カテゴリ:音楽
今日は久々にHall and Oatesネタ。
いつも立ち寄って下さる優しい皆様方、ムリして反応しないで下さいよ。(爆) なんというのか、このところ内省というのか内観というのか、今後の生活の大転換(私たちにとっては)を前にして、何か精神の眼、みたいなものがぐーっと中にはいってしまっている。 ちょうど1ヶ月前、ある暑い日に聴いたHall & Oatesの、比較的新しい3枚(いや、新しいとはいってもここ10年だ。笑) 「Marigold Sky」「Do it for Love」「Our Kind of Soul」の3枚の、80年代に爆発的なヒット曲が連発された頃のアルバムに比べると、まったく別モノの、かなりアコースティックを多用したみずみずしい音であることを再発見する。 たぶんHall & Oatesの、80年代の、ただ売れまくっていた時代以降、90年代のデュオ休止・ソロ活動等の十分なクーリング期間を経て、また地に足をつけてやりたくなったという静かな情熱が感じられるのが上の三部作。(いや、別に三部作として作られたわけではなくて私がそう思っているだけだ) 特に「Marigold Sky」。 聴き始めた当時、好きな曲とぜんぜん感銘を受けない曲との落差があまりにも激しく、決して常時聴きたいと思えるアルバムではなかったが、これを聴いたクマイチの評価は私が思う以上に高くて意外だったが、それから10年経って、なんとなくこのアルバムに秘められた強さと繊細さの二律背反のようなものがわかるような気がしてきた。 そうなると今度は、Hall & Oatesがアコースティックを多用していた初期のアルバムがどうしても聴きたくなってくる。 今を遡ること35年前(!)の1972年、彼らはHall & Oatesとして初めて「Whole Oats」というアルバムでデビューし、翌年の「Abandoned Luncheonette」から名曲「She’s Gone」が世に出ることになった。 この2枚のアルバムはジャケットもすごく気に入っている。 左の「Whole Oats」は2人の名前のHallとOatesにかけたシャレで「ぜーんぶオーツ麦」てな意味だし、何よりシンプルでかわいいジャケ写だ。 右の「Abandoned Luncheonette」のジャケットも昔からすごく好きで、この写真がプリントされたTシャツをもう15年くらい大事にしている。(笑) このアルバムには同タイトルの曲が収録されているが、これがまたすごくいい。(爆) 「Abandoned Luncheonette」というのは「さびれて打ち捨てられた安食堂(定食屋)」みたいな意味だ。 歌詞は、ところどころ想像で補って考えるしかないのだが、こんな感じ。 かつてこの食堂が盛況だった頃、色男気取りで身なりを精一杯やつした皿洗いの若者。 ガールフレンドはまだ二十歳。 2人の生活はこの食堂でまめまめしく働くこと。 そのうち軍隊にはいった若者はしばらく連れ合いと離れて軍隊生活。 何年も経って彼女の元に戻ってきた男はまた2人で食堂の切り盛りに励むが、毎日、毎月、毎年のその生活の中、やがて年を取り、その年数を物語るかのように剥げ落ちる食堂のペンキ。 すでに年老いた2人は、廃業してしまった食堂跡にひっそりはいって腰掛けている。 そこここに散らかったままの割れた陶器の破片や破れた古新聞。 食堂の一方のドアにかかった古ぼけたサインボードには「お出口はこちら」と。 それはそのまま、2人の老い先短い人生の行き先を示す標識にも思えた。 この頃の、まだフォーキーで、そんなにお金がかけられなくて(これは想像)とにかくHall & Oatesが自分たちから湧き出る素のアイデアを、できるだけそのまま詰め込んで世に放ったと思われるこの2枚のアルバムをこうして今、聴くと、何か感慨無量という気がしてくる。 現在、こうして、しばらくなじんだこちらでの生活から再び(しかし大きく変わってしまっているだろう)日本に戻ってまた新しい生活をし直す過渡期にあって、考えることが非常に多い。 しかし、そういう時だからこそ何か感じるものがあってHall & Oatesの起源にもう一度触れたくなったのだと、ちょっとこじつけて考えてみたりする。 それは単なる懐古主義というだけのものでもないだろう。 もう一度、あれだけ80年代の音楽界を席巻したHall & Oatesの出発点を今のこの年齢と心象で確かめ、そして次に90年代後半から現在にかけて、すでに絶頂期を過ぎた彼らの「こういう音楽をこんなアプローチでやってみたい」という今なお消えない試行錯誤の意欲を、今度は力を抜いて楽しんでいるアルバムを交互に聴いてみる。 本当は今、聴きたいのはこれらのアルバムだけではない。 この70年代の中盤以降、フォーキーで土の匂い+天然の音のフィラデルフィアソウルっぽい作りからメタルでプログレ的な試みに移る時期の、2~3の実験的なアルバムも好きだ。 その後、ソウルを少し箱に閉じ込めてロック色のかなり強い時期を越えた後の西海岸寄りのサウンドが光を放つ「Along the Red Ledge(赤い断層)」と、その後にサイケ・ディスコ色に溢れたクレイジーさが結構ステキな「X-Static」からは「Wait for Me」も誕生。 そして満を持して1980年に「Voices」から「Kiss on My List」「You Make My Dreams」「You've Lost That Loving Feeling(ふられた気持ち、ライチャス・ブラザーズのカバー)」が生まれ、彼らはRock'n Soulの申し子となっていったのだ。 彼らのアルバムで、もしも「怒涛の勢い三部作」を挙げるとしたら私にとってはここに挙げた3枚かな。 それからもHall & Oatesには紆余曲折があった。 Hall & Oatesといえば「Private Eyes」や「Maneater」を知っているという人が今でも大多数ではないかと思うのだが、このあたりのアルバムは逆に私はもうほとんど聴くことがない。(聴かなくても勝手にラジオでかかっていることも多いし) 90年代以降の「Change of Season」辺りはいちばんかなり苦しかったことと思うし、それ以降はなかなかナントカドームでライヴをすることもなくなった。(私にとってはそのほうがありがたい) しかし、今も年に100日超のこまめなライヴ(ほとんどアメリカだし残念だ・・・昔のような大きなハコではないから余計に聴きに行きたいが)に明け暮れるHall & Oatesにあらためて私の敬意を表したい。 彼らもそろそろ60代に突入する. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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