水と火さえあれば
5日から森の中でキャンプ生活を送っている。土砂降りの雨と雷の日があったり、拭っても拭いきれないほどの汗の日があったり、外で生活すると当たり前だが全てがダイレクトだ。森中のセミが一斉に鳴いているのかと思うほどの大音量に驚き、突然それがやんだ時に訪れる静けさに聞き入ったりする。森の中は上下水道がない。電気もない。水と火がいかに人にとって大切であるかが身にしみる。手を洗うのにふんだんに水を使えば、たとえそれが6歳であろうと強い口調で叱る。火遊び程度しか出来ず、ちゃんとした火がおこせなければ、ご飯は出来ない。家の中で許されるわがままが、ここでは通らない。初めて親元を離れてくる子どもには厳しい環境だろう。厳しいことだけでもない。仕掛けたわなにカブトムシがかかっていたり、川にかけたターザンロープで向こう岸までいけたりすれば嬉しい。子どもだけで小さな木の上で寝泊りするのは、きっと楽しいだろう。素敵なお客さまもみえる。ギターとアフリカンドラムと手風琴などを携えて丸山さんとはるさんがやってきた。焚き火を囲んでの音楽会。夕方の激しい雨はやんだが、木の葉についたしずくが時折落ちてくる。ボサノバは5,6歳の子どもにはわからないかもしれないが、大人たちは癒される。ひとりひとりに手渡された民族楽器での合奏では、子どもたちもはしゃぐ。空き缶を4つ繋ぎ、真ん中の2つに水が流れるように細工し、両端には鍵盤をつけた丸山さん考案の「水カンリンバ」の音を聞く。不思議な音。そして水のお話。音楽会が終わる頃、丸山さんが座っていた頭上、樹木の切れ目から星がのぞいた。