ライ麦畑でつかまえて
買ってから随分と経ってしまいました。読み始めてから、一度中断してしまったので、初めから読み直しました。さて、どうしたものか…。主人公ホールデンが、誰か(読み手)に自分の経験を話しているという設定で、書かれています。そうなると、主人公の主観や価値観が物語を支配します。彼の感情に共感できるか、もしくは意味不明に思えるか、またはその両方か。いずれの感想も、ホールデンには「インチキ」な「いやらしいもの」に映ってしまうのだろう。彼にとって他人の言動は、彼の感情とは常に逆のようだ。これが果たして不条理な物語かと言うと、それどころか正直な物語である。では、正直な物語かと言うと、それは偽善的な感想ということになろう。答えを導くこと自体が、インチキでいやらしいことなのだ。つまり、読んでいる私は、インチキでいやらしい、偽善者なのだ。少なくとも、ホールデンにとっては。