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Mizumizuのライフスタイル・ブログ

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2010.07.30
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カテゴリ:Figure Skating(2010-2011)

<きのうから続く>

こんな点を基準にするから、トリノではもう点のおかしさが隠せなくなっただけの話だ。このデタラメ採点がはっきりと暴走を始めたのもロスの世界選手権。これまでと同じ演技をしているだけなのに、キム選手の「スケートの技術」を含めた演技構成点がいきなりハネ上がった。この「発狂」採点に、表立って識者からの批判がなかったことが、翌シーズンのあちこちであがる発狂花火採点につながった。

さらに悪いのは、こうした結果に対するジャッジの責任感があまりに薄いことだ。ジャッジは自分のつけた細かな点についてだけ正当化する。1つ1つは後付けでなんとでも辻褄合わせができるから、いくらでも正当化できるのだ。順位が妥当なら、フィギュアスケート関係者は文句を言わない。むしろ、素晴らしい演技に対して「歴代最高得点」、あるいはそれに近い高得点が出ると、旧採点時代の「6.0」点が出たときのように、観客が盛り上がると勘違いしているようだ。ルールをまったく知らないニワカなファンなら単純に、「凄いね~」「そんなに凄い演技だったんだ~」と感動してくれるかもしれない。だが、ルールを知っているファンは、盛り上がるどころかドッチラケだ。

総合的に見て順位がおかしくなっても、審判のほうは、自分たちは規定どおり採点しただけで、順位を付けたわけではないという態度だ。「この加点は妥当ですか?」と聞かれると、「妥当です」と答える。「DG判定が厳しくありませんか?」と聞かれると、「他の試合と比べて厳しかったかどうかはわからない」と答える。

「控えめに言っても、恥ずかしい採点」とまでビアンケッティ氏に言われた採点だが、実際に採点に携わった当のジャッジにその自覚が何もないというのも、ある意味で驚かされる。

現行の採点は、もともと「木を見て山を見ず」の傾向のある採点だった。トリノでキム選手と浅田選手のフリーの採点に起こった本末転倒の現象は、目立つ枯れ木があちこちにあって全体の山が美しくないのに、数本の木が優れているといって過剰な点を与えてしまい、別のほぼ完璧に美しい山(しかも、その山の木のもつ欠点はほとんど誰にも見えないにもかかわらず、信じれらないほどの低評価を与えられた)より評価が高くなってしまったということなのだ。

そして、その採点に携わった当のスペシャリストは、自分たちが行った「木」の判定は間違っていないという傲慢な前提で、「点が低くなるのはルールの問題で、ISUが考えるべきこと」と責任逃れをしている。これは見方によっては、仕方ない面もある。スペシャリストを含む技術審判は判定を行うだけ。演技審判はエレメンツとコンポーネンツの点をそれぞれつけるだけだから、誰が張本人で明らかに不適切な順位になったのかと言われても、誰にも明確な責任はない。

ビアンケッティ氏は今のジャッジを「スーパーのレジ係」に譬えたが、Mizumizuは、今のジャッジは派遣社員に近いと思う。「この国でフィギュアなんて、一体何人がやってるの?」というような国のジャッジも格式の高い国際大会の採点に入ってくる。彼らにどれほど「質」を正しく評価できる眼があるのだろう。昔のジャッジは少なくとも、今よりは権威があった。

しかも、演技審判の出す点は匿名になっている(これは今回のルール改正でも変わらなかった)。こうした採点手法は、そもそも社会常識に照らしておかしくないだろか? 正しい順位が出ないのは、点のつけ方がどこかでおかしいからだ。多くのファンは今のメチャクチャな採点に大いにストレスを感じている。トリノでは観客からブーイングの嵐が吹き荒れた。だが、ISU組織の内部、それも上に行けば行くほど、普通の社会常識は通用しないようだ。こうした傾向は何もフィギュアに限らない。1つのスポーツ競技、その狭い世界の中ではありがちなこと。

現行ルールにおいても多くのフィギュア関係者が、順位点として採点を見ている。だとすれば、各ジャッジが責任をもって順位点をつけていた旧採点法のほうが優れているのではないだろうか? 質の評価や演技構成点のような主観点に重きを置くとなればなおさらだ。「木を見て山を見ず」になりがちな、細かな点の積み重ねによる採点よりも、全体の山を見て総合的に順位を出していた旧採点法のほうが、少なくともジャッジが正しいと考える順位で点を出すことができる。なぜ旧採点に戻さないのか?

 実際には、戻したがっている関係者も多い。ビアンケッティ氏もその1人だ。旧採点法は長く続いた歴史がある。100年ごしのルールだ。新採点システムは、この短い期間でどんどんボロが出て、ボロを繕うためにさらにボロを当てている状況だ。なぜ旧採点に戻せないのか。今となってはISUの思惑もあるだろうが、もともとは新採点システムは、IOCの強い意向を受けて構築されたものだからというのがその理由だ。

ソルトレイクの採点スキャンダルのあと、IOCはISUに対して、明確な客観的基準のない旧採点システムが不正を招く元凶だとして、「客観的基準」を作るよう要請した。そうでなければフィギュアは、オリンピック競技としては認められない。これはある意味で、当然の要請だったと言える。

そのために設けられたのがジャンプの基礎点や、スピンやスパイラルやステップのレベル認定だ。これぞまさに客観的基準。これに基づいて採点すれば、誰もが納得できるわかりやすい採点になるはずだった。

トリノオリンピックまでは、この「客観的基準」はある程度機能していたと思う。皮肉なことに、平松純子氏は、トリノオリンピック後のインタビュー(こちら)で、新採点システムでフィギュアは、「よりスポーツ的になった」と言っているのだ。「(これまでは)失敗したのにどうしてあんな点が出るのとか、過去の成績や評判が影響しなかったとは言えないものがあった(のが新採点システムでよい方向に変わった)」「ショートで8位とか10位でもフリーで頑張って得点を稼げば、点差さえ少なければ1位になることがあるというほど下からも上を狙えるようになった」と言っている。そうした平松氏の発言に対して、ファンからの大きな反発はなかった。

ところがバンクーバーを控えたシーズン、ここ2シーズンの結果はどうだっただろう? 徐々に、「これはスポーツではなくリサイタル」(ストイコ)と呼ばれるような操作感アリアリの結果になり、ショートでメダル候補がくっきりと「仕分け」され、(8位から1位へなどという)大逆転などまったく見なくなった。ショートで驚くような点差をつけられ、フリーで下位の選手が頑張ってもメダル仕分けの選手と演技構成点で差をつけられて、下からは逆転できない。

「失敗したのにどうしてあんな点が出るのか」「過去の成績や評判が影響したのではないか」――これぞまさに、トリノワールドのキム選手の点に対する外部の人間の感想ではないか。「過去の成績や評判が影響しない採点」を自ら謳っていたくせに、今やフィギュア関係者自ら、「フィギュアというのはやはり、過去の実績がモノを言うから」と実際の演技の出来を反映していない得点について、後付けで苦しい言い訳をしている。

だが、わずかながら、トリノワールドの女子採点について批判的なコメントをした「組織内部の日本人」もいる。ISUジャッジの藤森美恵子氏だ。「これだけ失敗しているのに、なぜそこにいられるの?」「もっと高くてもいいんじゃないの?」といった多くの批判があったことを認めたうえで、ジャッジの感性でつけている点の妥当性に疑問を投げかけている。当たり前といえば当たり前の話だが、その当たり前の感覚を、自分たちの理屈だけの世界の中で見失っているジャッジが多すぎる。

このごくごく常識的な感覚をISU理事に就任した平松純子氏が失っていないことを祈るばかりだ。最近のインタビューを読むと、藤森氏のもっている常識的な感覚を平松氏も共有しているのか、やや疑念を抱かずにはいられない。

これはかなり重要なインタビューだと思う。日経新聞のフィギュア記事は日本の新聞のなかではレベルが高い。ある程度ルールとジャッジングの傾向を勉強している記者が書いているようだ。

個人的な思い出話だが、ルー・チェン(陳露)がNHK杯で2連覇したときに、日経は、「NHK杯初優勝」と間違った記事を出したことがある。Mizumizuがすぐに電話で指摘したところ、「調べます」と言って、翌日にはちゃんと訂正記事を出した。一読者からの電話一本に素早く対応したのは、当時は当然とも思ったが、誤認記事をホッタラカシにしているメディアがのさばっている現在の状況を考えると、「まっとうな仕事をする」メディアの存在は今後ますます貴重になるかもしれない。

インタビューをもとに構成した記事全文は、こちら

<明日に続く>

 






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最終更新日  2010.07.30 18:07:10



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