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<続き>
ルールとジャッジングと闘うという意識を日本スケート連盟、いや日本のスケート関係者全員が持たなければ、日本にいくらいい選手がいても、結果は出ない。韓国のスケート連盟は、「キム・ヨナに不利な点が出ないようにスポーツ外交に力を入れる」と自国の選手を全面的にバックアップした。キム選手に不利な判定が出ると、メディアが一斉にその審判を叩き、しかも執念深くそれが誰なのかを忘れない。こうした姿勢を褒めるわけではない。だが、日本に一番欠けた視点であることは間違いない。 今回ショートで高橋選手のフリップにEがついた。昨シーズンまでは何も問題なかったはずのフリップの踏切がいきなり問題アリの選手にされてしまったのだ。すると「踏み切りのミスで減点された」と新聞は書く。あの明らかにインサイドに体重をかけて跳んでいるフリップになぜEなのか。そこまで言うならキム選手のフリップのほうがよほど中立に近く見える。 咋シーズン初めのジャパンオープンで、プルシェンコ選手のフリップにもいきなりEがついていた。プルシェンコが現役復帰してきても、こうやって細かいところでイチャモンをつけてジャンプを減点すれば、点は伸びてこない。 こういうE~加減な判定がどうしてまかりとおりのかについてはすでに、こちらで書いた。フリップの不正エッジであるアウトエッジで踏み切らなくてもEをつけることはできるのだ。 審判の責任逃れになり、いい加減な判定と加点・減点を助長させるようなルールは作るべきではない。 今回、若いロシアのガチンスキー選手があっさり銅メダルを獲った。ソチに向けてロシアは着々と若手選手を強化している。カナダは1人の選手だけを見定めて強化し、他の選手はどうでもいいとでも言わんばかりだ。日本だけが公平性にこだわり、選手をやたら試合に派遣して消耗させている。 高橋大輔を体調不良のまま全日本に出させるくらいなら、スピンのレベル取りのための特訓を日本人スペシャリスト総出でやったらいいではないか。だが、日本の商業主義はそんなことは許さない。高橋大輔が出ると出ないとでは世間の注目度が違いすぎ、テレビの視聴率にも大きく影響するからだ。 チャン選手はいきなり4回転を跳べるようになったわけではない。オリンピック前から「パトリック・チャンが4回転を決めたときの理想的な軌道」というビデオを作るなど、システマティックな強化に乗り出していたことは、すでに報道されている。日本はコーチの経験頼みで、結果が出ないと全部選手の「メンタルが弱い」で片付ける。 結局のところ、日本は選手強化を商業主義に頼り、カナダ・韓国それにロシアもここにきてようやく、国策として強化している。日本の場合は、試合までの期待感を高めて、値段をつり上げたチケットを売りさばき、視聴率を稼げば商業主義の目的は達せられる。だからその分、選手が思ったような演技ができなかったり点がでなかったりすると、すべて選手のせいにして叩いている。ますます日本を蹴落としたい国の思うつぼだ。高橋選手と浅田選手の二連覇に期待したファンもいるかもしれないが、採点を見れば、日本人に二連覇させる気がなかったのは明らかだ。 そもそもシーズンの採点の流れから見ても、高橋選手の二連覇は限りなく不可能になっていた。それを無視してメディアはむなしい期待を煽りつづけた。台湾では一部無料で配布されたフィギュアの観戦チケットは、日本では高騰し、さらに転売目的で買い占める人間も出ていた。日本人ファンもそろそろもっと冷静になったほうがいい。贔屓の選手を応援したい気持ちは大切だが、ものごとには常識というものがある。値段をつり上げる目的で転売されたチケットに手を出せば、さらに組織的な買い占めが幅をきかせ、チケットの価格はますます高騰し、本当に選手を応援したい普通のファンの手の届かないものになってしまう。それほどの価値が今の試合にありますか? 今回の世界選手権で、いかに採点が疑わしいものかより明瞭になってきたから、ある意味、公平な試合を見るつもりでいた日本人ファンの頭を冷やすいい薬になったかもしれない。蓮の花は美しいが、それが咲いている池はあまりにドロドロと濁っているということだ。 高橋選手の演技前に出たチャンの銀河点。バンクーバーの女子フリーで、浅田選手の演技の前に、事実上「金メダルはキム・ヨナにしかやらない」宣言も同然のとんでもない点が出たが、あのときと流れは同じではないか。ジャンプの難度をジュニア時代からほとんど変えなかったキム選手と4回転に2度成功したチャン選手を同等に扱うのは逆に不公平だし、確かに今回のチャン選手の演技は素晴らしかったが、こうした銀河点が出るに至るお膳立てと流れは同じなのだ。本当はバンクーバーでこうしたかったはずなのだ。それを阻んだのはやはり、プルシェンコの参戦だろう。あれであせったチャン選手は怪我をして調整が出遅れ、オリンピックでジャンプを失敗した。だが、その分を同じ北米勢であるアメリカがちゃんと持って行ったということだ。 キム選手とチャン選手は、ISU指定特別強化選手とでも呼ぶべき、特別扱いの選手なのだ。今回のワールドでますますそれがハッキリした。 女子の表彰式、チンクワンタ会長は台の一番高いところにのぼった安藤選手にはそっけなかったが、キム選手にはなにやらさかんに言葉をかけ、キム選手がそれで落涙するという不可解な場面が展開された。気のせいか、花束も銀メダルのキム選手に贈呈されたものがひときわ大きく、豪華に見えた(表彰式の動画はこちら)。 韓国の大韓航空とISUとの「親密すぎる関係」はすでに、IOCから警告されている。 http://japanese.joins.com/article/615/134615.html?sectcode=&servcode= 平昌招致委員会関係者が4日に明らかにしたところによると、国際オリンピック委員会(IOC)倫理委員会が平昌招致委員会に対しIOC規定を順守するよう警告を送った。大韓航空が国際スケート連盟(ISU)と交わした後援契約がIOC規定に反するというのが理由だ。一部欧州メディアの主張を受け入れたものだ。 平昌冬季五輪招致委員会の趙亮鎬(チョ・ヤンホ)委員長は大韓航空の親会社の韓進(ハンジン)グループの会長で、ISUのチンクワンタ会長が五輪開催地選定の際に投票権があるIOC委員ということを問題視した。後援契約が平昌の得票活動につながるという論理だ。平昌に対する欧州の競合都市の牽制と解釈される。 平昌招致委員会とISUとの「不適切な関係」が表沙汰になったのは、欧州メディアの報道から。こうした「(ライバル関係に当たる)他国」へのチェック機能を日本のメディアは、まったく果たさない。せいぜい日本はダメだと日本人に信じ込ませるか、自国の悪口を他国に広めるだけだ。 フィギュアに関して言えば、日本とカナダ・韓国の採点競技に対するアプローチの差を選手とコーチに埋めろというのは無理な話だ。選手がルールに対応するよう努力するのは当然だが、ルールの不備やジャッジングの不公平を指摘していかなければ、これからも同じことがくり返される。本当の意味で、日本が一丸にならなければ、いくら天才的な選手がいても、ソチではまた「メダルは一国一名様限定」の原則にそって、誰か1人がいい演技をしたら他の選手の点は「なぜか」伸びず、そして首尾よくいってやっと台の1つを「分けてもらう」という結果になりかねない。 <終わり> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.05.17 03:43:10
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