600kmオーバー・その6
淡路島の西海岸は風と日差しでペースダウンを余儀なくさせられました。特に昼過ぎの日差しは、容赦なく降り注ぐのです。地獄のようなその状況では、精神的に非常に追い込まれた状態になりました。「この暑さではとても距離を稼ぐことは無理だ。」「時間が読めない。」「朦朧として何を考えているのか分らない?」そんな不安が、どっと押し寄せてきたのです。頭に水を掛けつつ、しばらくは熱射病のようにフラフラと彷徨いましたが、どうしてもペースは上がりません。宇野港では、四国の区間を併走してくれる前田さんが待っています。せめて、そこまではなんとか走り切りたいと考えていました。そして決断したのは、ここはペースを上げずに一旦クールダウンしようと考えたのです。明石より30分ほど走ったところに回転寿司屋がありました。そこでしばし時間を取ってクールダウンすることを決めたのです。店内は涼しく生き返ります。カウンターではありましたが、身体をストレッチすることで気分も随分と蘇ってきます。それではと、ノンアルコールでひとり乾杯をして気分を盛り上げます(笑)宇野まで約150kmほどです。淡路2周目に入ったと考えれば少し気分も楽になってきます。宇野港から高松まではフェリーの中で睡眠を取ることができます。そんな期待に支えられて再度ペダルを回すのでした。ロングライドの場合には、気分が上がらないうちはペースも上げないように注意します。そうすることで、身体と気持ちの一体感を生み出すのです。それは単純で簡単なようにも思えますが、経験を積まないとなかなか出来ないものだとも思えるのです。焦らずじっくりと構えることが肝要です。日も暮れて、9時ぐらいに姫路を通過することが出来ました。写真はその時の写真です。ライトアップされたお城が「頑張れ!」とでも言ってるかのように見えたのです。しかし、ここからの国道2号線は、更に過酷な状況が待っていたのです。相生を過ぎた辺りから、トラックの通行量が格段と増えていて、そのスピードに圧倒されて、走っている自分がか弱く感じられます。若干、恐怖感も感じてきます。危機的状況に陥って、山陽本線の有年(うね)駅に逃げ込みました。引っ切り無しに轟音と共に走り去るトラックに、今までに経験したことのないような恐怖感に襲われたのです。万が一にも事故を起こしてしまっては、何をしているのか分からなくなります。安全に走れてこそのロングライドでもあるのですから・・・。道路幅も狭く、トラックが自分をなかなか追い越せないという状況もありました。しかし、そこは何とかじっと我慢して峠を越えることが出来たのです。どのような状況でも焦ることなく淡々と1m、1mを走り切ることに徹するのです。焦らずにです。夜間の狭い国道を走る時は、どうしても路肩が荒れた状態のところが沢山あります。そんな時に活躍したのが32Cという太さのタイヤだったのです。段差を気にせずしっかりとしたグリップを保つことができたのは、その太さゆえと言えます。それとフラットバーのハンドルも挙動を安定させるのには重要なアイテムとなったのです。ロードのドロップハンドルでは、安定感が無く、更に不安で危険な状況で走らざるを得なかったと推測されます。峠を越えてしばらく走っていると、背後からププッとクラクションをならす車がいて、思わず警察かと思いましたが、それは宇野港で待ち合わせる約束をしていた前田さんでした。少し安堵の気持ちが湧いて来たと同時に、後ろ気味になっていた気持ちも前向きに変わりました。もう少し頑張れば宇野港だと。ただ、宇野港までにはもう一つ難関がありました。それは、国道2号線は備前大橋を渡るとバイパスとなるのです。当然自転車では走る事ができません。2号線に沿って走ると、川にぶつかると2号線はそのまま行ってしまいますが、下道は迂回して橋を渡る必要が出てくるのです。なかなか距離が稼げなくなってきました。アイパッドで位置を確認しながらの走行は時間もかかって、なかなか目的地まで到達できません。結局、かなり遠回りの迂回路を使って、確実に宇野港へ辿り着くルートを走りました。予定よりも相当距離も伸びて、宇野港へ着いたのは予定よりも2時間遅い5時前でした。