一点の曇
夕方 おばあちゃんが、ショップチャンネルに見入っていた。化粧品の特集。「○○のパック 12,700円」「化粧水は別売です…」そのサロンの、マダムが出演していた。うちのオカン位の歳やのに ピチピチな白いキレイな肌やった。メラニン色素が強くて 目の下に熊さんを飼ってるうちは、どうにも 気持ちが優れない。12,700円は払うつもりないのに あーだこーだ見てしまってた。最後に、負け惜しみで おばあちゃんに言うた。「この人全然変わってへんやん!」 …せめてお風呂に入ってゆったりする事にした。リラックスの為に 重層を入れて、手作り石鹸で髪の毛を洗った。無駄な抵抗 と、言わんばかりに 髪の毛が軋む。あぁ うちは何をしたいんやろう? 「この皮 一枚めくったら、同じやのにな」外見を褒められるのが苦手なうちは、最近 たまに外見やらを可愛いと言われると 素直に喜べずに、一皮剥いた真っ赤な顔を想像したりして…。神経が剥き出しになって苦しむ、風が吹くだけで唸り声をあげる…バラモスゾンビやなぁと思う。 お風呂上がり、化粧品のCMか何かで 女優さんが肌を露出してた。頭に響いた言葉が一つ。「一点の曇も無い」あー こういう肌の事を言うのかなぁって思った。CM用に、黒子も毛穴も何もかも 隠してしまってるんやろうけど。 鼻の頭 僅かに中心からずれた所にある黒子。背中につむじがあって 産毛が柔らかく渦巻いてる。一本だけ 投げやりな感じに成長してる毛。お仕事で出来る 手や足のすり切れ。眼鏡をかけてるとあんまり気にならない位置にある黒子。途中で足首を骨折してるのに完走した時に出来た傷跡。 うちはその人らしい痕跡に 特に心を持って行かれる。身体に刻まれた、証をやたらと触ったり 切ったり、なぞったり…。こんな気持ちになるんは単なる入れ物やとは、やっぱり思えないから。