珍国際の書斎

　昨夜、今日に備えてしっかりと薩摩白波で体内消毒をし、朝は五時に起きて水垢離（みずごり）で禊（みそ）ぎを済ませたラジオ配線係長は、さっそく、まだ夜が明けやらぬ内から「還暦５号ラジオ」の配線チェックを開始したアル。




　しかし、ラジオ配線係長はシャシーの内部を見ながら

「珍国際本部長が予算をケチった為、安っぽいチタコン（チタン酸バリウム・コンデンサーの略）が目立ちまする。拙者は全部、シズキのフィルム・コンデンサーで統一したかったのに。それにオリジナルの配線を真似した為に，チタコンが斜めに付いておりまする。これは拙者の趣味に合いませぬ」

　と泣き言を言っていたアル。しかし珍国際本部長は

「全てはコスト・パフォーマンスを上げる為で御座る。どうせケースの中に入れてしまうのじゃから、内部の配線だの、部品は見えなくなるではないか」

とラジオ配線係長の言葉を無視したアル。

　一方、塗装班長は

「今日は低気圧が東に抜け、高気圧に覆われているから絶好の塗装日で御座る」と、これまた早朝からソワソワして、再塗装の準備に取り掛かったのこと。



　今回はプラスチックのケースで面白味に欠けるアルが、第一回目の塗装でニスが濃すぎた為、ハゲ、ア、ア、ア、アイヤー、ハケの痕跡が残り、それがヘアー・ライン仕上げのようになって、却って味が出たのこと。

　そこで、普通なら表面が珍さんの額（ひたい）、ア、ア、ア、アイヤー、ツルツルになるように仕上げるアルが、今回はわざとヘアー・ライン仕上げにする事を決定したアル。

　そこで珍国際本部長のお内儀（カミサン）が

「ヘアー・ライン仕上げなら良いけれど、間違っても珍さんの頭のようにバーコード仕上げにしないでタモレ！」

と飛んでもないことを言ったアル。

　塗装班長は

「こう見えても拙者もプロの端くれ（ハシクレ）で御座る。珍さんの頭のようにミットも無いし、バットも無い、ア、ア、ア、アイヤー、みっともない事には致しませぬ！」

と言い切って再塗装を開始したアル。

　１回目の塗装を終えた赤いパネルを見た珍国際本部長のお内儀が

「アラ、これって可愛いかも～～～。ワタシって、このラジオ欲しいかも～～～」

と、今時の馬鹿女子高生みたいな事を言い出したアルから、珍国際本部長は慌てて

「これは年貢を稼ぐ為にヤフーのオークションに出す物で御座る。欲しくば自分で落札せい！」

と冷たい返事。




　皆の衆（みんな）が朝から張り切っている脇で、珍さんは皆の衆の冷たい視線を浴びながら、赤外線ヘリコプターの操縦をして遊んでいたのこと。

　ところが、ここで突然、珍国際本部長が棲んでいる団地の森からウグイスの大きな声が聞こえたアル。

　作業をしていた珍国際本部長、ラジオ配線係長、塗装班長は

「これは天下の一大事で御座る。急遽、写真師・写楽斎を呼び出して、ウグイスの写真を撮らせねば！！！」

と叫びながら、森の方へ走っていったアル。

　お主ら、何をウグイスごときで騒いでおるのじゃ？

　今は江戸時代じゃ、平安時代ではないぞ！！！

　意味が分からぬ？？？

　馬鹿めが！

　「鳴くよ（７９４）ウグイス平安京」と言うではないか。

　拙者、寺子屋で覚えさせられたゴロ合わせが未だに抜けなくて困ってオル。



　身共も昔の記憶が抜けなくて困って御座る。
　荷馬車の後に付いている認識番号を見ると、つい、「いや御座（１８５３）んなれぺりーさん」、「トムさん来るな（１６３９）と国を閉じ」、「いやロッパさん（１８６３）明治だよ」、「一味散々（１３３３）鎌倉幕府」、「一夜虚（むな）し（１４６７）応仁の乱」、「日暦（ひごよみ、１５４３）めくる種子島」、「いいななろうぜ（１７７６）独立国に」、「以後宜しく（１５４６）とザビエルさん」・・・などと思い出して困っておりまする。





　馬鹿な御方達ですねぇ！そういうワラワも「一夜一夜に人見頃（ひとよひとよにひとみごろ、１．４１４２１３５６）」、「人並みにおごれや（１．７３２０５０８）」、「富士山麓オウム鳴く（２．２３６０６７９）」なんて覚えておりまする。何の役に立つのですかね？詰め込み教育の弊害ですね。

　それより殿方を騙す方法を教えて呉れたら、ワラワも「行かず後家」と言われずに済みましたのに・・・クヤシイ！！！なんのコッチャ？？？