「愛についてのキンゼイ・レポート」(2004)
"KINSEY" 監督・・・ビル・コンドン出演・・・リーアム・ニーソン、ローラ・リニー、クリス・オドネル、ピーター・サースガード、ティモシー・ハットン、ジョン・リスゴー、ティム・カリー、オリヴァー・プラット、ディラン・ベイカー、他。・物語序盤・1940年代のアメリカ。アルフレッド・キンゼイは、インディアナ大学の動物学の助教授で、虫の研究をしていた。学生から呼ばれる愛称はプロック。学生時代は、厳格な父親の望む工学を学んでいたが、途中で本来愛していた生物学の道を選んだ。しかしそれが切っ掛けで、父との関係はすっかり悪化してしまった。キンゼイは教え子の一人だったクララ・マクミレンと恋をして結婚に至る。しかし新婚早々、セックスの問題で壁にぶつかる夫妻。専門家のアドバイス受けたキンゼイは、同じように性の悩みを持つ学生のために“結婚講座”を開講する事に。しかし自分の現在の知識では学生たちの様々な質問に答えられないと悟ったキンゼイは、科学者の立場から性の実態を調査することが必要だと痛感するのだった。 邦題は"愛についての"と題して婉曲表現していますが、こういう副題を付けるのなら、"性についての"とした方が正しいと思います。キンゼイ博士は、愛情というメンタルな部分については、研究の対象外としていましたので。観ていて浮かんだのは、何故今の時代に、この人物の生涯を映画化したのだろうという疑問でした。非常に真面目な映画なのですが、現代の人達が観て、ここから何を学び取れば良いのでしょう?半世紀前ならセンセーショナルだった研究も、今では当たり前すぎて、何の感銘も受けません。けれども同時に、性についてオープンになった現代においても、結構人々は性についての正確な知識は持っていないのかもしれないという考えも持ちました。パートナーが本当に喜んでいるのか、お互いに充実したセックスをしているのか、本当の所は判っていないカップルが多いのではないでしょうか。そういう事を改めて考える、良い機会にはなるかもしれませんね。1本の映画としては、アルフレッド・キンゼイという人物について、とても丁寧に描写されており、良い出来だったと思います。セックスを研究しているだけあって、性交渉に対しては、少し普通の夫婦関係とは違っています。ホモ・セクシャルについても研究しており、自然の流れというか、部下の青年と関係を持ったりします。その事に傷付いた奥さんは、今度は自分がその青年とセックスをしたりと、性に関して開放的な一家という感じでした。しかしただ自由奔放な夫婦というのではなく、精神的な部分の描写も丁寧に描かれていました。メンタルな面に関しては研究しないと断言していましたが、感情を伴わないセックスを続ける事は困難な訳で、結局の所、精神論に落ち着いてしまうのがセックスなのですよね。性の研究をしていたけれど、最後には夫婦愛なのか、というラストはわりと万人に受け入れられ易いのではないでしょうか。蛇足ですが、最後にテロップでその後のキンゼイ博士について解説がされなかったのは、放り出されたようで不親切に思えました。アメリカではどうか知りませんが、普通の日本人はキンゼイ博士などという人物については無知ですものね。少し説明がほしかったです。この映画、映倫が無修正での上映を許可したという事が話題になっていたようです。写真で撮られた性器が確り映っていましたが、結局それだけで、特にビックリするような映像はありませんでした。↑ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。