んでいる。地元客相手にやっているイタリアの夜のピッツェリアは、日本のピッツェリアよりずっと開放的な雰囲気で、たいてい若い男の子がビール片手に大騒ぎしているのが、日本のピッツェリアは大人しいカップルや家族連れ。味はイタリアのピッツァそのものだが、そこに広がっている風景がなんとなく違う。