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ネットで… フランス発ファッソナブル×ジャン・コクトーのカプセルコレクションが発売! という記事を見つけた。 南フランス・ニース発の感度の高いブランド、ファッソナブル(FACONNABLE)の2015年春夏コレクションより、芸術家ジャン・コクトーの作品に捧げるカプセルコレクションが登場。世界でも少数のセレクトショップのみで展開され、日本では、3月15日(日)まで、ランドオブトゥモローにて限定販売中。 今回のカプセルコレクションは、ジャン・コクトー委員会を務めるピエール・ベルジェの支援と承認を得てスタート。ファッソナブルのディレクター、ダニエル・カーンズが、ブランド発祥の地であるフランスのリビエラとジャン・コクトーのシンボルである絵という2つの要素をマリアージュして、メンズとウィメンズのアイテムの数々を提案。リュクスなファブリックと精密なカッティングを彩るコクトーの作品。アートとファッションの美しく貴重なコラボレイションを、お見逃しなく。 ファッソナブルというブランドは初耳。さっそくホームページに行ってチェックする。 フレンチ・リビエラのイメージにぴったりな、ややアンニュイなリゾート感あふれるデザインに、素材の上質感が伝わってくる、洗練されたブランドのよう。 こんな洒脱なショートフィルムまで作っているではないか。 これは明らかに、ヴェズヴェレール家の別荘サント・ソスピール。キャロル・ヴェズヴェレールは、『ムッシュー・コクトー』の中で、個人でこうした文化遺産を維持していくことの難しさを訴えていたが、このフィルムを見る限り、コクトー作品の保存状態は良好のようだ。 コクトーの好みそうな、「彫刻的な美男」を登場させ、鏡もちゃんと出てくる。ユダヤ人であったヴェズヴェレール夫人との友情の証しでもある星のマークも。コクトーの得意なフィルムの逆回しもやるし(1:50当たり。ここで青年の着ているプレーンなシャツの袖に施された星の刺繍が映るが、これは丸の内でも売られている)、『オルフェの遺言』でシンボリックな役割をもたせたハイビスカスの花もある。 ニースに行かなくても、ジャン・コクトーのカプセルコレクションを入手できるとあれば、行かなくては、丸の内。 ということで行ってきた。 ジャン・コクトーのカプセルコレクションを扱っているのはここのみ。 で、中に入ってみると、1階にウィメンズ、2階にメンズの、ほんのワンコーナーがコクトー・コレクションに割かれているだけで、しかも、アイテムはほとんどなかった。 ネットで写真が公開されていた、白い太いラインで描かれた横顔を大胆に配した紺のカットソー ↓ は、女性用はもうすでに完売。男性用が1着残っているだけだった。男性用を見ると、イラストの線は単調ではなく、濃淡があり、写真から想像していた以上によかった。真っ先に売れてしまうのも頷ける。 もともと数が少なかったのだろうが、それにても早い。やはり、ジャン・コクトーファンは、今もひそかにこの大都会に潜伏しているのだな(笑)。 ウィメンズはホワイトコットンのシャツが数点残っているだけ。カラフルな刺繍を施したどこかアジアンテイストの半袖シャツと、コクトーのイラストをシャツと同色の「織り」で表現した丈の長いプレーンな長袖シャツと短いジャケット風のシャツ、それにコクトーのシグネチャーである星を袖に紺色の糸で刺繍しただけのシンプルなシャツがあった。 吊り下がっているモノを見ると、とても値段に見合っているとは思えなかったのだが、「ジャン・コクトーお好きなんですか?」「よろしかったご試着を、ぜひ」という店員さんの笑顔につられ、着てみたら、あーら不思議。 思った以上の素材の上質感に驚く。さすがに、世界中から目の高いバカンス客が押し寄せるニースに由来するブランド。シンプルで、控えめで、よくよく見なければわからないようなところに手をかけている。 右の衿下にあしらわれたコクトーのシグネチャー。織りで星を表現。 左の前身頃に、男性の横顔。言われなければわからないかもしれないが、片方の見頃いっぱいに横顔が織りで表現されている。 ボタンが2つ着いた袖先のカフスの幅が広いのがクラシカルでエレガントな印象。下ボロは長く、剣ボロとカフスの中間にボタンが1つあしらわれている。 そして、魅惑の(笑)Jean Cocteauレーベル。 そういえば、ピカソが、「美容院にはコクトーのイラストばかり」と言ったとか言わないとか。当時からコクトーのイラストは人気だった。そして、ジャン・コクトーが亡くなったあとも、本人には断りもなく、彼のイラストは繰り返し、いろいろなアイテムとなって甦る。 時の流れという川の水面に、浮かんでは沈み、沈んではまた浮かぶ泡のよう。 コクトーは詩人だが、今はむしろイラストレーターとして、さまざまな人々の仕事を助けている。コクトーの名がつけば、Mizumizuみたいなコクトー・フリークが買ってくれるから。フランスにはコクトーの壁画の残る建造物や美術館もあり、観光客で賑わっている。今はコクトーの詩を読む人よりも、コクトーの絵を見る人のほうが多そうだ。 フランスの街おこしにも大いに貢献している。 ジャン・コクトー、彼の命はとっくにはなかく消えたが、そのポエジーはまたも蘇る。実に偉大な存在ではないか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.03.03 23:13:02
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