クマイチが困った件
クマイチはあまり私、または私のモノや行動をけなすことがない。私が「コレ、どう思う?」と聞いたりする場合、彼は(その問いかけが、どうしようもないサイテーのものをサイテーと言ってほしい場合を除く)「結構いいんじゃない?」というポジティヴ系の答を私が暗に期待していると考えているからかもしれない。それに事実、その通りなのかもしれない。例えば*車に同乗している最中にCDかけながら、窓を開けられないくらいのアホな大声で車中で調子っぱずれに歌っていて「どう?うまい?」と(わざと)聞くと「いいねぇ、その調子」と真顔で答えてくれる。*何を着て行こうか、その日の服の候補を迷いながら着てみて「ああー、コレきつくなった~、太った~」とでも言おうものなら「いや、そんなことないよ、似合ってるよ」とか、本当に服がきつそうだと(爆)「ボクはそれくらいのほうがいいと思うよ」とか。*何かつまらないことで失敗して「私ってあかんなー、こんな、誰でもできることができひんなんてイヤになるわ」と言うと「そんなことないよ、世間の多くの人はできないのにちゃとにはできることだってあるじゃないか」ヨメを不機嫌にさせないコツをよく知っている人だと思ってしまう。この間の週末、買い物に出かける時に「ドリームガールズ」のサントラのCDを聴いていて、ハイライトの「And I'm telling you, I'm not going」のジェニファー・ハドソンの熱唱が済んだ直後、私はおもむろにクマイチに問いかけてみた。「あのな、私とな、このジェニファー・ハドソン(この「ドリームガールズ」で各種の助演女優賞を総なめにした新進気鋭のシンガー)とやったら、どっちが歌うまい?」マジ顔でたずねながら本当は心の中でくっくと笑っていた。絶対に私をけなしてはいけないと思い込んでいるらしいクマイチがなんと答えるか。運転しているクマイチの横顔に縦線がざーっとはいったのを私は見逃さなかった。クマイチは(もろに答に困りながら)こっちを向き「ご、ごめんね・・・ちゃとちゃん・・・あの、えと、えーと、やっぱりね、ジェ、ジェニファー・ハドソンって、そりゃもうプロの中でもベ、ベッカクの人じゃないかと思うんだ・・・だから・・・あの・・・あの・・・」奥歯どころか前歯までモノが挟まったか、今日だけ臨時で入れ歯を入れたような歯切れの悪い言い方で、しかし、この場合はジェニファー・ハドソン以外の答はアリエナイでしょう、というしかないのは当たり前なので彼はそう言った。「わはははは、あったりまえやん。もしもここで『ちゃとちゃんのほうがうまいかな』なんて言ってたらウソツキ満開やで。そこまでウソツキじゃなくてよかったよー」と言うと、彼はホッとしたような顔をしたのだが、彼も大変だ。完全に幼児期から成長の止まっている精神的側面を持ったヨメをいかにお守りしていくか。いつもお世話になっております。