キツネ・ツママレ
世の中で「きつねにつままれたような・・・」ということって確かにあるな、と思う。何かのトリックか、トリップか、はたまた陰謀か。事柄としてはそんなに大きな一大事ではなく、ごく些細なことなので、後で「こんな経験したことあるかな」と家族や友人に一度聞いてみようと思いながら、実際にそういう家族や友人と一緒にいる時には、アレを聞かなきゃ、なんて思い出せないほど小さなことだ。今日、たまたま帰りに電車に乗っている時にぼーっと思い出した昔の話だ。(今日は3時半には仕事が終われる「ハズ」だったのに、楽天的な「ハズ」はことごとく破壊され、気づいたら7時20分過ぎの電車に乗っていた)私の個人的な「キツネ・ツママレ」は2つある。そのうち2つは音楽について、で今日は昔話。***1988年に出たボビー・ブラウンの「Don’t be Cruel」というアルバムがあった。↑(この写真は「Millennium Collection」ですが)その中の曲は、なんと5曲もUSチャートのベストテンにはいり、US R&Bチャートだけだと1位が3曲、2位1曲、3位1曲という、ものすごいヒットアルバムなのだが、この中の「Every Little Step」という曲は日本でもとりわけよく売れ、強烈に売れてから少し後に某大手エステチェーンのCMにも使われた。ここで今、タイトルだけ見て「知らんなー」と首をかしげる人でも、実際に聴けば「ああ、あったあった」と思うくらい有名な曲ではあったと思う。(まあ年齢層にもよるので、さすがに当時55歳以上の人だと覚えていないかもしれない)さて、その「Every Little Step」を最初に聴いた時、当時の私は頭をがっつーんとやられてしまった。「これ、ダレ?なんていう曲?」と一聴き惚れしたが、残念ながら当時は今のように、聴きたい曲をネットでちゃっちゃっと調べられる時代ではない。そんなある時、たまたまかけていたFMかなんかでこの曲が流れ、しめたと思った。こういう曲の後には必ず曲紹介があるはず。手帳とペンを急いで用意して、曲の紹介に神経を集中した。果たして、曲が終わると「お送りしましたのは・・・」というなじみあるフレーズでDJが話し始める。「お送りしましたのはベイビーフェイスの『Tender Lover』でした!」そうか、ベイビーフェイスの「Tender Lover」っていうのか。当時、ラジカセしか持っていなかった私は、次の日に早速この「Tender Lover」という同名タイトルのアルバムのカセットを買ってきた。一聴き惚れしたあの曲を思う存分聴けるし、歌詞カードだってついてる!そう思った私はこのベイビーフェイスの「Tender Lover」をわくわくしながらラジカセで聴いた。おおっ、なんとなくそれっぽいぞ。メチャメチャ気持ちよく聴き入ってはいたが、なぜか私の頭の中でかかっているソノ曲がかからないままテープが一本終わってしまった。・・・なんで?その瞬間には「私の頭にあるソノ曲(本当はボビー・ブラウンの『Every Little Step」)』=ベイビーフェイスの「Tender Lover」として認識しているわけだから、いったい何がどこで違っていたのか、わからない。会社で、周りの人に「ほら、最近結構流行っている曲で・・・」とたずねようかとも思ったが、あいにく当時の同僚では誰も洋楽を聴く人がいなかった。音楽の雑誌で調べてみたとしても、今みたいに名前さえわかれば試聴できる環境ではないし、私の中では「あの時、絶対にFMでそう紹介してた」のとは違う曲の情報をつかまされ、腹が立つと同時にとても不思議だったのだ。そして、それからしばらく経って、その某大手エステチェーンのCMで、女性モデルがこの曲のリズムに乗って颯爽と歩く場面のバックにかかっているこの曲を聴いて、あっと思った。そのタイトルを調べて初めて、これがボビー・ブラウンの「Every Little Step」だとわかった時のあの驚き・・・。しかし確かにボビー・ブラウンの「Don’t be cruel」というアルバムとベイビーフェイスの「Tender Lover」というアルバムは似ているところもあった。(笑)ボビー・ブラウンのアルバムも売れたが、ベイビーフェイスの「Tender Lover」も1989年に出ているし、この中からのシングルカットはUS R&Bチャートでやっぱり1位が2曲、2位が1曲、3位が1曲で、ラジオ局が間違ったとしても不思議ではない。(どうしてもこれはラジオ局の間違いで通したいところだ。爆)その上、若手の黒人のシンガーが歌っているダンスミュージック、という部分や曲想だって似ていたのだ、実際。負け惜しみではないが「Tender Lover」も結構よかった。***そして、こちらは時期は忘れてしまったが、同じことが別の曲でも起こった。マーヴィン・ゲイの名曲「What’s goin’ on」を、いいなぁ、なんていう曲名かなぁと思ってFMで聴いていたら、紹介されたその曲名はなんと「Family Affair」だったのだ。「What’s goin’ on」の曲の始まりは「Mother, Mother」だし、中の歌詞にもブラザーやらファーザーやらシスターがことごとく出てくるから私はそれなりに感動して「そっかぁ、ファミリー・アフェアね、ふんふん」と思っていたのだ。それがある時になんの拍子か、正しい曲名が「What’s goin’ on」だったことがわかり、「Family Affair」という曲はどんなんかと思っていたら、あのスライ&ザ・ファミリーストーンのアレ。この時の驚きも私の中ではウルトラ級。「Every Little Step」の驚きがウルトラの母で「What’s goin’ on」の驚きがウルトラの父だ。***そりゃまー、最初の「Every Little Step」にしても、「What’s goin’ on」にしても、私が聞き間違えたアーティストと曲が、お目当ての曲の前後にかかっていて、その紹介を目的の曲の紹介と勘違いして覚えてしまった、というのが真相だろうと、周りの人からは言われるかもしれない。でも、そうじゃないっ!これまでの人生で、FMからありとあらゆる曲の情報を取り込んできたというのに、この2曲だけがぜーんぜん違う詳細とリンクさせられて覚え込んでいるなんて、どう考えてもおかしい。あれは絶対にFM局の陰謀だと私は今でも強く信じている。私は陥れられた。