ブエノスアイレスの夜
政治犯として、軍に監禁・拷問を受けた女性カルメン(セシリア・ロス)。その時の体験から、セックスをすることが出来なくなるが、精神的・性欲を満足させるために雇ったカップルに性行為をさせ、その音や声を別室で聞きながら自慰を行っていた。ある時、雇ったグスタボ(ガエル・ガルシア・ベルナル)という青年の声を気に入り、彼にポルノ小説を朗読させ、自慰行為に耽る。壁越しの二人は惹かれあい、ついにグスタボはドアを開くのだが…と、書くとエロ映画のようですが、絡みのシーンはほとんど無いですでもね~全体のほの暗い色調とか、壁越しの二人の関係とか、かなり官能的ですよ。ガエル・ガルシア・ベルナルが出ている、と言うことで観たのですが、期待以上の演技でしたよ~表情の一つ一つに惹きつけられるし、なんとも母性本能をくすぐる役者さんです。始めの頃の、チャラチャラした軽い感じから、どんどん謎めいた年上の女に惹かれる青年に変わっていく様、はっとする表情や、天真爛漫な笑顔、本当に素晴らしかった!ずぶ濡れになって、文字通り雨もしたたるいい男になるのですが、観ているこちらまで切なくなるような、なんとも観るものを魅了する役者さんです。ただ、アルゼンチンの軍事クーデターや、それに伴う弾圧の凄まじさなどを知識として持っていないので、カルメンの背景がよく分からなかったのは残念です。主演二人の演技は素晴らしかったんだけど、脚本的にどうなんだ?というところもあったかな。悲劇的でもあり、未来が開けた感のあるラストにはビックリしました!ガエルファンならぜひ、ご覧いただきたい一作です。