トニー・ベネット
しばらく音楽ネタから離れていたのだが、まったく聴いていないわけではなかった。わけあって、このところ、各部屋に置いてあるラジカセから「KISS FM」というHip-HopやRap中心のFM局をたれ流していたのだが、食わず嫌いだったHip-Hopの中にも結構おもしろい曲があったりして、なかなかあなどれないなと思っていたのだが、いつも聴くFM局とはちょっとシステムが違うというか、なかなか曲名やアーティスト名が流れないので、何度も聴く曲のわりに情報が仕入れられない・・・が、聴けば楽しめる、という感じではある。実は書きたかったのはそういうHip-HopやRapの話ではない。トニー・ベネット。このオジサマをご存知だろうか?イタリア系アメリカ人のこのトニー・ベネットは、50年代から60年代にもっとも好評を博したジャズ・シンガー。・・・実は私自身も過去、そのくらいしか知らなかったし、今も決してよく知っているとは言えないのではあるが、数年前に、イギリスで有名なトークショーである「パーキンソン・ショー」で見たトニー・ベネットの歌が鮮明に頭の中に残っていた。いや、その時点ですでに見た目はもう確実に孫がいる年齢。にも関わらず全般的には矍鑠としている上に、声に張りがあり、結構難しいリズムをばりばりの現役歌手として歌いこなしていることにものすごく驚いた。それ以来、トニー・ベネットという名前を新聞で時々見ると気になっていたが、一度はイギリス(だったかアイルランド?)でのライヴが中止になっていたので、やっぱり年齢的・身体的に何か不調だったのかなぁと思いつつも、そのまま忘れていた。しかし、である。このところの土曜のハイライトである「X Factor」の先週のオーディションにトニー・ベネットがゲスト出演し、久しぶりに彼の健在ぶりを確かめたのだ。「X Factor」での先週の曲のテーマはラット・パック。同名の映画もあるようだが(私は見ていない)どうもラットパックとは、かつてフランク・シナトラ、ディーン・マーティン、サミー・デイビス・ジュニア等5人で一緒にショーに回っていた悪ガキども、といった意味もあるらしいが、ともかく60年代あたりのスゥイング、ビッグバンド中心のそれらのアーティストが流行させた一連の音楽のトレンドを呼ぶようだ。それらのアーティストたちはすでに鬼籍に入ってしまい、今では華やかなりし頃のビッグバンドのナマ演奏に触れる機会というのはほとんどなくなってしまったのではないかと思うが、実はそこにただ一人君臨するのが、このトニー・ベネット。彼の名前で普通、いちばん思い出されるのが「霧のサンフランシスコ」という名曲。この曲で彼は1963年のグラミー賞でレコード・オヴ・ジ・イヤーと最優秀男性ボーカルの2冠に輝いている。このトニー・ベネットが先週「X Factor」のオーディションに招かれていたのだが、ゲスト出演での彼の歌声にはまたしても圧倒された。今年の8月で彼は80歳になったのである。まあ、どこにでも「引退宣言していないから現役」的な無理やりこじつけ方・芸歴エキスパンダーはいるが、トニー・ベネットだけは違うと私は激しく断言したい。彼がゲスト出演して歌ったのは、ここ最近出たアルバムの宣伝の意味もあるだろうが、まあそれにしても実に衰えを知らない人というか、それも、声やリズムに衰えを感じさせず張りを保ったまま若干枯れているという理想的なアーティストの年の取り方。おまけに外見もしゃきーんと見目麗しく、まだ30代や40代の女性と浮き名を流している、などと聞いたとしてもまったく驚かない淡麗な姿。彼は、こうしてテレビ出演しても、年齢が年齢だから敬老的な扱いを受けているわけでは決してなく、彼そのものと彼の芸歴と、今もって衰えない第一線の活躍ぶりが人々をして敬服させてしまうと言っていい。そういうことで先週は「X Factor」にゲスト出演し、今夜はまた久しぶりに「パーキンソンショー」に出演して、いちばん売れていた頃の話とともに今、出したアルバムの話をし、また1曲スタジオで披露したのだが実に素晴らしいアーティストだ。フランク・シナトラなんかもそうだったが、ある程度、年配になった人たちの歌声を聴いて、流行っていた頃のレコードを聴きたいと思って聴いてみると、場合によっては今の歌声のほうが気分的にしっくり来るようなところがある。若い頃の勢いに乗った演奏・録音が決して悪いわけではないのだが、やっぱり手垢がついた言い方になっても「時代と年輪のマジック」というものもあるのだと思う。さて、そのトニー・ベネット。新しいアルバムはTony Bennett / Duets: An American Classics (CD)「霧のサンフランシスコ」を除くこれまでの名曲を、いろいろな歌手(だから彼にしてみればもうみーんな後輩か子供か孫っていうところ)と共演しているアルバムだ。1. LULLABY OF BROADWAY - duet with Dixie Chicks 2. SMILE - duet with Barbra Streisand 3. PUT ON A HAPPY FACE - duet with James Taylor 4. THE GOOD LIFE - duet with Billy Joel 5. THE SHADOW OF YOUR SMILE - duet with Juanes 6. RAGS TO RICHES - duet with Elton John 7. THE VERY THOUGHT OF YOU - duet with Paul McCartney 8. COLD, COLD HEART - duet with Tim McGraw 9. IF I RULED THE WORLD - duet with Celine Dion 10. THE BEST IS YET TO COME - duet with Diana Krall 11. FOR ONCE IN MY LIFE - duet with Stevie Wonder 12. ARE YOU HAVIN’ ANY FUN? - duet with Elvis Costello 13. BECAUSE OF YOU - duet with k.d. lang 14. JUST IN TIME- duet with Michael Bublé 15. THE BOULEVARD OF BROKEN DREAMS - duet with Sting 16. I WANNA BE AROUND - duet with Bono 17. SING, YOU SINNERS - duet with John Legend 18. I LEFT MY HEART IN SAN FRANCISCO 19. HOW DO YOU KEEP THE MUSIC PLAYING? - duet with George Michael 実は私も今、ぽちっと通販で買ったところ。(爆)でも、この2週間ほどで聴いたトニー・ベネットの歌声からして「The best is yet to come」や「For once in my life」がすごくよかった~。エルトン・ジョンと共演したビデオの中で聴いた「Rags to Riches」もよかったし、CDが着くのが楽しみだ。このビデオを見て思わずクマイチに「ライヴがあったら行きたいな~」と言ったところ「でも、やっぱり1時間以上ずっと立って歌うっていうのはこの年になるときついと思うよー、ライヴはさすがにもうやらないんじゃない?」と言っていた。しかし今日のテレビでも1曲歌った後、すぐにまた席についてインタビュアーの質問を普通に受け、息が乱れたところもなければ、もちろん脚にふらつきも何もない。その後、トニー・ベネットのサイトで調べて仰天。恐るべしはトニー・ベネット様さま。(ライヴなんかはもうムリじゃないかなぁなんて、クマイチはとんだガセネタ野郎だ。)彼はこの後イギリスから一路アメリカに戻るのだろうが、その後のスケジュール。11/17・18カナダ、そして19・24・30・12/2・6・7・10・12・13・15・17とずーーーっとアメリカ各地でライヴ。こりゃあ立派なツアーじゃないかよ、まったく!最後にトニー・ベネットのサイトを紹介しておこう。(すみませんが英語です)いきなり曲が始まるのでご注意。但し、ここで紹介しているアルバムの試聴ができるという仕組みなので、絶対ソンはさせません!