ダイナースカードの会員誌『シグネチャー』の最新号で山口がフィーチャーされた。タイトルは、な、なんと「美食王国、山口」。
そうだったのか!? 『シグネチャー』によれば、瀬戸内海と日本海に面している山口は、食のゲートウェイなのだとか。
フムフム、言われてみれば、たしかに。下関のふぐは言うまでもないが、萩ののどぐろ、仙崎のいか、秋穂の車えび、周防大島の穴子・・・挙げてみればいろいろあるではないか。
個人的には、好きなものも、さほどとも思えないものもある。値段が高いものも、手ごろなものもある。美食の王国は、ちょっとばかり(いや、かなり?)言いすぎだとしても、こうした地方の特産物を食す楽しみは、ミシュランよろしくクルマを飛ばして、その土地の風土もろとも味わうことだろう。
Mizumizuが穴場的に気に入っているのは、周防大島。ここは、山口の中でも温暖な気候で知られ、みかんの名産地でもある。
ひねもすのたりの、穏やかな瀬戸内海と、そこに浮かぶぼこぼことした緑濃い小島を眺めながら大島へ向かう橋をわたると、心まで温かくなるようだ。
穴子というと、世界的観光地の宮島のほうが全国的には有名だが、大島は「知る人ぞ、知る」ところ。Mizumizuが好むのは、「
あなごのさかえ」という小さな店の「あなご押し寿司」。
注文を受けてから穴子を焼く。焼きあがった穴子をカウンター奥で押し寿司に仕上げる。東京で食べる穴子は身がふにゃふにゃと変にやわらかく、濃いめのタレでごまかしているふうだが、ここの穴子は、ふわっとやわらかながら身がよくしまり、みじんの生臭さもない。
「あなごのさかえ」の押し寿司は、間に大葉がはさまっていて、さわやかなアクセントになっている。それも気に入っている。タレも上品で甘やかに軽い。それがきゅっと凝縮した寿司飯の酸味とあわさる。素敵なコンビネーションだ。ああ、日本人でよかった(笑)。
ここは穴子のてんぷらも美味らしいが、行くとついつい押し寿司のほうを頼んでしまう。もっと近所に住んでいれば、ほかのメニューを試すくらい頻繁に通えるのだが。
「あなごのさかえ」は、実はそれなりに有名な店らしく、中に入ると著名人の色紙が飾ってある。場所はわかりにくい。大島へ入り、国道437号線を走って、久賀港にある土産物店前の信号を右折。「山口銀行」の看板が見える路地なら、正解。だいたい国道から200メートル弱ぐらい。駐車場ももちろんある。
この写真は路地の奥から撮ったもの。国道からは「あなごのさかえ」の看板は見えないので、クルマで来るときは、「山口銀行」をとりあえず目印にするといい。
しかし、真昼間だというのに、人通りがないなあ・・・ いつ行ってもこんな感じで、閑散としているのだ。地方の過疎化の現実を、こんなところで思い知る。
押し寿司を食べたあとは、
セピア色の温泉に体を浸すのもいい。
のびやかな瀬戸内海の島の風土と、めずらしい穴子の押し寿司と温泉。広く知られた観光地ではないが、小粒できらりと光るような行楽が楽しめる。それが周防大島だ。