「アラモ」 (2004) 試写
9/25より全国ロードショー。オフィシャル・サイト"THE ALAMO" 監督・・・ジョン・リー・ハンコック出演・・・デニス・クエイド、ビリー・ボブ・ソーントン、ジェイソン・パトリック、ジョルディ・モリャ、パトリック・ウィルソン、エミリオ・エチェバリア、他。 ・物語序盤・ 1936年、アメリカとメキシコの国境地帯テキサス、サン・アントニオ。アメリカ人とメキシコ人は、アラモ砦を挟んで、長年戦いを続けていた。現在、アラモ砦はアメリカ側が占拠しているが、メキシコ側の指導者サンタアナ将軍は、大軍勢を送って、ここを陥落させようと計画を進めていた。一方アメリカ側では、ヒューストン将軍が、テキサス州議会との対立によって、軍司令官を解任されてしまった。彼はサン・アントニオに向かう義勇兵隊長ジム・ボウイ大佐に、アラモ砦に立て篭もって戦うのは不利だと忠告する。同じ頃、アラモ砦の警護の任務に就いたトラヴィス中佐は、兵士達の反感を買って孤立していた。そんなアラモ砦に、伝説の英雄と称えられるデイヴィ・クロケットが現れ、熱い歓迎を受けるが、現実は厳しい局面を迎えていた…。 ◆豆知識◆テキサス州について。広さ 6,704,998km2、人口、全米2位。もとはメキシコ領テキサス州。1836年にアメリカからの移民が反乱を起こし、テキサス共和国として独立。 9年後の1845年にアメリカに合併され、テキサス州となった。 あまりに短い独立期間ゆえに初めからアメリカ領とするために、偽装反乱したとの見方も強い。 有名なアラモ砦の13日間の攻防戦を描いた近代歴史映画です。「アラモ砦を忘れるな」の精神で、アメリカがメキシコ軍を打ち破り、テキサスを合衆国統合へと導いた戦いです。所謂「リメンバー・パールハーバー」みたいな自分の事は棚に上げ、相手の行為だけを非難して、士気を高めようという典型的なスローガンですね。という訳で、この時期にこの映画を作ると聞くと、政治的な思惑を感じずにはいられないのですが、映画を観る限り、政治的なメッセージは感じられませんでした。出来る限り中立の立場に立って、史実を忠実に再現しようと試みた様子が伺われます。ただサンタアナ将軍の描写だけは、如何にも身勝手な独裁者というお定まりのパターンだったのは遺憾ですが…。それを除いては、特にどちらかに肩入れした印象も受けず、不快感もふりませんてせした。この戦いは、メキシコとアメリカ移民との、延々と続いた国境線争いですから、どちらが良いとか悪いとかの問題ではありません。(どちらかと言うと、後からやってきて、我が物顔でアメリカ大陸を占領した白人連中こそ本来略奪者な訳で、彼等が被害者意識を前面に出しても、同情の念は起きませんよね…。)まあ、政治的背景は脇に置いて、映画だけを純粋に観ると、とても好感が持てる内容でした。前述した通り、ヒロイズムやアメリカ万歳といった偏ったベクトルが働いていないので、歴史物として見応えがあります。それだけに、終始一貫とても地味な展開である事も事実です。あちこちに刺激的な要素がある娯楽活劇ではなく、淡々とした歴史物であるという事を踏まえて鑑賞しないと、途中で退屈するかもしれません。あと、少し歴史的な知識が無いと、人間関係や社会構造が判り難いかもしれませんね。簡単に、テキサスは元々メキシコの領土で、そこに住み着いたアメリカ移民達が、アメリカの州としてそこをメキシコ側から独立させようと、長い間両国の間で小競り合いが続いていたという程度で構わないと思います。重厚で真面目な作りになっていますので、正統派の歴史物がお好きな方にお勧めします。