洋楽カラオケは難しい
20代後半になると、カラオケでもちょっと背伸びしようかな、という軽い野心が芽生えて、仲間とカラオケに行くと、無謀にも洋楽を歌うようになった。私は歌が下手だし、英語も苦手なのだが、齢をとると恥じらいが徐々になくなってくるものだ。サイモンとガーファンクルもよく歌った。「冬の散歩道」を一番よく歌ったかな。ただ、「冬の散歩道」は軽快で盛り上がる良い曲だが、途中早口の部分があり、正確に歌うのは難しい。忙しいだけの曲になる。「冬の散歩道」もそうだが、ワムの「ケアレス・ウィスパー」や、ガンズ・アンド・ローゼスの「ユー・クッド・ビー・マイン」も、中間部に早口のやたら難しい箇所がある。英語の早口は難しいので、気をつけねばならない。またサイモンとガーファンクルでも「サウンド・オブ・サイレンス」になると、「冬の散歩道」とは逆にお通夜みたいに場が静まり返る。サイモンとガーファンクルが歌うと「サウンド・オブ・サイレンス」はムード満点の名曲なのだが、素人の手にかかるとカラオケの盛り上がりを一気に冷ます、ただの暗い曲にしかすぎなくなってしまう。カラオケに行ったことがないアキバ系の人が強制的にカラオケボックスに連れて行かれて、仕方なくボソボソと歌わされた時のような歌い方になってしまう。それから、もし「ボクサー」を歌うと、途中「ライラライ!」というフレーズがあるので、「お前は谷村新司か!」と突っ込まれそうで怖くて歌えない。「チャンピオン」より「ボクサー」の方が先に作られた曲なのに・・・でもどうして、ボクシングが「ライラライ!」なのだろう?「明日に架ける橋」は、私は人類が作った最高のメロディーの1つだと信じて疑わない。ある時、小泉首相とプレスリーが並んで写っている(もちろん合成写真)ジャケットの、小泉首相選プレスリーのベストをふざけて買ったら、プレスリーが「明日に架ける橋」を歌っていた。これは最高。プレスリーのボーカルは、雄渾かつゴージャスかつ退廃的で最高だ。何故私はアメリカでプレスリーが人気なのかピンとこなかったのだが、「明日に架ける橋」でようやくピンときた。プレスリーの魅力がわかった。一度、ドアーズの「ハートに火をつけて」という曲を歌ったのだが、この曲も変な曲だ。「ハートに火をつけて」は7分ぐらいある長い曲で、最初と最後に"Come on baby,light my fire."とジムモリソンが鬱々と歌うのだが、その間の5分はオルガンの間奏になっている。間奏が異様に長い。カラオケは少しでも間奏が長いと、間に耐えられなくて困ってしまう。しかも「ハートに火をつけて」は何と間奏が5分である。5分間じっと立ったままでは情けないので、恥を忍んで間奏中ずっと創作ダンスを踊ってみた。洋楽をカラオケで歌うのは難しい。