淡々堂

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  能楽堂での発表会

  発表会です。本物の能楽堂でです。今までは、仮設舞台や、神社の社殿でしかしたことがありませんでした。出演したのは素謡「田村」の地謡と、仕舞「清経」キリです。素謡「田村」はお役がついた人だけでなく、地謡も私達で謡います。これが普通だと思っていましたが、他では地謡は全員プロがするのだと知りました。地謡を謡うのが結構好きな私にとっては、ショッキングな事実です。仕舞「清経」の地謡はプロが４人でして下さいました。舞い終わった後、いつも助っ人に来て下さっている方が「戦いの舞いでした」と仰って下さいました。常々先生から「これはきれいに舞うのではなく闘ってください」と注意を受けていたので、戦っているように見て頂けて良かったです。打ち上げはタクシーでホテルへ行き、そこの宴会場でしました。

  2008年11月09日

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  稽古127回目

  翌日の発表会のリハーサルをしました。初めての場所なので、控え室や、弁当を食べる所、見所(けんしょ)の出入り口や、舞台へ出る前の準備の仕方、先生方へのご挨拶の仕方、切り戸口からの出方などを教えていただきました。切り戸口で頭をぶつけたのはお約束です。よく見ると、私が頭をぶつけた辺りはすりへって、木の色がむき出しになっていました。どうやら、幾人もの人が頭をぶつけてきたと見えます。先生からの仕舞についての最後の注意は「体の切れが悪い」でした。２回ほど一緒に舞っていただいて、どういうテンポで舞ったらいいのかを覚えました。それから、「始めにそそくさと前に出て行くと早く謡われるから、落ち着いて」ということも言われました。本番は、私の先生を含めて４人の先生方が地謡をして下さいます。だから、舞い始めに、どのように謡ってほしいのかを舞いで示すと良いようです。以前にも先生に教えていただきました。「『こうやって謡ってくれ』と言うように舞いなさい」と。

  2008年11月08日

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• 稽古126回目

  ■謡…「田村」地謡４回目〈注意点〉１、「あらあらおもしろの」は直前の「今この時かや」の音程より半音上がったくらいのところ。声を合わせてください。〈感想〉　前回は私がシテの役もしましたが、今回は前回ワキをした三木さんと役を入れ替えて、私がワキをしました。（発表会では私も今日のシテ役の人も地謡をします。）■仕舞…「清経」キリ11回目〈注意点〉１、能楽堂は稽古場より広いので、切り戸口から出て行って、「広い！」と気後れしないように。そのためには、構える位置が大事です。良い場所をねらって、斜め方向に進む。そして、ちょっと前ぎみで構える。地謡にへばりついて構えないように。もし後ろすぎると思ったら、左・右と出て、右足を引いて座っても良い。２、「たづきは敵」はゆっくり行かない。きびきびと。３、「真は最期の」で立つ時は、いったん軽く腰を落とした方が立ちやすい。４、「げにも心は清経が」でさす時は、体を半身にする。思い切り左足を引く。ただし、左足は右足の直線上より右に入ってはならない。５、「げにも心は清経が」で大小前に戻る時は、初めに構えたところに戻ってはいけない。もう少し手前で小回りする。 〈感想〉　最後に「いい感じにできたと思うよ」と仰って下さいました。次は発表会です。

  2008年10月30日

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• 稽古１２５回目

  ■謡…「田村」地謡３回目〈注意点〉１、待っている時は手を扇の中へ入れておく、ｳ「また旦那を待てとありしは」で袴の中から手を出し膝の上に置く。そして両手を前に滑らせて扇を取り、膝の上に取り上げる。全ての動作をゆっくりとし、横一列は揃える。揃えると、客席から見たときにきれい。「それ坂の上の」で扇を下ろし、「田村麿」で息を吸って謡う準備をし、「今もその」と揃えて謡い出す。　※玄人は「田村麿」で扇を下ろすが、私達はそれをすると多分息を吸えない。 玄人は若い人が前列に座る。扇を取るのは前列から。もたもたしていると、「早く取るように」と叱られるそうだ。これも修行の一つ。２、地謡の部分を謡い終わったら、シテ（あるいはワキ）が1句謡うのを待って扇を下ろす。３、シテとワキが謡っている間は前の人の背中を見る。必死で下を向いて謡本を見ない。４、6ｳ「春宵一刻値千金…」はシテとワキが謡うところ。非常にきれいな謡なので、ここで扇を上げない。ここはお囃子も音を立てず、舞台にはシテとワキの謡だけが響く。扇は「げに千金にも…」で上げる。５、ぜんぶ謡い終わったら、シテとワキが体を少し倒したのを見てから、体を少し倒し右足を軸として右を向く。後列から順番に退出する。自分より前の人が足がしびれて立てない時は先に立たない。退出するときはそそくさとせず、ゆっくりと進む。〈感想〉板の間で正座をするのは痛いです。血行不良による足のしびれと痛みとで二重苦です。■仕舞…「清経」キリ10回目〈注意点〉１、「乱るゝ敵」で脇座へ行く時は、進行方向に体をまっすぐ向けるのではなく、斜めに向ける。左足を引く時は、右肩から左肩のラインが一直線になるように、思い切り引く。〈感想〉　前回の注意点はだいたいクリアーできていたと思います。　今日はお寺の本堂を新しく能楽堂のように作り替えたところへ行きました。住職が昔観世流を習っていたそうです。能楽堂の実際の寸法が分かって良かったです。そこまでは先生の車に乗せていただきました。私以外にも3人乗りました。先生は「舞台に立つと、日焼けをしていると変な感じかするから」と仰って、長手袋をしていました。　次のお稽古は明後日です。発表会用の稽古をするためと、12月の後半を休むために、日程が繰り上がりました。発表会の申し合わせは11月6日にありますが、私は所用のため欠席予定です。

  2008年10月28日

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• 稽古１２４回目

  ■謡…「田村」地謡２回目〈注意点〉・「ふりさけ見れば伊勢の海」は力強く謡いたいので、少し低めに出る。・「あれを見よ不思議やな」はシテと同じ調子でしっかりと謡わない。・ヤヲハは声をたくさん引くので、ヤヲハの前は覚悟してください。〈感想〉　実際の時間を計るために、通しで1回謡い、その後、地謡の部分だけ注意を受けながら謡いました。私はシテの役もしました。地謡のところしか予習をしていなかったので、ワキが謡っている間に急いでシテの部分を見ました。　「田村」の最後は坂上田村麻呂が鬼神と戦っていると虚空に千手観音が現れ戦って下さったので鬼神を無事成敗できたというお話です。千手観音が背中にはやした手に手に弓矢をつがえてうりゃうりゃと敵に射かけている様子は結構すごい光景だと思います。■仕舞…「清経」キリ９回目〈注意点〉１、かまえる時は腕を張り気味にする。特に右。２、「雲の旗手を衝いて」で扇を立てた時は、膝を割り、しっかりと重心を右足にかける。３、「剣を揃へ」で扇を持つ時は親指側が剣の刃と思って持つ。４、「邪見の眼の光」は左腕を下ろす。「眼の光」で角とりをした後も左腕を下ろす。５、「愛欲貪恚痴」で角から歩く時は、だんだん体を沈ませ小さくなるような気分。（やりすぎると変）６、「通玄道場」は太鼓と大鼓の前くらいでかける。（つまり、思っているよりも少し左で）７、「乱るゝ敵」は脇柱を目指すのではなく、脇柱より右側を目指して進む。８、「乱るゝ敵」で左腕を出した時、親指は下ではなく、右を向ける。９、「打つは波」で打つ時は、真下にコツンと打つのではなく、前方に打ち放す感じ。10、「引くは潮」は後ろに下がりすぎている。構えた位置と扇を立てた位置の中間ぐらいのところで膝をつく。11、「西海四海の」で扇を後ろに振る時は上向きではなくまっすぐ。12、「疑ひもなく」で足をかける時はあまり後ろまで行かない。13、「げにも心は清経が」でさす時は、右腕は直線的ではなく弧を描くようにする。14、「げにも心は清経が」で大小前に戻る時は、体を沈ませ小さくなるような気分。（やりすぎると変）15、謡の文は序破急。全体的に序破急。だんだん早くなる。「疑ひもなく」から運んでいくと、最後の合掌がゆったりとできる。〈感想〉　注意されたことを書き出してみると、ほとんどすべての箇所を注意されていました。しかし、これでまた上手になると思います。　次のお稽古は1週間後です。

  2008年10月23日

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• 稽古123回目

  ■謡１…「田村」地謡１回目〈注意点〉4ｳ　今もその名に流れたる～疎かなるべしや１、少しさらっと謡う。音羽の滝の澄んだ美しい流れのように。２、同じようなペースで謡うといけない。　　5ｵ1行「元ヘ戻シ」は「流れたる」でユルメたのを始めの「今もその」の調子へ戻す。　　上の句はゆったりと、下の句は運んで謡う。　　謡の句は4拍4拍で合計8拍で成り立っている。7文字＋5文字では8拍でおさまるが、そうでない場合（上の句＋上の句＋下の句）は「トル」で調子を合わす。「トル」はゆったり目に謡う。6ｳ　あらあらおもしろの～散るや心なるらん(クセ抜き)１、シテが「今この時かや」とハコンデ謡うのに続いて、同じ調子で謡う。２、「あらあら」は8ｵ　げにや気色を見るからに～内陣に入らせ給ひけり１、「ロンギ」は地謡とシテが問答するところ。だから、直前の「散るや心なるらん」の調子とは少し変えて謡う。２、「遠近の」は、シテが出やすいように少シメて謡う。この時、「おちこちーの」と伸ばすとは思わないように。３、「下るかと見えしが」は、さらりと謡わない。「下るか、と見えしが」と、切るわけではないが、気持ちの上で意味を考えながら謡う。「下るか」は大きめに、「見えしが」は運んで謡う。「見えし」の「し」の横にある「く」の形の記号は「持ち」といい、一拍(か?)置くことができる。４、「月のむら戸を～入らせ給ひけり」あたりは一斉に息を吸えるところがない。だから、それぞれが持ち合って息を継ぐ。10ｵ　東夷を平らげ～仏力なり(サシ・クセ抜き)１、「仏力なり」のツメルは「ぶーっりき」ではなく「ぶっりき」と発音する。「っ」は声を発さない。12ｵ　さる程に～おわり１、決戦に向かう時なのでかけて謡う。２、シテ「…鈴鹿山」は最後を引かないように謡うので、そのつもりで地頭に合わせて謡う。３、「安濃の松原」は少し大きめに謡う。４、「黒雲」はトルがあるので「雲」の引きを長めに謡う。５、「光を放って」のツメルは「はなーって」ではなはく「はなって」と謡う。６、「仏力なり」のシヅメルは声を鎮めるわけではない。これは勝ち修羅なので、勢いよく終わる。〈感想〉　先生の先生のところである発表会に出ることになったので、そのための稽古です。私は地謡で出ます。同じく地謡をする人達と一緒に、先生と向かい合わせで、一列に並んで一緒に謡いました。　私は9ｵ2回目の「内陣に入らせ」の「に」の引きをもっと引いてフライングしないようにとの注意を受けました。■謡２…「安達原」1回目ワキ、ワキツレ　次第「旅の衣は篠懸の。旅の衣は篠懸の。露けき袖やしほるらん。ワキ「これ那智の東光坊の阿闍梨。祐慶とは我が事なり。ワキツレ「夫れ捨身とそうの行体は。山伏修行の便なり。ワキ「熊野の順礼廻国は。皆釈門の習ひなり。ワキ、ワキツレ「然るに祐慶この間。心に立つる願あつて。廻国行脚に赴かんと。我が本山を立ち出でて。我が本山を立ち出でて。分け行く末は紀の路潟塩崎の浦をさし過ぎて。錦の浜の。をりをりは。なほ萎り行く旅衣。日も重れば程もなく。名にのみ聞きし陸奥の。安達が原に着きにけり安達が原に着きにけり。ワキ「急ぎ候程に。これははや陸奥の安達が原に着きて候。あら笑止や日の暮れて候。この辺には人里もなく候。あれに火の光の見え候程に。立ち寄り宿を借らばやと存じ候。シテ「げに侘人の習ひほど。悲しきものはよもあらじ。かゝる憂き世に秋の来て。朝けの風は身にしめども。胸を休むることもなく。昨日も空しく暮れぬれば。睡む夜半ぞ命なる。あら定めなの生涯やな。〈注意点〉１、「我が本山を立ち出て」の返しのところはワキは謡わずワキツレが謡うので、少し高めにとる。２、幕の中でシテはぶつぶつと謡う。だから少し抑えて謡う。〈感想〉これは12月に公演があるのをみんなで見に行くので、そのために稽古をしています。■仕舞…「清経」キリ８回目〈注意点〉１、能楽堂では切り戸口(見所から見ると舞台右側)から出て行く。舞台へは左足から出る。２、腕を体に付けず、大きく構える。３、「雨は矢先」の開きで右足を引きすぎている。この時、へそは正面に向くように。４、「雲の旗手を衝いて」で扇を前に出す時は、左足の親指と人差し指の間の直線上に要が来るようにする。５、「剣を揃へ」で右足はまっすぐに出す。６、「邪見の眼の光」はしっかりと角取りをする。いったん止まってから左足を下げる。７、「引くは潮」でははっきりと座るところを決めて下がる。「ここら辺かな…あと一歩行こうかな」と思いながら下がらない。８、「これまでなりや」で脇を向く時は覚悟を決めて顔をカッ！と向ける。立つ時は正面に向き、それから角へ向かって歩き始める。角では左足は控えめに出した方が、次の方向転換がスムーズに行く。９、そこからはだんだん乗って進む。10、「げにも心は清経が」はだんだん沈んでいくような感じ。実際に体を沈めるわけではないが、距離感を感じさせて舞う。11、2回目「げにも心は清経が」の小回リは、体をひねって左足を正面に向け、それに右足をかけてキリキリと回る。12、「仏果を得しこそ」で左足を引きながら扇を閉じ始める。右足を大きく引きながら両腕を開け、また左足を引きながら拝む。13、全体的にめりはりをつけて舞う。方向転換前はゆっくりと。動き出すときはゆっくりと、動き始めたらサラサラと。〈感想〉　先日の発表会の写真を皆さんにお渡ししました。私は自分が写っている写真を見て、疑問に思ったことを先生に伺うと、「習い始めは着物を着てきれいだなくらいにしか思わないものだけれど、お稽古をしていくと、自分でいけないところがわかってきます。いいことですね」とのことでした。先生の先生は、今でもご自身が写った写真をご覧になって、「これはいけない…」とか仰っているそうです。芸事には終わりがないのだなと思いました。

  2008年10月09日

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  発表会

  　能の発表会がありました。私は5回目の参加です。　台風13号が近づいて、昨日のリハーサルが危ぶまれましたが結局傘を使わずに済み、今日は夏が戻ってきたかのような強い日差しが降り注ぎました。　会場設営と最終の自主稽古のため早めに会場入りしたら、既に1人来ていて舞台の上に立っていました。昨日、足に引っかかってしょうがなかった床は被毛戦のつなぎ目をテープでくっつけていてくれていたので舞いやすくなっていました。　　今回の発表会は12時から17時までです。私は「鶴亀」「田村」の地謡をした後、連吟「鵜飼い」（語～中入り前）と、仕舞「清経」キリをし、最後の「紅葉狩」の地謡をしました。　仕舞「清経」の足拍子へ行く前を早く運びすぎて謡が少し余った他は、今日が一番うまくいきました。　「田村」の地謡は最後列で先生方の隣に座ったため、先生方の迫力ある謡いに負けないようにと声を出したら、とても疲れました。謡いに体力がいることを痛感しました。さすが勝ち修羅です。「鵜飼」は地謡をワキの人と一緒に謡ったことで、下の句の運び方やイロの付け方、間の取り方、声の出し方、強弱の付け方など、勉強になりました。　打ち上げは18時から2時間、近くのホテルで和食を食べました。先生の挨拶があった後、応援に来て下さった先生の講評があり、歓談。その間、すべてのテーブルを先生が回ってきて、個人的にお言葉を頂きました。最後に、次回のお稽古の日程を含む今後の予定の発表があり、お開きになりました。

  2008年09月20日

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• 稽古122回目（申し合わせ）

  ■謡…「鵜飼」９回目（連吟）シテ語「そもそもこの石和川と申すは。上下三里が間は堅く殺生禁断の所なり。今仰せ候岩落辺に鵜使は多し。夜な夜なこの所に忍び上つて鵜を使ふ。憎き者の仕業かな。彼を見顕さんと企みしに。それをば夢にも知らずしてまた或夜忍び上つて鵜を使ふ。狙ふ人々ばつと寄り一殺多生の理に任せ。彼を殺せと言ひあへり。その時左右の手を合はせ。かゝる殺生禁断の所とも知らず候。向後の事をこそ心得候ふべけれとて。手を合はせ歎き悲しめども。助くる人も波の底に。罧刑にし給へば叫べど声が出でばこそ。その鵜使の亡者にて候。ワキ「言語道断の事にて候。さらば罪障懺悔に。業力の鵜を使うて御見せ候へ。後をば懇に弔ひ申し候べし。シテ「あらありがたや候。さらば業力の鵜を使うて御目にかけ候べし。跡を弔うて賜はり候へ。ワキ「心得申し候。シテ「既にこの夜も更け過ぎて。鵜使ふ頃にもなりしかば。いざ業力の鵜を使はん。ワキ「これはたこくの物語。死したる人の業により。かく苦の憂き業を。今見る事の不思議さよ。シテ詞「湿る松明ふり立てゝ。ワキ「藤の衣の玉だすき。シテ詞「鵜籠を開き取り出し。ワキ「島つ巣おろし荒鵜ども。シテ詞「この川波にばつと放せば。地「面白の有様や。底にも見ゆる篝火に。驚く魚を追ひ廻し。潜き上げすくひ上げ。隙なく魚を食ふ時は。罪も報いも。後の世も忘れはてゝ面白や。みなぎる水の淀ならば。生簀の鯉や上らん玉島川にあらねども。小鮎さばしるせゞらぎに。かだみて魚はよもためじ。不思議やな篝火の。燃えても影の暗くなるは。思ひ出でたり月になりぬる悲しさよ。鵜舟の篝影消えて。闇路に帰るこの身の。名残惜しさを。如何にせん名残をしさを如何にせん。〈注意点〉１、謡い始め「そもそもこの」は、低く、息を強く、殺生禁断の場所で鵜飼いをした罪で地獄に堕ちた亡者っぽく謡う。２、「あらありがたや候」は天人が衣を返してもらって「ありがたや」と言うのとは違う。３、「不思議やな篝火の」からが謡いが伸びていて、お客さんが退屈する。４、ワキと合わせることばかりを考えるのではなく、内容をお客に伝えることを考える。〈感想〉　連吟とは数人で能の一部を装束を着けずに謡うこといいます。今回はシテの私とワキの人の2人が舞台に上がりました。この日、初めて2人で合わせました。合わせすぎると緊張感が無く、かといってそれぞれが好き勝手に謡っても成り立たない、奇妙な難しさがありました。■仕舞…「清経」キリ７回目キリ「さて修羅道に。をちこちの。地「さて修羅道にをちこちの。たづきは敵。雨は矢先。土は清剣山は鉄城。雲の旗手をついて。驕慢の。剣をそろへ。邪見の眼の光。愛欲貪一通玄道場。無明も法性も。乱るゝ敵。打つは波。引くは潮。西海四海の因果を見せて。是までなりや。誠は最期の十念乱れぬ御法の船に。頼みしままに。疑もなく実にも心は清経がげにも心は。清経が仏果を得しこそ有難けれ。〈注意点〉１、「たづきは敵。雨は矢先」は体ごと下を見て、体ごと上を見る。２、「土は清剣山は鉄城」は右足は左足より前に出ない。右腕を引きすぎない。３、「打つは波」の扇の角度に注意する。４、「是までなりや」はすぐ腰を浮かし、顔だけで脇を見る、そして、角の方に体を向け、扇を準備し、開けながら立つ。（開けてから立ってもいい）５、「頼みしままに」は深く進まず、足をかける時に右腕を準備し、一気に体を変え、鋭くさす。〈感想〉　床には横向きに3枚緋毛氈が引かれており、足を運び始める時に引っかかって困った。　また、稽古場とは寸法が違うため、方向転換の場所がキマらず、力の入れどころに困った。

  2008年09月19日

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• 稽古121回目

  ■謡...「鵜飼」８回目シテ語「そもそもこの石和川と申すは。上下三里が間は堅く殺生禁断の所なり。今仰せ候岩落辺に鵜使は多し。夜な夜なこの所に忍び上つて鵜を使ふ。憎き者の仕業かな。彼を見顕さんと企みしに。それをば夢にも知らずしてまた或夜忍び上つて鵜を使ふ。狙ふ人々ばつと寄り一殺多生の理に任せ。彼を殺せと言ひあへり。その時左右の手を合はせ。かゝる殺生禁断の所とも知らず候。向後の事をこそ心得候ふべけれとて。手を合はせ歎き悲しめども。助くる人も波の底に。罧刑にし給へば叫べど声が出でばこそ。その鵜使の亡者にて候。ワキ「言語道断の事にて候。さらば罪障懺悔に。業力の鵜を使うて御見せ候へ。後をば懇に弔ひ申し候べし。シテ「あらありがた有難や候。さらば業力の鵜を使うて御目にかけ候べし。跡を弔うて賜はり候へ。ワキ「心得申し候。シテ「既にこの夜も更け過ぎて。鵜使ふ頃にもなりしかば。いざ業力の鵜を使はん。ワキ「これはたこくの物語。死したる人の業により。かく苦の憂き業を。今見る事の不思議さよ。シテ詞「湿る松明ふり立てゝ。ワキ「藤の衣の玉だすき。シテ詞「鵜籠を開き取り出し。ワキ「島つ巣おろし荒鵜ども。シテ詞「この川波にばつと放せば。地「面白の有様や。底にも見ゆる篝火に。驚く魚を追ひ廻し。潜き上げすくひ上げ。隙なく魚を食ふ時は。罪も報いも。後の世も忘れはてゝ面白や。みなぎる水の淀ならば。生簀の鯉や上らん玉島川にあらねども。小鮎さばしるせゞらぎに。かだみて魚はよもためじ。不思議やな篝火の。燃えても影の暗くなるは。思ひ出でたり月になりぬる悲しさよ。鵜舟の篝影消えて。闇路に帰るこの身の。名残惜しさを。如何にせん名残をしさを如何にせん。〈注意点〉１、5ｳ「そもそもこの石和川と申すは」は、物語の起こりであり、語り始めなので、息いっぱいにどっしりと謡う。お客にとってはタイトルしかわかっていない状態なので、早く話さないように。場所など、ゆっくりと、お客がわかるように謡う。また、「そーもーそーもーこーのー」と同じペースで謡わない。２、6ｵ「憎き者の仕業かな。彼を見顕さんと企みしに。」はシテを捕らえに来た人達の描写。３、6ｵ「それをば夢にも知らずしてまた或夜忍び上つて鵜を使ふ。」はシテの描写。折衝禁断のところで鵜使いなどしたらどうなるかわからない。「ああ...捕まる」とお客に思わせるように謡う。だから、ここまで謡ったら、少し間を置くといい。「鵜を使ふ」は大きく謡う。４、6ｵ「狙ふ人々ばつと寄り一殺多生の理に任せ。彼を殺せと言ひあへり。」は捕らえに来た人たちの描写。何人もの人が「殺せ」と「言ひ合」っているのを表現する。５、6ｵ「その時左右の手を合はせ。」はシテの描写。強く、しかし哀れっぽく謡う。６、6ｵ「かゝる殺生禁断の所とも知らず候。向後の事をこそ心得候ふべけれとて。手を合はせ歎き悲しめども。」まで謡ったら、「この先シテはどうなるのだろうか...」と観客に思わせるために少し間を置く。７、6ｳ「助くる人も波の底に。」と、助からないことを告げる。８、6ｳ「罧刑にし給へば」と、罪の確定を謡う。これは捕らえる側の描写。罧刑(ふしづけ)とは罪人を簀巻きにし、水中に投げ込んで殺す刑のこと。９、6ｳ「叫べど声が出でばこそ」はシテの描写。簀巻きにされているので、苦しくて声が出ない。10、6ｳ「その鵜使の亡者にて候」は、ここで初めてシテが幽霊だということがわかる。老人なので、息を強くして、声はかすれているくらいでいい。11、7ｵ「あらありがた有難や候」「跡を弔うて賜はり候へ」は、シテが一番言いたかったところなので、さらっと謡わない。12、7ｵ「既にこの夜も更け過ぎて。鵜使ふ頃にもなりしかば。いざ業力の鵜を使はん。鵜を使うと地獄に堕ちるが、シテは川を見ると鵜を使わずにいられない。だから、「鵜使ふ頃にもな」ったら嬉しくてたまらない。13、ワキがたっぷり謡うとシテが目立たなくなるので、軽く謡うようにする。シテはそれにつられないようにする。14、7ｳ「湿る松明ふり立てゝ」は湿らせて謡う。湿った松明を振ることによって酸素を送り、燃えさかるようにしているところ。15、7ｳ「この川波にばつと放せば」は一気に鵜を籠から川に放っているように謡う。16、8ｵ「みなぎる水の淀ならば」は「気ヲカヘ」なので少し低めに出るが、調子をそんなに変えなくてもいい。しかし、8ｳ「不思議やな篝火の」はしっかりと「気ヲカヘ」て謡う。17、8ｵ「玉島川にあらねども。小鮎さばしるせゞらぎに」は、シテは鵜使いができて嬉しくてしょうがないところ。18、8ｵ「鵜舟の篝影消えて」は調子を変えて、しっかりと謡う。19、8ｵ「残をしさを」のシヅメは「惜しさをー」と伸ばさず、切って間を置く。〈感想〉　発表会で連吟で出ます。私がシテです。セリフが多いです。自分の謡をレコーダーで聞くのは苦行に近いですが、観客はその苦行を否応もなくさせられるのだからと思って、ちゃんと聞いています。　私の感覚では、「これはやりすぎ」と思うくらい大きく表現した方がおもしろく聞こえるみたいです。また、文頭はもっと力を入れて発声した方がかっこいい感じです。語尾が妙に伸びるというか、変に余韻があるような聞こえ方をする時があるのが気持ちが悪いので、気をつけます。それから、地謡の部分は「気ヲカヘ」に注意して、もっとドラマチックに謡わないといけないのと、浮きに力が入りすぎているような気がします。■仕舞...「清経」キリ６回目〈注意点〉１、はじめの構えの時は右肘を体につけず、少し浮かせて堂々とする。２、もし、本番の舞台上で、扇を開けずに始めてしまった時は、自然に扇を開く。最初に戻ってはならない。３、「驕慢の剣を揃へ」で剣を抜いて右引見の時は、扇を見る。この時、右腕を引きすぎていると見られなくなる。４、「雲の旗手を衝いて」は扇を取りにくかったら2足出てもいい。５、「愛欲貪恚痴通玄道場」は、最初はゆっくり、舞台に背を向けてからはザザザザッと動く。ほとんど間に合わないのではないかというくらいゆっくりした方が、その後の足拍子までの動きに勢いがつく。６、「邪険の眼の光」は剣が下がっているので、上げて持つ。「引くは潮」で座る時も。７、「打つは波」で打つ時は、親指を上に持つ。扇を剣に見立てて、切り下ろす感じで。８、「引くは潮」で扇を上げたら、あっという間に下げてしまうと面白みがない。９、合膝(がっし)は扇を上に振らず、水平に振る。10、「これまでなりや」で脇を向くのは首だけ。体はまっすぐ。むしろ、右肩が心持ち引けていた方がいい。11、地謡に「こういう風に謡ってくれ！」と命令するように舞う。〈感想〉　今日は発表会前の最後の普通のお稽古です。あとは申し合わせをして、その翌日が本番です。この、細かく色々と言われる稽古が私は好きです。私は発表会に備えていつもより多く稽古をしていくし、細かく注意して頂けると確実に良くなっているのを実感するので好きです。しかし、いつもこのレベルの稽古をすると疲れそうですが。　発表会前になると、先生が別の場所でお稽古をつけられている方も来て、謡を合わせたりします。滅多に会えない方にお会いできるのも嬉しいことです。その方がお菓子を盛ってきてくださったりしますが、発表会前は割と慌ただしいので、ゆっくり頂く時間がなかなかないのは少し残念に思います。

  2008年09月11日

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• 稽古120回目

  ■謡...「鵜飼」７回目ワキ・ワキツレ待謡「川瀬の石を拾ひ上げ。川瀬の石を拾ひ上げ。妙なる法の御経を一石に一字。書きつけて。波間に沈め弔はゞ。などかは浮まざるべきなどかは浮まざるべき。後シテ「それ地獄遠きにあらず。眼前の境界。悪鬼外になし。抑もかの者。若年の昔より。江河に漁つてその罪夥し。されば鉄札数を尽し。金紙を汚す事もなく。無間の底に。堕罪すべかつしを。一僧一宿の功力に引かれ。急ぎ仏所に送らんと。悪鬼心を和らげて。鵜舟を弘誓の船になし。法華の御法の済け船。篝火も浮かむ気色かな。〈注意点〉１、9ｵ「などかは浮かまざるべき」の「き」は中マワシなので突き上げず、振るだけ。２、後シテは閻魔大王なので、もっと強く謡う。9ｳ「それ地獄遠きにあらず...」は地獄は遠くにあるのではなく人間の心の中にもあるという、言葉の中身を感じさせるように謡う。次々に言わなければいけないと思ってせかせかと謡わない。地獄は遠くにあるのではないと、聞いている人にわかるように謡うと、評言の仕方が違ってくる。「遠きにあらずー」と、最後を引きすぎず、間を作って聞いている人に考えさせる。３、9ｳ「気色かな」の「な」は振らず、まっすぐ伸ばす。４、10ｳ「法華は利益深き故」は謡いだしの前にしっかり息を吸って、後シテ(閻魔大王)らしくしっかりと謡う。５、11ｵ「仏果菩提に到るべし」の終わりはもっとちゃんと締める。■仕舞...「清経」キリ５回目〈注意点〉１、「打つは波」で打った時は右手から左手までを一直線にする。２、「これまでなりや」は少し腰を浮かせる。しかし体は正面に向けたままで、首だけ脇へ向ける。３、「仏果を得し」で合掌するところは大事なところなので、さっさと次に行かずに、少し時間がとれるようにする。〈感想〉　稽古場は能楽堂ではありません。普通の和室の部屋です。今日は発表会用に、発表会で使う舞台の寸法に合わせて舞いました。いつもよりも2周りほど小さいので、しっかりためて舞わないと、妙なことになってしまいます。　また、これは2分40秒かかるということがわかりました。

  2008年09月04日

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  謡と仕舞の稽古の服装

  私は月２回、謡と仕舞を習っています。稽古の時の服装は洋服です。汗をかいてもいいように、綿の動きやすい服を選びます。 激しい動きの仕舞をするときはズボンで行きます。出来るだけ血流を妨げないようにしたいので、ジーンズは履きません。私は正座が苦手なのです。靴下だけ白足袋に履き替えます。柄足袋はいけません。白足袋です。４枚こはぜでも５枚こはぜでもタビックスでもいいですが、とにかく白です。理由は、舞台は神聖なものだからだそうです。本当は、稽古へは着物で行くのがいいんだと思います。初めての発表会の時、着物で舞ったら腕が重いと感じたからです。先生はいつも着物に袴です。仕舞の時は、袴を少し持ち上げて、足の運び方を見せて下さいます。　　

  2008年08月25日

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  稽古119回目

  ■謡…「鵜飼」６回目ワキ・ワキツレ待謡「川瀬の石を拾ひ上げ。川瀬の石を拾ひ上げ。妙なる法の御経を一石に一字。書きつけて。波間に沈め弔はゞ。などかは浮まざるべきなどかは浮まざるべき。後シテ「それ地獄遠きにあらず。眼前の境界。悪鬼外になし。抑もかの者。若年の昔より。江河に漁つてその罪夥し。されば鉄札数を尽し。金紙を汚す事もなく。無間の底に。堕罪すべかつしを。一僧一宿の功力に引かれ。急ぎ仏所に送らんと。悪鬼心を和らげて。鵜舟を弘誓の船になし。法華の御法の済け船。篝火も浮かむ気色かな。地「迷ひの多き浮雲も。シテ「実相の風荒く吹いて。地「千里が外も雲晴れて。真如の月や出でぬらん。地「ありがたの御事や。奈落に沈む悪人を。仏所に送り給ふなる。その瑞相のあらたさよ。シテ「法華は利益深き故。魔道に沈む群類を救はん為に来りたり。地「げにありがたき誓ひかな。妙の一字はさて如何に。シテ「それは褒美の言葉にて。妙なる法と説かれたり。地「経とはなどや名づくらん。シテ「それ。聖教の。都名にて。地「二つもなく。シテ「三つもなく。地「唯一乗の徳によりて。奈落に沈み果てゝ。浮かみ難き悪人の。仏果を得ん事はこの経の力ならずや。これを見かれを聞く時は。これを見かれを聞く時は。たとひ悪人なりとても。慈悲の心を先として。僧会を供養するならば。その結縁に引かれつゝ。仏果菩提に到るべし。げに往来の利益こそ。他を済くべき力なれ他を済くべき力なれ。〈注意点〉１、8ｳ「「川瀬の石を拾ひ上げ」は、ただ「上」と書いてあるから上音の音階で謡うのではなく、言葉の意味がわかるように謡う。ワキとワキツレは地獄に堕ちたシテを助けようと石にお経を書いて川に放り込むという供養をするので、地獄からの救済を願って謡う。２、9ｵ「それ地獄遠きにあらず」は直前に早笛というお囃子があり、それから走り出てきて謡い始めるので、もっと間をとって謡う。その前に、前シテは中入りで舞台から下り、その間舞台上ではワキと狂言が問答をしている。３、前シテは老人、後シテは閻魔大王。だから、後シテはしっかりと謡う。４、9ｵ「抑もかの者」の「の」はゴマの上に点がついているので音を下げず、降るだけ。9ｵ「若年の昔より」の「よ」はゴマの下に点がついているので音を下げる。大体、ゴマの上に何か書いている場合は音を下げない。(例：ゴマの上につく「オ」。極端に下げない)　　　　５、10ｵ「ありがたの御事や」はさらっと謡う。さらっとだが、ちゃんと息に力を入れて謡う。６、10ｵ「法華は利益深き故」の、シテの謡いだしはしっかり間をとって、息を吸ってから謡う。７、10ｳ「唯一乗の徳によりて」の「た」ののみ節には点線があるので、強く突き上げて謡わない。「だ」は甲グリ(かんぐり)という音で、ツヨ吟でクリのまだ上の音階。８、11ｵ「仏果を得ん事はこの経の力ならずや」は、「ん」に「ハル」があるので、「は」の「下」では下げないが、下に点がついているので少し低める。それ以降は中音になるので、「力ならずや」の「下」は「スエル」もあるためかなり下げないといけない。〈感想〉　今日の謡いは事前にレコーダーに録らせていただいてなかったので、まったく初めてです。事前に謡い本を読んでおくのですが、わからないところがありました。「語」の部分を発表会で独吟ですると聞いていましたが、2人の連吟に変更になりました。ちょっと気が楽な感じがしましたが、謡う部分が増えるそうです。ひええ。■仕舞…「清経」キリ４回目〈注意点〉１、「さて。修羅道に。をちこちの」は気合いを入れて謡う。２、「雲の旗手を衝いて」は両腕を大きく前へ持って行き、堂々と扇をとる。剣を抜いたらそこで少し制止する。右引見たところでも少し制止する。３、足拍子は「無明も法性も」でする。「愛欲貪恚痴…」の部分ではない。４、足拍子をしたら間髪入れずに左腕を上げて用意をする。５、「打つは波」は手と足とを同時に打ってはいけない。手が先。６、「引くは潮」は扇を少しずつ下ろしながら下がり、扇が下りきったところで座る。先に扇を下ろしてしまったら、地謡は舞い手がどこで座るのかわからない。７、「これまでなりや」は脇へ首だけ向けて、奥さんに「これまでなりや」と言う仕草をする。８、「真は最期の」で扇を広げる時は両腕を大きく前へ持って行き、堂々と扇をとる。扇を広げるのは、座っている時にでも、角へ行きながらでもどちらでもいい。９、「頼みしまゝに」は右足をかけながら扇を用意し、身をかえて鋭くさす。そして右足を引き、右足から正先へ出る。10、「げにも心は」の小回リは左足をつけて止まり、左へ体をひねりながら左足を正先に向け、その左足に右足をかけながらくるりと正面へ向く。11、「仏果を得し」は扇を閉じてから合掌する。扇を閉じながら合掌するのは間違い。12、だんだんノって舞わないといけない。次回のお稽古は8月28日ですが、名古屋行きが決まったのでお休みさせて頂きます。

  2008年08月21日

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  稽古118回目(7月31日)

  ■謡…「鵜飼」５回目シテ「その鵜使の亡者にて候。ワキ「言語道断の事にて候。さらば罪障懺悔に。業力の鵜を使うて御見せ候へ。後をば懇に弔ひ申し候べし。シテ「あらありがた有難や候。さらば業力の鵜を使うて御目にかけ候べし。跡を弔うて賜はり候へ。ワキ「心得申し候。シテ「既にこの夜も更け過ぎて。鵜使ふ頃にもなりしかば。いざ業力の鵜を使はん。ワキ「これはたこくの物語。死したる人の業により。かく苦の憂き業を。今見る事の不思議さよ。シテ詞「湿る松明ふり立てゝ。ワキ「藤の衣の玉だすき。シテ詞「鵜籠を開き取り出し。ワキ「島つ巣おろし荒鵜ども。シテ詞「この川波にばつと放せば。地「面白の有様や。底にも見ゆる篝火に。驚く魚を追ひ廻し。潜き上げすくひ上げ。隙なく魚を食ふ時は。罪も報いも。後の世も忘れはてゝ面白や。みなぎる水の淀ならば。生簀の鯉や上らん玉島川にあらねども。小鮎さばしるせゞらぎに。かだみて魚はよもためじ。不思議やな篝火の。燃えても影の暗くなるは。思ひ出でたり月になりぬる悲しさよ。鵜舟の篝影消えて。闇路に帰るこの身の。名残惜しさを。如何にせん名残をしさを如何にせん。〈注意点〉１、6ｳ「その鵜使の亡者にて候」は「そ」と「の」と「鵜」の間に切れ目なくずっと力を入れて、強く謡う。シテは吸った息をなるべく使い切って謡う。ワキはパッパと吸った息を声にかえて謡う。２、7ｵ「あらありがた有難や候」は息を深く吸い込み、ワキとは調子を変えて、低めに取り、心から謡う。３、8ｵ「不思議やな篝火の」は「気ヲカヘ」なので、謡い出す前に少し間をとって、少し低めに出るといい。４、8ｵ「鵜舟の篝」の「ハル」も、少し「気ヲカヘ」気味に出る。調子を変えて謡う。〈感想〉・　「今のままだとなぞっているだけになっちゃっているので、もっと謡うということに苦しんでもらいたい」「謡いに体力も気力もいるということが、まだもうひとつ伝わってこない」と仰って、先生は私の前から立って、部屋の隅へ行かれました。私が座っているところからはだいぶ離れたところです。そこまで声が届くように謡うよう仰り、そのまま稽古が続きました。帰宅してレコーダーで聞くと、先生が離れた位置にいた時とそれ以前とでは私の声が違っていました。いつも自分の謡いは気持ちが悪いと思いながら聞いていましたが、気持ち悪さが少し少なくなっていました。謡おうと思えば、ちゃんと謡えるんだと思いました。・　今日謡った「鵜籠を開き取り出し～名残をしさを如何にせん」を「鵜の段」といい、謡ったり舞ったりするのに良いところだそうです。・ 「鵜飼」の「語」の部分を秋の発表会で独吟でするそうです。独吟は初めてなので驚きましたが、先生が仰るのですから、多分できるのでしょう。・　他の人の謡のお稽古の時に、先生が解説されていました。2つ点と3つ点は引く長さが同じだそうです。それを部屋の隅で静かに聞きながら、心中謡ってみて、「いやいや、まさかそんなことが……ほんまや！」と、明石家さんまが乗り移ってしまいました。2つ点と3つ点では、3つ点の方が長く引くと思いこんでいましたが、字面と拍子の取り方でそう感じるだけでした。謡い本にまんまとだまされたわけです…■仕舞…「清経」キリ３回目〈感想〉　一通り習いました。これを9月20日の発表会でします。　毎年、8・9月のお稽古は何回か休まざるを得ない状況です。今年はまだ予定がわかりませんが、多分最低1回は休むことになるでしょう。自分で稽古をちゃんとしないといけません。

  2008年08月21日

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• 稽古117回目(7月21日)

  ■謡…「鵜飼」４回目シテ語「そもそもこの石和川と申すは。上下三里が間は堅く殺生禁断の所なり。今仰せ候岩落辺に鵜使は多し。夜な夜なこの所に忍び上つて鵜を使ふ。憎き者の仕業かな。彼を見顕さんと企みしに。それをば夢にも知らずしてまた或夜忍び上つて鵜を使ふ。狙ふ人々ばつと寄り一殺多生の理に任せ。彼を殺せと言ひあへり。その時左右の手を合はせ。かゝる殺生禁断の所とも知らず候。向後の事をこそ心得候ふべけれとて。手を合はせ歎き悲しめども。助くる人も波の底に。罧刑にし給へば叫べど声が出でばこそ。その鵜使の亡者にて候。ワキ「言語道断の事にて候。さらば罪障懺悔に。業力の鵜を使うて御見せ候へ。後をば懇に弔ひ申し候べし。シテ「あらありがた有難や候。さらば業力の鵜を使うて御目にかけ候べし。跡を弔うて賜はり候へ。ワキ「心得申し候。シテ「既にこの夜も更け過ぎて。鵜使ふ頃にもなりしかば。いざ業力の鵜を使はん。ワキ「これはたこくの物語。死したる人の業により。かく苦の憂き業を。今見る事の不思議さよ。シテ詞「湿る松明ふり立てゝ。ワキ「藤の衣の玉だすき。シテ詞「鵜籠を開き取り出し。ワキ「島つ巣おろし荒鵜ども。シテ詞「この川波にばつと放せば。地「面白の有様や。底にも見ゆる篝火に。驚く魚を追ひ廻し。潜き上げすくひ上げ。隙なく魚を食ふ時は。罪も報いも。後の世も忘れはてゝ面白や。みなぎる水の淀ならば。生簀の鯉や上らん玉島川にあらねども。小鮎さばしるせゞらぎに。かだみて魚はよもためじ。不思議やな篝火の。燃えても影の暗くなるは。思ひ出でたり月になりぬる悲しさよ。鵜舟の篝影消えて。闇路に帰るこの身の。名残惜しさを。如何にせん名残をしさを如何にせん。中入間〈注意点〉１、6ｵ「向後の事をこそ心得候ふべけれとて」の「れ」は、下に下がってちょっと振る。２、6ｳ「手を合はせ歎き悲しめども」の「し」の頭は下げる。「助くる人も波の底に」の「こ」も同様。３、7ｵ「あらありがた有難や候」は直前のワキの謡いにつられず、少し間をとってもいいから深く息をとって。４、7ｵ「既にこの夜も」の出だしを滑らかに謡うとのんびりしてしまってせっぱ詰まった感じがなくなるので、吸った息を体にためておいて詰めた息を出す。５、7ｳ「湿る松明振り立てゝ」の右横に「スラリ」と書いてあるが、さらさら謡うということではない。心の中に悩みや葛藤がない場合にこのように書かれる。この場合、シテは単純に「松明を振り立て」る。しかし、以前は殺生禁断のことをやめるようにといったワキの僧が、ここでは鵜の段を引き出すためにもう一度鵜を使うように言ているという矛盾があるので、あっけらかんと謡ってはならない。　ちなみに、ワキの言葉の右横に書かれる場合は「サラリ」。この場合は言葉のまま、色をつけずにさらりと謡うと良い。６、老人の役は声が大きい必要もないし、声が美しい必要もない。しかし、息は徹底的に強くないといけない。〈感想〉　「湿る松明」と謡うと、「もっと湿らせて下さい」と注意を受けました。ちょっとおもしろいなと思いましたが、要するに謡は声で状況を表現しなければならないので、こう言う以上に的確な注意はできないわけです。　今回は息を詰めて「ゴツゴツと」謡うことを何度も繰り返しました。このように謡うと、一文字一文字に体力がいり、汗が噴き出ました。■仕舞…「清経」キリ２回目　「因果を見せて」まで習いました。　この日、2007年10月28日の発表会を撮影したDVDを一緒にお稽古している方達と一緒に見ました。この時舞ったのは仕舞「巴」です。初めて自分が舞っているのを自分で見てしまい、妙な汗をかきました。型が間違っているわけではないのですが、全体的におとなしく、武将らしい覇気のない舞でした。これでもこの時は精一杯突っ張って舞ったつもりですが、まるでできていませんでした。

  2008年08月21日

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• 稽古116回目

  ■謡…「鵜飼」３回目ワキツレ「いかに申し候。この人を見て思ひ出したる事の候。この二三箇年前に。この川下岩落と申す所を通り候ひしに。かやうの鵜使に行き逢ひ候ふ程に。科の中の殺生の由を申して候へば。げにもとや思ひけん。我が家に連れて帰り。一夜けしからず摂して候ひしよ。シテ「さてはその時の御僧にて渡り候ふか。ワキツレ「さん候その時の僧にて候。シテ「なうその鵜使こそ空しくなりて候へ。ワキ「それは何故空しくなりて候ぞ。シテ「恥かしながらこの業にて空しくなりて候。その時の有様語つて聞かせ申し候べし。跡を弔うて御やり候へ。ワキ「心得申し候。シテ語「そもそもこの石和川と申すは。上下三里が間は堅く殺生禁断の所なり。今仰せ候岩落辺に鵜使は多し。夜な夜なこの所に忍び上つて鵜を使ふ。憎き者の仕業かな。彼を見顕さんと企みしに。それをば夢にも知らずしてまた或夜忍び上つて鵜を使ふ。狙ふ人々ばつと寄り一殺多生の理に任せ。彼を殺せと言ひあへり。その時左右の手を合はせ。かゝる殺生禁断の所とも知らず候。向後の事をこそ心得候ふべけれとて。手を合はせ歎き悲しめども。助くる人も波の底に。罧刑にし給へば叫べど声が出でばこそ。その鵜使の亡者にて候。〈注意点〉１、5ｵ、シテはシテらしく謡う。シテは鵜使いなので上品さはいらないが、強さはいる。「スラリ」と書いてあってもワキやワキツレの「スラリ」ではない。この場合の「スラリ」とは心中含むものがないという意味。２、5ｵ、ワキツレ「摂して候ひしよ」は、次にシテが謡うのがわかっているので、あまりスパッと言葉を切らない方が良い。次にシテが謡いやすいような切り方をする。３、5ｵ「心持シ」は、生前シテはワキツレに鵜使いをやめるように諭されたにもかかわらずやめなかったという恥ずかしさがあるが、言わなければいけないので、そのようなことを思いながら謡う。技術的にどうこうというものはないが、シテの気持ちを心の中に持ちながら「この業」(＝鵜使い)で虚しくなったのだと思いながら謡う。４、ワキツレの文頭をはっきりと発声する。５、役の謡をする時は、出番が来るまでに息を吸って体にためておく。そして、出番が来そうなときに息を調整する。相手がどんな終わり方をしても対応できるように。６、5ｳ「鵜使いは多し」、6ｵ「鵜を使ふ」は、ヒラキで息をとってもっと大きく謡う。シテは殺生禁断とわかっているところで鵜使いをしようとしている。「鵜使いは多し」と一般的に言っているが、自分のことを言っている。夜な夜な人目を忍んで鵜使いをするところを、その景色が見えるように謡う。７、6ｵ「企みしに」は、鵜使いを捕まえようとその場に潜んでいる人々の気持ちで謡う。８、6ｵ「鵜を使ふ」はシテが最後に鵜を使った場面。大きく謡う。９、6ｵ「彼を殺せと言ひあへり」は何人もの人々が「殺せ」「殺せ」と言い合っているのがシテに聞こえている。10、ヒラキでは息を継ぎながら、どうやって謡おうかと考える。11、6ｵ「かゝる殺生禁断の所とも知らず候。向後の事をこそ心得候ふべけれとて。」はもっと哀願する。嘘を言いながら懇願する必死さを表す。12、6ｵ「左右の手を合わせ」の「下」で以降は「中」になる。(音の高さは変わらない）6ｳ「心得候べけれとて」で下がったら、「手を合はせ」はまた「中」で謡う。「嘆き悲しめども」は二段落としで、「下」で音を下げる。「波の底に」も同じような謡い方。　音の差がない時(上と中)は「下」の前の語尾を突き上げるが、そうではない時は音を下げる。〈感想〉　他の人のお稽古中に先生が「お稽古の後２～３日くらいのうちに自分でもう一回謡っておくと身につきますよ」と仰っていました。私も以前からそうなんだろうなと思っていましたが、実際にはお稽古が迫ってこないとなかなかしません。今回は先生のこの言葉を思い出して、2～3日中におさらいしてみました。■仕舞…「清経」キリ１回目〈感想〉　習い始めて21個目の仕舞は、前回までの「清経」クセの続きの部分です。はじめから、中程の「引くは潮」まで習いました。

  2008年07月03日

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• 稽古115回目

  ■謡…「鵜飼」２回目シテ詞「いつもの如く御堂に上り鵜を休めうずるにて候。や。これは往来の人の御入り候よ。ワキ詞「さん候往来の僧にて候が。里にて宿を借り候へば。禁制の由申し候程に。さてこの御堂に泊りて候。シテ「げにげに里にてお宿参らせうずる者は覚えず候。ワキ「さて御身は如何なる人にて渡り候ぞ。シテ「さん候これは鵜使にて候ふが。いつも月の程はこの御堂に休らひ。月入りて鵜を使ひ候。ワキ「さては苦しからぬ人にて候ふぞや。見申せばはや抜群に年たけ給ひて候ふが。かゝる殺生の業勿体なく候。あはれ此業を御止りあつて。余の業にて身命を御つぎ候へかし。シテ「仰せ尤もにて候へども。若年よりこの業にて身命を助かり候程に。今さら止まつゝべうもなく候。〈注意点〉１、ワキはシテが出てきたら重く謡わない。シテと同調しないように。■仕舞…「清経」クセ６回目〈注意点〉１、「取り乗りて」の半開きはしっかりときめる。２、「あぢきなや。とても消ゆべき露の身を」は焦らずに動く。３、「腰より横笛抜き出し」は左足を引きすぎ。右足の真後ろに左足が来ると不安定になる。４、「落汐の」は指を伸ばして扇を上げる。〈感想〉　今日で終わりました。7分余りある、長い仕舞でした。　１つ仕舞を習い終えたら、仕舞等級表に丸をつけるようにしています。今回初めて１級の欄に丸がつきました。

  2008年06月12日

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• 稽古114回目

  ■謡…「鵜飼」１回目ワキ「是は安房の清澄より出でたる僧にて候。我いまだ甲斐の国を見ず候ふ程に。この度甲斐の国行脚と志して候。行くすゑ何時と白波の。安房の清澄立ち出でて。六浦のわたり鎌倉山。やつれ果てぬる旅姿。やつれ果てぬる旅姿。捨つる身なれば恥ぢられず。一夜仮寝の草むしろ。鐘を枕の上に聞く。都留の郡の朝立つも。日たけて越ゆる山道を。過ぎて石和に。着きにけり過ぎて石和に着きにけり。シテ「鵜舟にともす篝火の。後の闇路を。如何にせん。実にや世の中を。憂しと思はゞ捨つべきに。その心更に夏川に。鵜使ふ事の面白さに。殺生をするはかなさよ。伝へ聞く遊子伯陽は。月に誓つて契りをなし。夫婦二つの星となる。今の雲の上人も。月なき夜半をこそかなしみ給ふに。我はそれには引きかへ。月の夜頃を厭ひ。闇になる夜をよろこべば。鵜舟に灯す篝火の。消えて闇こそ悲しけれ。拙かりける身の業と。拙かりける身の業と。今は先非を悔ゆれども。かひも波間に鵜舟漕ぐ。これ程惜めども。叶はぬ命つがんとて。営む業の。もの憂さよ。営む業のもの憂さよ。〈注意点〉１、シテは僧。殺生禁断の場所で生活のためと面白いから鵜を使っていて、罰されて死んだが、地獄から蘇ってきた。だから抑えめに謡う。だんだん自分の歌いやすい音階に移行していかない。２、息を強く出す。声を強く出すのだが、大きな声ではなく、抑えた強い息をなるべく出す。朗々と謡わなくて良い。例えば2ｵ「鵜舟にともす篝火の。」のところは、「鵜舟にともす」までしか息が続かなくても良い。それくらい、強く息を使う。３、2ｳ「拙かりける身の業と。」は、「上」だが、単純に「上」と思わず、これまでの延長線上に拍子合の謡いになったと考える。〈感想〉　今日の部分は前回、先生にお手本を謡って頂かなかったので、家では一通り謡い本を読み、どういう曲だろうかとイメージしていきました。想像以上に暗い謡いでした。　息を使って謡いなさいということは、稽古を始めた頃からずっと言われ続けてきたことで、なかなか難しいことです。「鵜飼」ではたっぷりと息についての御指導を頂く予感がします。■仕舞…「清経」６回目〈注意点〉１、「長門の国へも」は遠くにいる敵をしっかり見る。２、「取り乗りて」の半開きや「押し出す」の角トリや「松見れば」は、手だけでするのではなく、上半身全体を使う。３、「あぢきなや。とても消ゆべき露の身を」は悲壮感を表す。４、「腰より横笛抜き出し」は左足引きすぎ。右腕は手首を使わない。５、「船よりがっぱと」は右足かけ、左手といっしょに右左と出て、左右と足拍子。〈感想〉　長かったですが、一通り覚えるのはそれほど苦労しませんでした。ただ、当然型を覚えるだけではだめで、型を気持ちを込めて舞うのがなかなかできません。

  2008年05月22日

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• 稽古113回目

  ■謡…「熊野」９回目いかに誰かある。御前に候。熊野はいづくにあるぞ。未だ御堂に御座候。何とて遅なはりたるぞ。急いで此方へと申し候へ。畏つて候。いかに朝顔に申し候。はや花の下の御酒宴の始まりて候。急いで御参りあれとの御事にて候。その由仰せられ候へ。心得申し候。いかに申し候。はや花の下の御酒宴の始まりて候。急いで御参りあれとの御事にて候。何とはや御酒宴の始まりたると申すか。さん候。さらば参らうずるにて候。なうなう皆々近う御参り候へ。あら面白の花や候。今を盛りと見えて候ふに。何とて御当座などをも遊ばされ候はぬぞ。げにや思ひ内にあれば。色外にあらはる。よしや由なき世の習ひ。嘆きてもまた余りあり。花前に蝶舞ふ紛々たる雪。柳上に鴬飛ぶ片々たる金。花は流水に随つて香の来る事疾し。鐘は寒雲を隔てて声の至る事遅し。清水寺の鐘の声。祇園精舎をあらはし。諸行無常の声やらん。地主権現の花の色。娑羅双樹の理なり。生者必滅の世のならひ。げに例あるよそほひ。仏も元は捨てし世の。半ばは雲に上見えぬ。鷲のお山の名を残す。寺は桂の橋柱。立ち出でて峯の雲。花やあらぬ初桜の祇園林下河原。南を遥かに眺むれば。大悲擁護の薄霞。熊野権現の移ります御名も同じ今熊野。稲荷の山の薄紅葉の。青かりし葉の秋また花の春は清水の。ただ頼め頼もしき春も千々の花盛り。〈注意点〉１、10ｳ「いかに誰かある」はワキの平胸盛っぽく謡う。熊野の願いを聞き入れない暴君ぷりを表す。そうしないと、熊野の可憐さが浮かび上がらない。２、12ｳ「沙羅双樹の理なり」が低すぎる。サシ（12ｵ「花前に蝶舞ふ～」）を抑え気味に謡うと謡いやすい。　　クリ(12ｵ「げにや思ひ内にあれば～」)の「上」は「引テヽ」と書いてあるように、普通の「上」よりも華やかに謡い始める。サシ（12ｵ「花前に蝶舞ふ～」）の「上」は普通より少し抑えめに歌い始める。〈感想〉　「花前に蝶舞ふ～寺は桂の橋柱」は私にとってはとても難しくて、なかなか節回しを覚えられなかったので、これでもかこれでもかと家で稽古をしました。寝る前に稽古をして、翌朝目が覚めて一番に頭に浮かんだことが謡だった日もありました。これくらい熱心にいつも稽古をしたらもっと上手くなるんでしょうが、なかなかそうはいきません。　「立ち出でて峯の雲～花盛り」の部分は仕舞を既に習っています。舞を知っていると、なんとなくリズムをとりやすい感じがします。仕舞「熊野」は初めての発表会で舞いましたので、その謡をやっと習えたことは感慨深いです。　以下の部分は「以前発表会で地謡をやっているから大丈夫よね」との先生のお言葉で、急遽、先生のお手本の後に続けて謡うことになりました。確かに、去年６月の発表会には出ましたが、今となっては忘れていました。記憶力と読解力をフル動員して、なんとか謡いました。一応、「熊野」のお稽古は今回で終わりです。　「降るは涙か。降るは涙か桜花。散るを惜まぬ。人やある。」は旋律がきれいです。難しいですが。山の名の。音羽嵐の花の雪。深き情を。人や知る。なうなう俄かに村雨のして花の散り候はいかに。げにげに村雨の降り来つて花を散らし候ふよ。あら心なの村雨やな春雨の。降るは涙か。降るは涙か桜花。散るを惜まぬ。人やある。由ありげなる言葉の種取上げ見れば。いかにせん。都の春も惜しけれど。馴れし東の花や散るらん。げに道理なり哀れなり。はやはや暇とらするぞ東に下り候へ。なに御暇と候や。なかなかの事とくとく下り候ふべし。あら嬉しや尊やな。これ観音の御利生なり。これまでなりや嬉しやな。これまでなりや嬉しやな。かくて都にお供せば。またもや御意のかはるべき。ただこのままにおいとまと。木綿附の鳥が啼く東路さして行く道の。やがて休らふ逢坂の。関の戸ざしも心して。明け行く跡の山見えて。花を見捨つる雁のそれは越路我はまた。東に帰る名残かな東に帰る名残かな。■仕舞…「清経」５回目〈注意点〉１、指し込んだら、一呼吸置く。甲冑をまとった武将の役なので、スパッと動く。２、向を変える時に、あっという間に変えない。一呼吸置いてから次の動作にかかる。３、「かかりけるところに」は敵がやってくるところなので、しっかりと謡う。４、「暁の」は、顔でではなく胸で月を見る感じにする。〈感想〉　最後まで教えていただきました。今日初めて教えていただいた箇所は「腰より横笛抜き出し。音もすみやかに吹き鳴らし今様を謡ひ朗詠し。来し方行く末をかゞみて終には何時かあだ波の。帰らぬは古止らぬは心づくしよ。この世とても旅ぞかし。あら思ひ残さずやと。外目にはひたふる狂人と人や見るらん。よし人は何ともみるめをかりの夜の空。西に傾く月を見ればいざや我も連れんと。南無阿弥陀仏弥陀如来。迎へさせ給へと。たゞ一声を最期にて。舟よりかつぱと落汐の。底の水屑と沈みゆく憂き身の果てぞ悲しき。」です。短い仕舞の２つ分くらいあります。　今日はお稽古に来ている人が私を含めて2人でしたので、１人でたっぷりと舞うことができました。まず一通り教えて頂き、もう1人の人が謡いの稽古を受けている間、私はその後ろで舞っていました。　この「清経」クセは今まで習った仕舞の中で一番長いです。「富士太鼓」キリの方が長かったから平気！…と思っていましたが、型付けを見比べてみると「清経」クセの方が長かったです。俄に難しいことをしている気分になってしまいました。比べなければ良かった…。　足拍子が多いこともあり、覚えるのが大変ですが、謡いをちゃんと覚えると、型も頭に入りやすいように思います。※今までのお稽古を数え直したら、前回までのは間違っていました。

  2008年05月08日

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• 稽古109回目

  ■謡…「熊野」８回目四條五條の橋の上。四條五條の橋の上。老若男女貴賎都鄙。色めく花衣袖を連ねて行末の。雲かと見えて八重一重。咲く九重の花盛り。名に負ふ春の。景色かな名に負ふ春の景色かな。河原おもてを過ぎ行けば。急ぐ心の程もなく。車大路や六波羅の。地蔵堂よと伏し拝む。観音も同座あり。闡提救世の。方便あらたにたらちねを守り給へや。げにや守の末すぐに。頼む命は白玉の。愛宕の寺もうち過ぎぬ。六道の辻とかや。げに恐ろしや此道は。冥途に通ふなるものを。心ぼそ鳥辺山。煙の末も薄霞む。声も旅雁のよこたはる。北斗の星の曇なき。御法の花も開くなる。経書堂はこれかとよ。そのたらちねを尋ぬなる。子安の塔を過ぎ行けば。春の隙行く駒の道。はや程もなくこれぞこの。車宿り。馬留め。こゝより花車。おりゐの衣播磨潟飾磨の徒歩路清水の。仏の御前に。念誦して母の祈誓を申さん。今回の注意点１、四条五条の雑踏を描き出すように謡う。２、謡いの文句は七五調。それを八拍に当てはめていく。上の句は大きめに、下の句は運んで謡う。それを意識すると緊張感のある謡になる。３、シテの箇所には「閑カニ」と書いてある。これは地謡につられず、静かに謡うということ。４、地謡の謡の終わりに「少シメ」と書いてあるのは、地謡がシテに謡の順番を渡す時に、そのままのペースで渡すとしてが謡いにくくなるので少し締めて（ペースダウン）謡うこと。これを「シテ渡し」という。・感想　私が謡い終えて、先生からの最初は「四条五条の雑踏を描き出してほしい」というものでした。「そんな無茶な…」と思いました。それでも、「雑踏…雑踏…」と思いながら謡うのと、ただ謡うのとでは我ながら声の響きが違うような気がしました。　私が一通り謡った後、パート分けをして謡いました。はじめは先生が地謡で私がシテ。次は交替。私はシテ役の時はそれに必死で地謡をあまり聞けません。だから、パートを入れ替わると、先生は地謡をどう詠っていたのかを思い出すのが困難になります。単純な脳だなあと思います。　最後に先生は、次回までに稽古してこられるようにお手本を謡って下さいます。謡の内容は花見の情景だからきれいだし、先生の声も今日はいつもよりもきれいに聞こえるし……しかし、この時私の足はしびれが限界でした。ふくらはぎの裏を血管が脈打つのを感じ、足をずらしたりしてごかましながらも、汗がおでこに噴き出し、こめかみをつたい、鼻の下に溜まり、まぶたにも汗の玉が乗りました。謡本をめくると、腕の筋肉を動かした振動が足に伝わって痛かったです。 ここまで正座をつらいと思ったのは能の稽古をし始めてから2回目です。 今日は、靴を履いた時にいつもよりきつい感じがしましたので、多分足がむくんでたんだと思います。最近、椅子に座る時間が異様に長くなっているからな…。ちなみに今日の謡の稽古はいつもより長く、53分間でした。■仕舞…「清経」４回目１、ふわっと舞うのではなく、今にも入水しようという武将なのだからもっと鋭角的に動く。・感想　型は覚えて行きましたが、全体的に私の動きが早く、タイミングが合っていませんでした。　新しく、「あぢきなや～船の舳板に立ち上り」を教えていただきました。ここまでで約五分の三。

  2008年04月23日

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  発表会

  能の発表会でした。はじめの足拍子のタイミングが悪かったですが、それ以外はほぼ稽古通りにできました。写真はこの日着た着物です。最後に、プロによる能「猩々乱　双之舞」がありました。真っ赤の髪に真っ赤な面、真っ赤な着物で、人というよりも変な生き物２匹が舞台に出現したという感じでした。つま先立ちになって、両足と両腕を大きく開いて、カニ歩きで舞台をぐるぐる回ったり、何かを蹴り上げるような仕草をしたりして、変わった足の運び方で舞っていました。首を横に振ったりもしていました。「猩々」は習った時から好きな曲でしたが、実際に能を見てみてもっと好きになりました。今日は地謡の斜め後ろの席で、あまりよく見えませんでしたので、今度は正面から見てみたいです。

  2007年10月28日

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  長刀

  発表会に向けて、自主稽古をしています。仕舞は「巴」をします。稽古場に着くと、まず時計やアクセサリーを外し、白足袋を履き、長刀を組み立てます。この長刀は先生の物ですが、稽古をするためにお借りしています。お借りする前はホウキで代用していましたが、長さが足りなかったり、軽すぎたりして、代用品としてはあまり適していませんでした。長刀を組み立てると、私の身長より少し高めになります。ものすごく重いということはないですが、それなりに重さがあります。床に大して水平に持つと重みを感じますが、垂直に持つと大して重くはありません。

  2007年10月27日

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• 申し合わせ

  　発表会の申し合わせをしました。■謡…「鶴亀」　私が一番に舞台に出ていく。アナウンスが住んだら舞台袖にいるスタッフが合図をしてくれるので、その後出て行く。　下を向かず、まっすぐ前を向いて歩く。腕を振らない。　自分の席に着いたら、見台に謡本を置き、開ける。次に扇を腰から抜いて、体の右側に置く。全員が揃って先生が「はい」と言うのを聞いたら、右手で扇を体の前に滑らせ、両手で膝の上に取り上げ、右手で扇を持って膝の前に置く。　謡い終わったら、扇を膝の上に上げ、両手で膝の前に置き、右手で扇を体の右へ滑らせ、扇を腰に差す。謡本を閉じ、見台を両手で持ち、正面の向いたまま両膝を立て、斜め右（できるようなら真横）を向く。後ろの人たちが出て行くのを見計らって退場する。■仕舞…「巴」・今回の注意点　ためて舞う。「それほど型が多くないし、遅れていたら早く謡うこともできるので、せかせかと焦らないでゆっくり舞って下さい」と言われました。

  2007年10月21日

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  謡と美声

  謡いの稽古に行くと、「私はきれいな声じゃないから…」と仰っている人がいました。 先生は、謡は必ずしも美声を必要としないいうようなことを仰いました。見ている人へ、悲しいとか嬉しいとかいうことを伝える説得力や、謡い用の発声を正しくすることから生じる緊張感。そうしたものの方が美声よりも必要だそうです。森本レオも、「声の善し悪しではなく、何を伝えたいかと言うことと、その人が持っているものだ」と、2007年6月15日の「ムハハnoたかじん」で言っていました。http://www.ktv.co.jp/takajin/muhaha/←「観世流謡曲名曲撰（五）～田村｜小鍛冶」

  2007年08月01日

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  歌謡曲と謡曲と

  謡を習うようになってから、Jポップを聞いていると、「あっ、今のは中マワシ！」「おっ…今のは入かな？」などと思うようになりました。先生にこのことを言うと、おかしそうに笑っていました。　←「観世流謡曲名曲撰（四）～大佛供養｜猩々｜菊慈童」

  2007年07月18日

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• 稽古105回目

  ■謡…「熊野」７回目今はかやうに候へば。御暇を賜はり。東に下り候ふべし。老母の痛はりはさる事なれどもさりながら。この春ばかりの花見の友。いかで見捨て給ふべき。御言葉を返せば恐れなれども。花は春あらば今に限るべからず。これは徒なる玉の緒の。永き別れとなりやせん。たゞ御暇を賜はり候へ。いやいや左様に心弱き。身に任せては叶ふまじ。いかにも心を慰めの。花見の車同車にて。共に心を慰まんと。牛飼車寄せよとて。牛飼車寄せよとて。これも思ひの家の内。はや御出でと勧むれど。心は先に行きかぬる。足弱車の力なき花見なりけり。名も清き。水のまにまにとめ来れば。川は音羽の。山桜。東路とても東山せめて。其方のなつかしや。春前に雨あつて花の開くる事早し。秋後に霜なうして落葉遅し。山外に山有つて山尽きず。路中に路多うして道窮まりなし。山青く山白くして雲来去す。人楽み人愁ふ。これ皆世上の有様なり。誰か言ひし春の色。げに長閑なる東山。・今回の注意点１、7ｵ「共に心を慰まんと。牛飼車寄せよとて。」の地謡「牛飼車寄せよとて」はワキが牛飼いに命令しているところなので、そのように謡う。２、8ｵ「川は音羽の。山桜」の辺り、剛吟であることを納得できてないように聞こえる。少し前の「牛飼車寄せよとて」に引きずられているような感じがする。浮きは力を抜いてふわっと浮かして謡う。浮きは音の高さとして捉えずに、音を浮かせると考える。浮きは上音に上がるなどの間のつなぎの音。３、8ｵ「なつかしや」の「内ヘトリ」は、懐かしいという気持ちをワキの前では口に出して言えない状況なので、言わずに思っているということを表現するという意味。４、8ｵ「なつかしや」の「な」は、いったん浮いた後は、浮ききらずに半分だけ浮く。・感想　「文の段」3回目！と思って練習していきましたが、次に進みました。　8ｳ「路中に路多うして」のはじめの「路」には、振り仮名の「ロ」と、浮きを示す「ウ」とが書いてあるのでまぎらわしく、「ロチウ」と謡うところをつい「ウチウ」と謡ってしまいました。たまにこういうことはあります。　しっとりと謡うことが難しいということを申し上げると、先生は私の段階ではまだ能らしい声を作らない方が良いと仰いました。そういう意味では、「熊野」を謡うのは半分無理なことだそうです。なぜ能らしい声を作らない方が良いのかと伺うと、声が十分に出る段階でないうちから小手先のことを覚えると、能力が小さくなるからだそうです。今はとにかく声を張って、柔吟でもしっかりと謡いなさいと仰いました。もし、大学1年生で能楽部に入ったとしたら、何年生から能っぽい謡い方をするようになるのかという伺い方をしてみると、「しません」と仰いました。先生曰く、「私でもまだ先生からはしっかり謡うようにと言われます」だそうですから、私ではまだまだ声を出すことの訓練中だということでしょう。ただ、「熊野」を謡う時に能らしい声を試してみてもいいこと、その時のこつは、自分に引き寄せた声の出し方をすることだと付け加えられました。■仕舞…「清経」クセ２回目・感想　型付けに「一葉の舟なれや」の七ツ拍子が「○」で書かれていないので、いつ踏むか決まってないのかと質問してみたら、書いてないだけで決まっているとのことでした。　今日は「思ひ取り」まで習いました。約半分です。

  2007年07月12日

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  能『道成寺』の楽しみ方

  　能「道成寺（どうじょうじ）」についての講演がありました。講師の先生は12年前に披(ひら)きをし、今年演じる「道成寺」は2度目だそうです。今回は「赤頭」いう小書(こがき。特殊演出のこと)がつきます。　　以下、勉強した内容を書き記します。〈基礎知識〉・　道成寺とは和歌山県にあるお寺。能楽師が「道成寺」を演じる時には必ずここへお参りする習慣がある。すると後日、道成寺から「安心してお勤めなさい」というような励ましのお手紙をくれる。・　「道成寺」は能の中で特殊なことが多い曲であり、若い能楽師にとっては一人前になるか否かの最後の関門。〈装束〉・　摺箔(すりはく)は三角形をつないで作った鱗模様。鱗箔(うろこはく)と呼んでいる。「道成寺」には必ず鱗模様を着る。女性の嫉妬が高じると蛇になるが、その蛇身を表すのが鱗模様である。「葵上」にも用いる。・　腰に巻く腰帯も「道成寺」では必ず鱗模様。・　頭に巻く蔓帯(かずらおび)も鱗模様。金地に黒の鱗模様は「道成寺」だけに用いられる。・　蔓(かずら)は本蔓(ほんかずら)という、人間の髪の毛でできたものを必ず使う。通常の能には、ばすかずらという馬のしっぽを黒く染めた物で作った蔓を使うが、「道成寺」には本蔓でないといけない。後場で蔓をわざと乱さないといけないからである。これを鬼蔓という。横の鬢の所をわざと広げ、頭の上の方を角のように後ろから1筋と、右2筋・左2筋(1筋ずつのこともある)をピッと引っ張って出す。ばすかずらではおどろおどろしさが出ないし、上手く髪を引っ張ることができないので本蔓を用いる。「葵上」「安達原」のような後シテで般若の面を掛ける曲は本蔓を用いることになっている。・　前シテが持つ扇は必ず鬼扇(おにおうぎ)。一輪の牡丹が描かれている。・　後シテは打ち杖を持つ。これは魔法の杖であり、これを持っていると人をやっつけるような力が発揮できる。この杖を落とした時には力を失う。「道成寺」では必ず赤の打ち杖を持つように決まっている。ちなみに、龍神物は萌葱色、鬼は紺色。・　後シテは般若(はんにゃ)の面を掛ける。般若には白般若(しろはんにゃ)、赤般若(あかはんにゃ)、黒般若(くろはんにゃ)の３種類がある。　白般若は顔が白く品がいい。「葵上」の六条御息所役に用いる。　「道成寺」は庶民の娘が変化したものなので、白般若より少し品が下る赤般若を用いる。　黒般若は赤般若よりもっと品が下る。「安達原」(他の流儀の言い方では「黒塚」)の鬼の役に用いる。　般若の目元は男の愛を失った哀しみの表現、口元は裏切られた怒りの表現がなされている。哀しみと怒りを組み合わせて複雑な女性の心理を表現しているのである。牙が出ていたり、口角が裂けていたり、角が出ていたりするのは蛇身への移行の過程である。・　「道成寺」の衣装換えは全て鐘の中でシテが1人でする。鐘にすっぽり入ってしまっているので、後見は手伝えない。〈演出〉・　鐘は怪異な存在として持ち出される。竹を組んで布を掛け、縁の部分に藁を掛けてその中に重りを仕込むので相当重い。80kgほどあるそうだ。・　鐘を吊る高さには決まりがある。最初と、シテが登場する時の高さ、その他にもシテが物着をした時には鐘は少し上がり、鐘入りの前には少し下りてくる。鐘の扱いを見るのも「道成寺」の楽しみの１つである。〈内容〉・　乱拍子(らんびょうし)は凄まじい気迫で小鼓だけが打つ。大鼓は床几(しょうぎ)をたたんで下へ下りてしまい、打たないということを態度で示す。乱拍子は一回打つと、数日は仕事ができないくらい体力も気力も必要である。　スピードはとてもゆっくりである。一足出し、「ホッ」というのでつま先を上げ、間をとり、「チ」でつま先を下ろすということを繰り返す。前に進み、横に進み、斜めに行って正面に戻る。つまり、三角形の鱗の形を作っているのである。これも蛇身の表現である。前に進んでから戻ってくるまでに、最低でも15分かかり、場合によっては20分かかることもある。・　急ノ舞はとても早い舞。乱拍子で堰き止められ溜まりに溜まったエネルギーが堰を切られたように流れ出した感覚である。・　中入りで狂言の２人が出てきて鐘が落ちたことを報告しに行く場面は、報告の仕方が非常に面白い。能は概して、後場で緊張感が高まったり、壮絶な内容の曲であるほど間狂言が面白い。「安達ヶ原」「山姥」「橋弁慶」「夜討曽我」など。間狂言の間に十分に人の心を解いておくと、後場の緊張感が高まるという、能全体のバランスが考えられているのだろう。・　ワキ達が数珠を揉んで祈ると、撞いてもない鐘がジャーンと鳴り始める。もしここで音がしなかったら後場になっても鐘は上げないことになっている。シテに何らかのトラブルがあったと見なし、鐘の後ろをそっと上げ、中のシテを引き出す。能はシテが舞えなくなっても曲は止まらない。シテが死んだ場合にはどうするかということまで決められている。・　ワキの祈りは凄まじい。囃子には太鼓が入る。囃子は常にワキの側に立って打つ。囃子が激しくなるほど、ワキの力が強くなることを意味する。〈まとめ〉・　「道成寺」は1つ1つが大変な“習い事”で、秘伝・様式でがんじがらめにされている。シテにどんどんプレッシャーを掛けていき、その上で演じることができるのかということをシテに問いかける曲である。「道成寺」は20代で披く人が多いが、披きの「道成寺」は様式を取得し、プレッシャーに絶えることで手一杯で、作品性がなかなか見えてこない場合が多い。　「道成寺」は鐘が全てを象徴している。物着の後・乱拍子・「思へばこの鐘うらめしや」で、シテはじっと鐘を見込む。白拍子は鐘が恨めしいのである。自分と自分の愛する人とを隔てたのが鐘だから、鐘が恨めしいのである。もし鐘が下りなければ山伏ともう一度会っていたかもしれない。だから白拍子は鐘ごと山伏をとり殺し、自らは蛇身となって永遠に迷妄の世界を迷う。白拍子は男を恨んでいるのではない。そこがこの曲の主題であろう。　白拍子はどこまでも男を一途に愛している。しかし愛はひとたび裏返ると深い恨みになる。能の恋慕の曲はすべて愛が深い。私は「道成寺」はあくまでも恋慕の曲だと思う。だから、白拍子の恨みとは哀しみである。そして哀しさとは美しさである。蛇体が成敗されてハッピーエンドというのではなく、愛してはならない山伏を愛してしまった女性の魂の哀しさが美しく描かれるのが「道成寺」であろう。だから、私は様式を踏まえた上で、美しい「道成寺」を描きたい。感想　「嬉しやさらば舞はんとて～失せにける」(乱拍子ヌキ)の部分を講師の先生が舞われましたが、白拍子が鐘へ入る前の緊張感が客席の私にも伝わってきて、息を詰めてしまいました。舞いが終わるとどっと力が抜けました。私だけではなく、私より前の方に座っていた人も、同じような動作をしていました。　　

  2007年07月07日

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• 稽古104回目

  ■謡…「熊野」６回目甘泉殿の春の夜の夢。心を砕く端となり。驪山宮の秋の夜の月終なきにしもあらず。末世一代教主の如来も。生死の掟をば免れ給はず。過ぎにし如月の頃申しゝ如く。何とやらんこの春は。年古り増る朽木桜。今年ばかりの花をだに。待ちもやせじと心弱き。老の鴬逢ふ事も。涙に咽ぶばかりなり。たゞ然るべくはよきやうに申し。しばしの御暇を賜はりて。今一度まみえおはしませ。さなきだに親子は一世の仲なるに。同じ世にだに添ひ給はずは。孝行にも外れ給ふべし。たゞ返す返すも命の内に今一度。見参らせたくこそ候へとよ。老いぬればさらぬ。別のありと云へば。いよいよ見まくほしき君かなと。古事までも思ひ出の涙ながら書き留む。そも此歌と申すは。そも此歌と申すは。在原の業平の。其身は朝に隙なきを。長岡に住み給ふ老母の詠める歌なり。さてこそ業平も。さらぬ別のなくもがな。千代もと祈る子の為とよみし事こそ。哀れなれ詠みし事こそ哀れなれ。・今回の注意点１、符号通りには謡えているけれども面白くない謡になっている。きれいに謡おうと思うあまりに慎重になりすぎると、べたっとした謡いになる。きれいに謡おうとするのはやめて、今年死ぬかもしれないお母さんが遠く離れた娘に何とかもう一度会いたいという気持ちになって、想像力をたくましくして謡う。息を詰めたり、ふわっと謡ったりと工夫してほしい。例えば「春の夜」、しかも「夢」というとどんな感じだろうなと考えながら謡ってほしい。２、5ｵ「甘泉殿の春の夜の夢」は声の出し方が甘い。「かーんーせーんーでーんーのー…」と、一本調子になる嫌いがあるので気をつける。「甘泉殿」の３つの「ん」は同じ謡い方をしないように工夫する。自分で何回も謡ってみて、色々試してみると良い。３、5ｵ「驪山宮の秋の夜の月終なきにしもあらず」の「山」・「な」「あ」の小節を利かすところも全部違った謡い方をするように工夫する。４、5ｵ「過ぎにし如月の頃」などは「気ヲカヘ」て謡う。謡いだしを少し低めに謡う。しかし、たくさんある「気ヲカヘ」で、その都度低く低く謡っていると、最後の「崩ス」が苦しいので、そこら辺は考えて謡う。５、5ｵ「過ぎにし如月の頃申しゝ如く」はせっぱ詰まった感じで謡う。そのためには間をしっかりとって、何も音がしない空白の時間をしっかり作って、それから次の思いを言葉で出していく。６、6ｵ「たゞ返す返すも命の内に今一度」のように、せっぱ詰まった内容の時には、突き詰めたような息で謡わないと何となくのんびり聞こえてくる。どうすればそんな息が出せるのかを説明するのは難しいが、なるべく凝縮したような息を出すようにする。急にはできないので、少しずつ努力をする。・感想今日は私と先生の２人だけでしたので、ゆっくりと教えていただけました。今日謡った「文(ふみ)の段」は熊野(ゆや)がお母さんからの手紙を読み上げるという内容です。録音した自分の謡を聞くと、おそるおそる声を出しているように聞こえました。全部の音をほぼ同じ音量・ほぼ同じ早さで謡っているために、ただ単にゆっくりと謡っているように聞こえました。これでも感情を込めたつもりだったのですが、さっぱり表現に表れていません。　稽古では、はじめの「甘泉殿の春の夜の夢。心を砕く端となり」を何度も繰り返し注意を受けて謡い直しました。実はこういうのは少し嬉しかったりします。自分で聞くと、嫌な感じの謡だと言うことは思っても、具体的にどこをどうすればいいかまではわからないからです。ただし、注意を受けて直すのはおいそれとはいきませんが。　「ま、いろんな経験をしないとね。こういう心情にはなかなかなれないよね。…まあいいでしょ」という先生のお言葉で、今日の謡のお稽古は終わりました。■仕舞…「清経」クセ１回目・感想　「敦盛」キリの仕上げをするかと思って稽古をしていきましたが、「『敦盛』は半分終わったことにしましょう」と言われました。　ということで、今回から「清経」クセです。習い始めて20個目の仕舞です。長いですが、謡の内容に合った仕草をするので覚えやすいそうです。今日は「～肝を消す」まで。全体の4分の1くらい習いました。備考　発表会で素謡（「竹生島」と「熊野」）をしている時の写真を頂きました。

  2007年07月04日

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  発表会

  　今日は能の発表会でした。いつもは９月に１回あるだけですが、今年はそちらも例年通りするそうですが６月にもすることになりました。　写真は今日着た着物です。袴も履きました。■謡１…「竹生島」ワキ　この曲はワキの謡いから始まりますが、第一声を発するのはちょっと勇気がいります。　自分の出番でない時には扇は床に置いておきます。申し合わせではできませんでしたが、今日はできました。■謡２…「熊野」ツレ　ワキはプロの方でした。私が習っている先生とは別のプロの謡い方を聞くことができて、「この文章はこんな風にも謡えるのか」と勉強になりました。レコーダーに録れば良かったと、のん気にも舞台上で思ったりしました。また、この方は私の恩師を彷彿とさせる外見であり、この日が初対面で、謡を聞くのも一緒に謡うのも初めてでしたが、勝手に親近感が湧いたというのは御本人には内緒の話です。　「熊野」の時は私は非常に緊張していまして、謡ってない時も心拍数が上がりました。地謡の部分などは、「今はじっと座っているだけでいいのだ。自分の部屋で座っているのと状態は同じなのだ」と思って気分を落ち着かせました。しかし、おかげで舞台に少し慣れて、少し後の仕舞「巴」の出番では「熊野」の時ほどは緊張せずにすみました。「巴」に備えて、発表会に一緒に出た人にお願いして正座用の座椅子を貸していただきました。■仕舞…「巴」４回目　なぜだか今日は舞台に上がる前に妙に不安で、「型を忘れたらどうしよう」とか、「歩数が合わなかったらどうしよう」とか「長刀が手からすっぽ抜けたらどうしよう」とか舞台袖で色々考えてしまいました。舞台に出たら、稽古での先生からの数々の注意が次々と頭の中に響いているうちに終わってしまいました。実際2分ちょっとしかかからない短い仕舞なのです。溜めが足りないと言われ続けましたが、今日が今までで一番溜めて舞えたと思います。私の頭に響いた最後の注意は、「『ああ、終わった』と思ってせかせかと舞台を去らない！」でした。女武者らしく、精一杯堂々と舞台を去りました。

  2007年06月16日

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• 申し合わせ

  ■謡…「竹生島」・「熊野」あさっての発表会用に、役が当たっている「竹生島」のワキ（臣下）と「熊野」のツレ（侍女）の部分だけを謡いました。・今回の注意点１、自分が出せる最大の声で謡う。■仕舞…「巴」４回目あさっての発表会用です。・今回の注意点１、舞台は稽古場より狭いので、いつもよりもっと溜めて舞う。２、「少し恐るゝ気色なれば」の時は笛座の奥まで行く。３、２回目の「後も遙かに見えざりけり」は早く下がって来すぎ。２、３歩はゆっくりと。そして、最初に居たところに戻ってくる。・感想　今日はあさっての発表会用のリハーサルです。このことを申し合わせといいます。いつもの稽古場ではなく、発表会をする場所へ発表会に出る人が集まりました。　舞台へ出入りする場所を確認したり、謡で自分が座る場所を確認したり、仕舞を実際に舞って空間を把握したりしました。あとはいつもの稽古と同じで、先生からの注意を頂きます。　時間が足りなくなってしまい、予定していた時間を急遽1時間延長しました。

  2007年06月14日

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• 稽古103回目

  ■謡…「竹生島」今週末の発表会用に、役が当たっているワキ（臣下）の部分だけを謡いました。・今回の注意点１、天皇の臣下なので、なるべく堂々と謡う。２、1ｳ「四の宮や～」は緩まずサラリと謡う。３、3ｵ「いかにこれなる舟に」は息を強く謡う。■仕舞…「巴」３回目今週末の発表会用です。・今回の注意点１、全体的にサラリと舞いすぎ。もっと溜めて舞う。「余すな漏らすなと」はすぐに橋掛かりの方を向かず、ゆっくりと向きを変える。「今は引くとも遁るまじ」は覚悟を決めないといけないところなので、しっかりと力を入れて向きを変える。「わざと敵を近くなさんと」は巴がたくらんでいるところなので、ここもゆっくり。「敵は得たりと」は頭上で一呼吸おいでキメる。２度目の「跡も遥に見えざりけり」は彼方を見続ける。溜めては動く、溜めては動くの繰り返し。「ちょっとタイミングが遅れても良い」という感じですると良い。２、「わざと敵を近くなさんと」は、発表会当日は着物なので、右腕の袖を左腕で掛ける。３、「敵は得たりと」の長刀で角を指す時は腰を使ってしっかりキメる。振り上げてすぐに切り下ろさない。４、「四方を払ふ」は右から左足をめがけ、ばっさりと切る。５、「切り立てられて」はしっかりと腰を落として長刀を振るう。６、1度目の「後も遙かに見えざりけり」の時、少しだけ角（すみ）へ行くのが遅い。だから角で溜める時間が少なくなってしまっている。７、帰ってくる時の位置が前過ぎる。最初の位置に戻ってくる。・感想　舞台に上り定位置について扇を下に置くと、先生が背後から長刀を差し入れてくれます。その時、「刃を右に置くのと左に置くのと、どちらが構えやすいですか」と聞かれました。…どっちでも良いんですね！決まりがあるのかと思っていました。私は刃が右側、自分から遠い位置にある方が持ちやすいです。　稽古とは関係ありませんが、私が住む地域は今日が梅雨入りです。でも、今日は雨が降りませんでした。天気予報では夕方から雨らしかったですが。

  2007年06月13日

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• 稽古102回目

  ■謡…「熊野」５回目今週末の発表会用に、役が当たっているツレの朝顔（侍女）の部分だけを謡いました。シテの人と合わせました。ワキは先生がなさいました。「そんな感じで良い」と言われました。■仕舞…「巴」２回目今週末の発表会用です。・今回の注意点１、全体的に早すぎ。謡いっぱい使うように舞う。例えば、「あれは巴か女武者」はさらさらっと行き過ぎ。「余すな洩らすなと」「わざと敵を近くなさんと」は動かさない足にしっかりと体重を掛けて、ゆっくりと橋掛かりの方を向く。「敵は得たりと」はしっかりと左足に体重を掛ける。「長刀柄長く」はあっという間に長刀を上げないで、しっかりと長刀を構える。２、「わざと敵を近くなさんと」の時がいつも、右足の直線上に長刀を立てていない。３、足拍子はあまり「ここかな？」と思わないで踏む。４、「敵は得たりと」や「おつ取り延べて」の時に切っ先がぶれないようにする。５、「切つて懸れば」で長刀を立てる時は右足で止まる。６、「四方を払ふ」の時、長刀を立て気味にする。寝かせていると、回った時の円の面積が広くなり、危ない。左手は必ず腰に付ける。７、「切り立てられて」で角へ行く時は、行く前に長刀を構えてから進む。止まった時にはしっかりと右足に体重を掛ける。足を止めてから、長刀をスライドさせる。８、２度目の「後も遙かに見ざりけり」は目付柱の向こうを遙かに見ながら下がる。右腕だけではなく、全身で長刀を取りに行く。９、最後に座る前は、右足を引いた格好で、型を決めてから座る。後ろ向きに歩いたそのままのテンポで座らない。・感想　仕舞「巴」を家で稽古する時は、庭で長刀の代わりにほうきを持って舞います。軽いので非常に舞いにくいですが、ないよりはましです。稽古場では先生の長刀をお借りすると、重みがあって格段と舞いやすいです。先生の方が私より背が低いので、私に合わせるなら、本当は長刀はもう少し長い方が良いらしいです。　長刀を使う仕舞の場合、長刀は地謡が持って舞台へ出ます。舞い手は扇を両手で持って定位置につき、下ニ居。そして扇を床に置くと同時に地謡が扇の左側に長刀を差し入れてくれます。長刀を右腕で持ち、長刀の切っ先が床につくかつかないかくらいのところで構え、謡い出します。舞い終えたら、右手で長刀を床へ置き、同時に地謡が扇を差し入れてくれるのでそれを右手で取り、両手で持って舞台から出て行きます。

  2007年06月11日

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• 稽古101回目

  ■謡…「熊野」４回目来週の発表会用に、役が当たっているツレの朝顔（侍女）の部分だけを見ていただきました。■仕舞…「巴」１回目これも来週の発表会用です。以前習ったことがあるのですが、少し忘れていました。・今回の注意点１、「余すな洩らすなと」の時、右足、左足、左肩、右腕は一直線上にあるようにする。２、足拍子がちゃんと踏めるようにする。３、「四方を払ふ」の時、左手は必ず腰に付ける。・感想　今日はあまり時間がありませんでした。

  2007年06月06日

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• 

  音程の上げ方

  例えば、「羽衣」の「迦陵頻伽の馴れ馴れし。声今更に僅かなる」の中の「声」の謡い方は、「こぉえ」の「ぉ」で音階を上げる場合と、「え」で音階を上げる場合とがあります。どちらで謡うかは地謡のリーダーである地頭(じがしら)が決め、その他の地謡の人は地頭の謡い方に従います。大体の謡い方は申し合わせ(リハーサルのこと)で頭に入れてきますが、本番の雰囲気によって申し合わせと異なった謡い方をすることもあるため、両方の謡い方ができる心づもりをしてその場に臨むらしいです。←「観世流謡曲名曲撰（三）～土蜘蛛｜橋辨慶｜竹生島」

  2007年05月31日

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• 稽古100回目

  ■謡…「熊野」３回目甘泉殿の春の夜の夢。心を砕く端となり。驪山宮の秋の夜の月終なきにしもあらず。末世一代教主の如来も。生死の掟をば免れ給はず。過ぎにし如月の頃申しゝ如く。何とやらんこの春は。年古り増る朽木桜。今年ばかりの花をだに。待ちもやせじと心弱き。老の鴬逢ふ事も。涙に咽ぶばかりなり。たゞ然るべくはよきやうに申し。しばしの御暇を賜はりて。今一度まみえおはしませ。さなきだに親子は一世の仲なるに。同じ世にだに添ひ給はずは。孝行にも外れ給ふべし。たゞ返す返すも命の内に今一度。見参らせたくこそ候へとよ。老いぬればさらぬ。別のありと云へば。いよいよ見まくほしき君かなと。古事までも思ひ出の涙ながら書き留む。そも此歌と申すは。そも此歌と申すは。在原の業平の。其身は朝に隙なきを。長岡に住み給ふ老母の詠める歌なり。さてこそ業平も。さらぬ別のなくもがな。千代もと祈る子の為とよみし事こそ。哀れなれ詠みし事こそ哀れなれ。・今回の注意点１、大概、手紙の冒頭は冷静に書き始めるものなので、「終なきにしもあらず」まではわりと穏やかに謡い始めるが、続いて「生死の掟をば免れ給はず」あたりになると生き死にの問題になってくる。そして「過ぎにし如月の頃」と、以前にも手紙を送ったように、生きているうちに娘に会いたいと、核心に入って行く。このように、いくつもの段落に別れるが、段落の分け目は傍注に「気ヲカヘ」と書いてあるところ。そこでは少し間をとり、次に言う内容を頭に浮かべて、少し低めに謡い出すと良い。２、5ｵ「心を砕く端となり」の「り」などでウキが強い。もっとやわらかく音を上げ下げする。３、まっすぐのゴマ点がついているところは、言葉の意味を考えて謡わなければいけないところ。どうにでも謡えるところなので、どうやったら聞き手に思いを伝えられるかということを考えて謡う。４、5ｳ「たゞ然るべくはよきやうに申し」はのんびり謡わない。だんだんお母さんがせっぱ詰まって頼んでいるところだから。■仕舞…「敦盛」キリ５回目最後まで教えていただきました。・感想　謡の稽古で今日したのは「文(ふみ)の段」という箇所です。侍女の朝顔が持ってきた熊野の母の文を熊野が読み上げるという内容です。名前に「段」がつくのは、謡い所や舞い所で、いいところなんだそうです。「ちょっと骨があるんだけど、やってみましょか」という先生の言葉で稽古が始まりました。　「熊野」はシテの位を持つのが難しいです。落ち着いた声がなかなか出ません。ゆっくり詠いすぎると間延びした感じになります。難しいです。　タイトルにも書きましたが、今日は100回目のお稽古です。発表会・新年会は数えてません。お稽古が100回です。よく続けてこられたものです。

  2007年05月09日

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• 稽古99回目

  ■謡…「熊野」２回目草木は雨露の恵み。養ひ得ては花の父母たり。況んや人間に於いてをや。あら御心もとなや何とか御入り候ふらん。池田の宿より朝顔が参りて候。なに朝顔と申すか。あら珍しや。さて御労りは何と御入りあるぞ。以ての外に御入り候。これに御文の候御覧候へ。あら嬉しやまづまづ御文を見うずるにて候。あら笑止や。この御文のやうも頼み少う見えて候。さやうに御入り候。この上は朝顔をも連れて参り。又此文をも御目にかけて。御暇を申さうずるにてあるぞ此方へ来り候へ。誰か渡り候。誰にて御座候ぞ。や。熊野の御参りにて候。わらはが参りたる由御申し候へ。心得申し候。いかに申し上げ候。熊野の御参りにて候。此方へ来れと申し候へ。畏つて候。此方へ御参り候へ。いかに申し上げ候。老母の労り以ての外に候ふとて。この度は朝顔に文を上せて候。便なう候へどもそと見参に入れ候ふべし。何と故郷よりの文と候ふや。見るまでもなしそれにて高らかに読み候へ。・今回の注意点１、このシテは「羽衣」や「吉野天人」より位をつけて謡う。２、ツレ「池田の宿より…」はシテにつられずにさらっと謡う。・感想　この部分は初めて聞いて初めて謡いました。今日は時間がなかったので注意は少ないです。　レコーダーに録った自分の声を聞くと、シテの部分が軽く、しかも間延びしていて、とても気持ちが悪かったです。■仕舞…「敦盛」キリ４回目今回の注意点１、「せん方波に駒を控え。呆れ果てたる有様なり。かゝりける処に」は「。」でしっかり息をとって謡う。「呆れ果てたる有様なり。」の時は、気持ちを前へ持っていく。シテは若武者だから強さが欲しい。２、全体的に重心を下にとって歩く。型をなぞるだけではいけない。３、「後ろより」の開きの右腕を引きすぎている。４、「直実」あたりの行きがかりも右腕を引きすぎている。５、「遁さじと」は橋掛かりの方向にいる敵をしっかりと見る。６、「二打ち三打ち」の切り付けるのは、二回とも一度右肩を沈めてから。７、「落ち重なって」は、扇を刀のつもりで持っているので、体に対して横向きに持つ。８、「落ち重なって」の下居は、まず目付柱の方向に。それから体を浮かせて正面に向く。・感想　前回と同じところをしました。まだまだできてないところがいっぱいです。

  2007年04月25日

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• 稽古98回目

  ■謡…「熊野」１回目これは平の宗盛なり。さても遠江の国池田の宿の長をば熊野と申し候。久しく都に留め置きて候ふが。老母の労りとて度々暇を乞ひ候へども。この春ばかりの花見の友と思ひ留め置きて候。いかに誰かある。御前に候。熊野来りてあらば此方へ申し候へ。畏つて候。夢の間惜しき春なれや。夢の間惜しき春なれや咲く頃花を尋ねん。これは遠江の国池田の宿。長者の御内に仕へ申す。朝顔と申す女にて候。さても熊野久しく都に御入り候ふが。この程老母の御労りとて。度々人を御上せ候へども。更に御下りもなく候ふ程に。この度は朝顔が御迎へに上り候。この程の。旅の衣の日も添ひて。旅の衣の日も添ひて。幾夕暮の宿ならん。夢も数添ふ仮枕。明かし暮らして程もなく。都に早く着きにけり都に早く着きにけり。急ぎ候ふ程に。これははや都に着きて候。これなる御内が熊野の御入り候ふ所にてありげに候。まづまづ案内を申さばやと思ひ候。いかに案内申し候。池田の宿より朝顔が参りて候。それそれ御申し候へ。・今回の注意点１、ワキは平宗盛なので、重々しく謡う。ツレは熊野のお母さんの方の侍女。２、2ｵ「旅の衣の」の「旅」は縦線でつながっているが、これは間を詰めて謡うという意味。だから「たぁびーぃ」の「ぁ」で音を浮かせるという謡い方はせず、「たびーぃ」の「び」で浮かせる。３、2ｳ「暮らして程もなく」の「な」に色をつける。その他の部分にもできるだけ色をつけて謡う。・感想　前回レコーダーにお手本を録らせていただいていませんでしたので、今日ははじめに先生が謡い、続いて私が一人で謡いました。「熊野」の文句を読むのも今日が初めてでした。節を間違うことは殆どありませんでしたが、いつも以上に平坦な謡い方なのが自分でもわかりました。　「熊野」の謡本をまだ持ってないので、先生に貸していただきました。次回、先生が謡本を買ってきて下さるそうです。それまで、先生の本を家に持って帰って自分で稽古をしてきます。■仕舞…「敦盛」キリ３回目今回の注意点１、「せん方波に駒を控え。呆れ果てたる有様なり。かゝりける処に」は男らしく謡う。２、「呆れ果てたる有様なり」の勇健は腕を高く上げ、腕の下から遠くの御座船を眺める。本当は「おーい」と叫びたいところだがそれができないむなしさを込めて謡う。３、「遁さじと」は型をなぞるのではなく、謡の意味に添うように、しっかりとする。４、「敦盛も馬引き返し」はすぐに重心を右足に移し、両腕を大きく上から回して手綱を持つようにする。この時、親指が上を向くように構え、脇を締め気味にする。５、「波の打ち物抜いて」は、すぐにワキの方を向き、左手で盾を持つような気分でする。６、「二打三打は」は、腕を一度体ごと沈めてから打つ。・感想　「法事の念仏して弔はるれば」まで習いました。型がいっぱいあって難しいです。

  2007年04月11日

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  仕舞の地謡

  仕舞のは地謡が舞い手に合わせます。地謡は舞い手の足の運び方に注意しなければなりません。そして、その人がどのように舞いたいのか、どういうつもりで舞っているのかを考えて謡います。だから、舞い手も謡い手も素人がすると、お互いに「あなたが上手くやらないから」と、うまくいかないことが起きるそうです。←「観世流謡曲名曲撰（二）～小袖曽我／經正」

  2007年04月06日

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• 稽古97回目

  あら笑止や風が変つて候。あの武庫山颪弓絃羽が嶽より吹き下す嵐に。この御舟の陸地に着くべき様もなし。皆々心中に御祈念候へ。いかに武蔵殿。この御舟には妖怪が憑いて候。あゝ暫く。さやうの事をば船中にては申さぬ事にて候。あら不思議や海上を見れば。西国にて亡びし平家の一門。各々浮み出でたるぞや。かゝる時節を窺ひて。恨みをなすも理なり。いかに弁慶。御前に候。今更驚くべからず。たとひ悪霊恨みをなすとも。そも何事のあるべきぞ。悪逆無道のその積り。神明仏陀の冥感に背き。天命に沈みし平氏の一類。主上を始め奉り一門の月卿雲霞の如く。波に浮かみて見えたるぞや。そもそもこれは。桓武天皇九代の後胤。平の知盛。幽霊なり。あら珍らしやいかに義経。思ひもよらぬ浦波の。声をしるべに出舟の。声をしるべに出舟の。知盛が沈みしその有様に。また義経をも。海に沈めんと。夕波に浮かめる長刀取り直し。巴波の紋辺を払ひ。潮を蹴立て悪風を吹きかけ。眼も眩み。心も乱れて。前後を忘ずるばかりなり。その時義経少しも騒がず。その時義経少しも騒がず。打物抜き持ち。現の人に。向ふが如く。言葉を交わし。戦ひ給へば。弁慶押し隔て打物業にて。叶ふまじと。数珠さらさらと押し揉んで。東方降三世。南方軍荼利夜叉。西方大威徳。北方金剛夜叉明王。中央大聖。不動明王の索にかけて。祈り祈られ悪霊次第に遠ざかれば。弁慶舟子に力を合せ。お船を漕ぎ退け汀に寄すればなほ怨霊は。慕ひ来るを。追つ払ひ祈り退けまた引く汐に。ゆられ流れ。また引く汐に。ゆられ流れて。跡白波とぞ。なりにける。■謡…「船弁慶」８回目・今回の注意点１、11ｳ「あら笑止や風が変つて候」は、のんびり謡わない。弁慶の物に動じないドシッとした感じ、ワキツレのあやかしに慌てる感じ、義経の源氏の大将としてのキリッとした感じを際だたせた謡いをして欲しい。難しいけれど。そのためには息をしっかりと吸い、体に溜めて、吐き出すことが必要。２、12ｳ「御前に候」はもっとしっかりと謡う。３、12ｳ「悪逆無道のその積り」の前に息を吸う時間が短すぎて、キリッとした感じが出ていない。４、13ｵ「主上を始め奉り」は「サラリメニ」と書いているが、あまりサラリと謡ってしまうと上滑りするので、しっかりと修羅ノリのように謡う。「拍子ヲ外ス」ところはのんびりと外すのではなく、次に早笛が来るということを意識して外す。５、13ｵ「そもそもこれは」からは後シテの知盛の幽霊が早笛という出囃子にのって出てくるところなので、もっと勢いがないとだめ。６、14ｵ「夜叉明王」のリズムがおかしい。「叉」の引きには「大」がついているのでもう少し引く(伸ばす)。７、15ｵ「跡白波とぞ。なりにける」は一曲の終演部分ということを意識して、もっと息をとって謡う。・感想　最後の方はずっと強い声で謡わなければならないため、いつも以上に集中力が必要でした。しかし、気合いを入れて謡ったはずですが、レコーダーで聞くとまだまだ気合いが足りていません。こういう剛吟の謡いは好きです。　「そもそもこれは。桓武天皇九代の後胤。」から「早笛(はやふえ)」という囃子が入ります。笛の種類というのではなく、笛も含む囃子全体の種類の一つです。妖怪など、人間でないものが現れる時に用います。私は先生に言われるまで、「早苗(さなえ)」だと思っていました。字の感じが似ていたので。今日、「早笛」という新出単語を脳にたたき込みました。　この部分は先生が改めて手本を謡って下さいました。知盛の幽霊らしくて、思わず「すみませんでした」と謝ってしまうような迫力がありました。私も声だけで目の前の人を圧倒するような謡い方をしたいです。　「船弁慶」の知盛は日本画家の前田青邨 (まえだせいそん) が「知盛幻生」という題の絵にしています。■仕舞…「敦盛」キリ２回目今回の注意点１、一足が大きすぎる。２、開きの時などは足を後ろに引きすぎない。・感想　「敦盛」キリの1回目の稽古は2006年10月04日です。１回だけしたあと、事情があり、「巴」と「高砂」キリを先に習いました。今回からは前回の続きです。とは言うものの、最初のシテ謡いだけしか覚えておらず、所作は頭から抜けていました。型付けを見てもわからなかったです。それでも、先生と舞っていると少し思い出しました。今日は最初から「二打」まで習いました。

  2007年03月28日

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  謡いは耳から

  謡いを習う時は謡本(うたいぼん)を見ています。謡本には1ページにつき7行の、わりと大きな字でセリフが書かれていて、セリフの横には節を示す符号が書かれています。習い始めの時は、謡本を読めません。色々書いてある符号のどれを見るべきなのかわからないからです。「ア」は気にしなくていいと言われるし、「イ」も習い始めは気にしなくていいと言われるし。それでいて「ウ」は音階を浮かせないといけないし。「ア」・「イ」・「ウ」があっても「エ」はないし。「オ」は「ヲ」と混同してしまうし、振り仮名の「オ」との違いがわかりにくいし。「ヲ」と書いていたら、音階を下げるのは一字だけだけれど、「下」と書いていたら、ずっと音階を下げ続けなければならないし。「上」は自分が楽に発声できる音階ですよと言われても、「中」や「下」はどのくらい下げればいいのかわからないし、そもそも、先生の謡って下さる高さで謡わなければ、何が合っているのかもわからないし。拍不合(ひょうしあわず)の時には、文末のゴマ点がまっすぐだと音を伸ばすけれども、 拍合(ひょうしあう)の時には、文末のゴマ点がまっすぐだと音を伸ばしてはいけないし。 拍不合の時に、文末のゴマ点が斜めになっていると節を付けて謡わないといけないけれど、文中でゴマ点が斜めになっているのは気にしなくていいと言われるし。第一、ゴマ点がまっすぐなのか斜めなのかも、パッと見ると間違いそうだし。拍合と拍不合のどこら辺がどう違うのかは習ったばかりではいまいちピンと来ないし。 せめて振り仮名と符号の色を変えてくれたらと思っても、謡本は白い紙に黒い文字で書いてあるものだし。とにかく、わからないことがいっぱいで、大変です。先生はゆっくりと、丁寧に、これ以上はないほど噛み砕いて教えて下さるし、何度も何度も同じことを繰り返して言って下さるけれども、習い始めの私は、ページを繰れば繰るほどわからないことが噴出してました。（じゃあ繰らなければいいのですが、本を渡されると、その続きが気になるものでしょう。）だから、習い始めの頃は特に、目よりも耳で稽古をしてました。子供が言葉を覚える時に、例えば「これは亀。か・め。」と、ゆっくりと話してくれる音を聞くように、先生の謡いをレコーダーに録り、何度も何度も巻き戻しながら覚えました。謡本を見ると、ナンジャコリャと思った箇所も、聞くだけだと、謡いは歌に聞こえるので、歌謡曲を覚えるような感じで覚えられました。 音の上がり下がりだけで言えば、今のはやりの歌の方がずっと複雑です。←「観世流謡曲名曲撰（一）～鶴亀／吉野天人／紅葉狩」

  2007年03月10日

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• 稽古96回目

  ■謡…「船弁慶」７回目静の心中察し申して候。やがてお舟を出さうずるにて候。いかに申し候。何事にて候ふぞ。君よりの御諚には、今日は波風荒く候ふ程に。御逗留と仰せ出されて候。何と御逗留と候ふや。さん候。これは推量申すに、静に名残を御惜あつて、御逗留と存じ候。まづ御思案あつて御覧候へ。今この御身にてかやうの事は、御運も尽きたると存じ候。その上一年渡辺福島を出でし時は、以つての外の大風なりしに、君御舟を出し、平家を亡ぼし給ひし事、今以つて同じ事ぞかし。急ぎお舟を出すべし。げにげにこれは理なり。何処も敵と夕波の。立ち騒ぎつゝ舟子ども。えいやえいやと夕汐に、つれて舟をぞ、出しける。・今回の注意点１、10ｳ～ シテが中入で舞台からいなくなったので、舞台上にはワキ・ワキツレ・子方しかいない。だからワキは力強く謡う。ワキツレはもう少し“ピリッと”謡う。２、10ｳ「静の心中察し申して候」は「察し申して候」も気を抜かずに謡う。３、10ｳ「さん候」は「さんぞうろう」ではなく、「さんぞうろ」。４、11ｵ「以つての外の大風なりしに」はもっと大きく謡う。５、11ｳ「急ぎお舟を出すべし。」がワキツレの謡のように聞こえるので、ワキが舟子達に命令している感じをもっと表現する。・感想　自分の謡いを聞いてみると、以前よりは気色悪さがなくなってきました。謡をするということに喉が慣れて、声が出るようになったせいでしょう。しかし、演技力がまだまだ欠けているので、聞いていて何にもおもしろくありません。今日は弁慶の言葉の一文一文を、ここはこういう心情だからこう謡おうと、いつもよりも計画を立てて演技をしたつもりでした。しかし先生には「弁慶は弁慶らしく謡って下さい」と注意をされました。真っ当な注意でした。　今回は「船弁慶」の最後までレコーダーに先生のお手本を入れていただいたので、来週までの宿題がたくさんできました。幽霊が出てきて戦う場面なので、毎日少しずつ謡って、迫力を出さねばなりません。■仕舞…「高砂」キリ６回目今回の注意点１、歩幅が大きすぎる。歩幅が大きいと微調整がききにくいので、歩幅を小さく、“ツッツッと”詰めて歩く。２、「青海波とは」の開の時、右足が内に入りすぎているので弱く見える。斜め右後ろへまっすぐに引くだけで良い。３、「それぞ還城楽の舞」は、もう一歩舞台の奥まで進む。４、「小忌衣」は舞台中央でする。５、「さて万歳の」や、「悪魔を払ひ」や、「をさむる手には寿福を抱き」の時の体の向きは、目付柱より左でないといけない。お客さんは正面の方が脇よりも多いから。６、最後は真ん中で終わるようにする。能楽堂では背後に鏡板があったり、囃子方が並んでいたりするので、前後にずれるのは目立ちにくいが、左右にずれるととても目立つ。ずれる理由は、距離に対して歩幅と歩数が合ってないから。ずれないようにするためには、かけられる足が真ん中にある時にかけると良い。つまり、かける足よりもかけられる足がどこにあるのかという方が大事。・感想　一応今回で終わりました。以前から習ってみたかったので楽しかったですが、難しかったです。特に「悪魔を払い」の所作は、人がしているのを見ていると格好良くて憧れましたが、実際舞ってみると、型通りに体を動かすのに必死で、何の感想もありません。今の私の能力ではこれが限界だとして、他のものを色々舞った後で、また改めてもう一度舞ってみたいです。　私の稽古の前に、他の人が仕舞「蝉丸」を習っている時、「ひら212さんも地謡を謡ってね」と先生に型付けを渡されました。これは私も以前習ったことがあるはずなのに、いざ謡うとあまり覚えてないことに我ながら驚きました。型付けに首っ引きで、舞っている人を殆ど見られませんでした。耳で聞くだけなのと、実際に謡うのとでは記憶の確かさがまるで違います。ショックです。

  2007年03月07日

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• 稽古95回目

  たゞ頼め。しめぢが原の、さしも草。我世の中に、あらん限りは。かく尊詠の、偽なくは。かく尊詠の、偽なくは、やがて御代に出船の。船子ども、はや纜をとくとくと、はや纜をとくとくと、勤め申せば判官も、旅の宿を出で給へば。静は泣く泣く。烏帽子直垂ぬぎ捨てゝ、涙に咽ぶ御別れ。見る目も哀れなりけり、見る目も哀れなりけり。■謡…「船弁慶」６回目・今回の注意点１、9ｳ「かく尊詠の、偽なくは」はここからノル。もう少し閑かにのって謡う。２回目の「かく尊詠の、偽なくは」はさらっと謡う。２、9ｳ「かく尊詠の、偽なくは」の「偽なくは」は、謡本には何も書いてないが、少し抑え気味に謡うのが通例になっている。３、10ｵ「船子ども」は「子」で音階を上げ、「ど」でもどすのが通例になっている。４、10ｵ「船子どもはや纜をとくとくと」は、静は何もすることができず、この言葉を本当は言いたくはないが、言わざるを得ない状況になっている。そうした静の心情を思いながら謡う。５、10ｵ「静は泣く泣く」の前は少し間をとる。この言葉の前の「勤め申せば判官も、旅の宿を出で給へば」で義経が立って行いき、それを見送ってからの静の言葉だという劇的なことを思い描きながら謡う。・感想　9ｳ「やがて御代に出船の」のノリ方を、自主稽古ではいまいち掴めなかったのですが、先生の謡をじかに２回聞くとわかりました。レコーダーに録ったのを数十回続けて聞いてもわからなかったのに突如わかるというのは少し不思議です。教外別伝ではないですが、教えをうつし取ったものに拠るのではなく、面と向かることによってわかることもあります。■仕舞…「高砂」キリ５回目今回の注意点１、「げにさまざまの」をしっかりと謡う。２、シテが謡う時は慌てずゆっくりと謡う。慌てて謡って舞がおろそかになるのはいけない。３、「青海波とは」の胸指(むなざし)が曖昧になっている。扇でしっかりと胸を擦り上げ、しっかりと前に出す。４、全部のスピードが同じなので、もっとためたり･運んだりしないといけない。それが一番顕著なのは、「それぞ還城楽の舞」の部分で、「それぞ」はゆっくり・「還城」はのる５、「楽の舞」はざざざっと進んで奥まで行く。６、「小忌衣」は腕だけ動かすのではなく、むしろ左足を動かすからそれに伴って左腕も動くくらいの認識である。そして左手は、能の場合は余った衣を握っているから、人指し指から小指までの４本の指は常に身体の中心を向いてなければならない。そうすると、体に力がこもっているように見える。７、「さす腕には」は、右足はまっすぐ出さず、すぐに右へ出す。８、「をさむる手には」の足拍子が「とびのり」しているので、そうならないようにツツツッと動く。９、「寿福を抱き」の腕が低いので、有難いものを捧げ持っている感じが出ていない。その前の「をさむる手には」は悪魔を払った後の腕を下げずにそのまま前に平行移動させる。・感想　最後、地謡が舞より早く終わってしまいました。１回見ていただいてそのことも含んだ色々な注意を受け、少し自分で稽古をして、その後もう１回見ていただきました。はじめを力強く謡うことに気をとられ、「げにさまざまの舞姫の」と謡うと、次の謡いを忘れました。先生は「適当な謡いをしていると全部出てくるけど、舞台に立って力を入れて謡うとそういうことが起きるんです」と仰いました。だから、日頃からしておかなければならないと。それで、改めて舞ってみると、今度は地謡も舞も同時に終わりました。なぜ謡いに間に合ったのか、その理由が自分ではわかりませんでしたが、先生が仰るには「勢い」だそうです。　速く動こうとするとバタバタしているように見えそうだし、つい大股になりそうになりそうになりますがそれはいけないし、きれいに速く動くのは見ためよりずっと難しく感じます。「能楽師は舞台でたくさん動いているようでもバタバタして見えないのがすごいですね」と、先日能を見た時に思ったことを先生に申し上げると、「腰が座ってるから」との答えを頂きました。動きが速いものほど重心を下にとっているそうです。「まあ、どんどんやっていきましょう」と仰いましたが、私でもいつかは速くきれいな動き方を体得できるでしょうか。

  2007年02月21日

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• 「羽衣」と「二九十八」を見た

  能楽堂で能「羽衣 彩色(さいしき)」を見ました。・シテの美しい姿を見るために正面に座りたかったですが、お客さんがたくさんいたので脇正面から見ました。少し残念に思いましたが、この席からだと囃子方や後見の仕草がよくわかったし、地謡の表情まではっきりわかり、楽しめました。後見がシテの衣装を直すのもよく見えました。・座った場所が場所だけに、囃子方の声が大きく感じましたが、シテのセリフと重なっても邪魔にならないのが不思議でした。・小鼓の人が私が注目している人でした。・小鼓・大鼓・太鼓の３人の声がそろった後、静かになった時の間(ま)が不思議ときれいだと思いました。・今回は何となくワキに注目してしまいました。最後、天女が幕の中へ入った後のワキの仕草を見て、「天上へ帰ったんだな」とよくわかりました。・白龍は老人のイメージでしたが、今回のワキは若く、イメージと違いました。しかし考えてみれば、羽衣伝説ではよく天女は羽衣を拾った人のお嫁さんになるので、白龍が老人では都合が悪いわけです。・シテが衣を返してもらった後で、舞いながら橋掛かりの方まで行くのは羽衣を取り返して飛翔能力の試運転をしているような感じがしました。・「これなる松に美しき衣懸かれり」で橋掛かりに衣が掛かっているところや、「家の宝となさばやと存じ候」と言って本当に衣をとって脇柱の方に行くところなど、当然といえば当然ですが、謡本通りの仕草をしているのを確認できました。・1ｵ「万里の好山に」～2ｵ「釣人多き小舟かな」と、クリ・サシ・クセ(7ｵ「それ久方の」～9ｵ「白雲の袖ぞ妙なる)は小書付のため、ありませんでした。私はこの曲のクセの謡いが好きなので、聞けないのは残念です。狂言「二九十八(にくじゅうはち)」も見ました。・シテが何を言っているのかはっきりわかっておもしろかったです。今日は「羽衣」より「二九十八」が印象に残りました。・初めのうちしばらくシテの語りだけで場をもたせなければならないのですが、飽きず、次は何を言うんだろうと期待してしまいました。・狂言を演じる人は笑わなければいけません。そして観客を笑わせなければいけません。難しいことだと思います。演じる人が自分が演じていることを本当におもしろいと思ってないと、観客は絶対に笑えないでしょう。私は脇正面から正面に座っている人の顔を観察していました。皆さん、身を乗り出して笑っていました。私も少し笑いました。楽しかったです。

  2007年02月18日

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  能「海士」を語る

  　能「海士（あま）」についての講義がありました。　配付資料は新潮日本古典集成『謡曲集　上』の「海士」のページのコピー。しかし講師の先生はそれを持たず、そらでスラスラと謡の文句をお話になりました。曲の理解が深いのは言うまでもなく、能を演じることにも、人前で話すことにも慣れてないとできないことです。　今回も舞っていただけたのですが、舞台を走り回っているはずなのに全くバタバタした印象がない足の使い方に感嘆しました。胸を張って背筋を伸ばして立っている姿勢を心底美しいと思いました。　以下、その時勉強した内容を書き記します。〈内容について〉・　前場は『志度寺縁起』からとり、龍女が出てきて舞を舞う後場を世阿弥が付けた。・　舞う人が１人と、張り扇(右手は大鼓、左手は小鼓の拍子を打つ)を持った囃子役の人が１人の計２人で、ワキ、ワキツレによる次第「出づるぞ名残三日月の。出づるぞ名残三日月の。都の西に急がん。」と、シテによる一声「海士の刈る藻もに住む虫にあらねども。われから濡らす袂かな。」を実演して下さった。次第(しだい)という囃子は大体生きた人間の登場場面に、一声(いっせい)という囃子は幽霊や化身、つまり人間以外の存在の登場場面に用いられる。この2つはノリが違う。次第は運びはありながらのってないが、一声はのって運ぶ。・　前シテの海士について、「賤しき海士」という言い方が何度も出る。子方もシテ自身も言う。藤原房前や不比等といった有名な人ではなく、賤しき海士が主人公というのが能のおもしろさ。シテは母であり、人の親であるということに終始して一曲が書かれているのが素晴らしい。・　海士の玉取りの場面を「玉の段」という。大体、能の動きは抽象的なものだが、玉の段は非常に具体的な仕草をするのが特殊である。一つ一つの所作がはっきりと意味を持っている。どんな意味を持っているのかを、仕舞にストップをかけながら説明して下さった。　扇を剣に見立てて「ひとつの利剣を抜き持って」と舞う。「其隙に。宝珠を盗みとつて。逃げんとすれば。守護神おつかく」では、シテは少し下を向き、追っ掛けてくる守護神達が海の底からやってくることを視線で示す。僅かな視線の向きで平面の舞台に立体感を持たせる。・　能の言葉は聞いただけでは聞き取りにくく、わかりにくい。昔の人もそうだったので、間狂言によって解説の時間を持った。間狂言は中世の口語。・　後シテは前シテと同様に房前の母だが、海士の姿ではなく龍女(りゅうにょ)の姿で登場する。仏教においては女性は成仏できない。男に生まれ変わるか(変成男子)、龍女になるか(龍女成仏)、どちらかにしか救いがなかった。後場では、海士が法華経の功徳で龍女になったことを報謝するために現れる。・　後シテの舞う早舞(はやまい)は非常にテンポの良い舞。・　この曲の最後は龍女成仏と志度寺の縁起と藤原氏の繁栄を表す。「さてこそ讃州志度寺と号し。毎年八講。朝暮の勤行。仏法繁昌の霊地となるもこの孝養と承る。」というところは、皆が志度寺と法華経を礼賛し、法事をなした功徳を褒め称えるという内容。まるで人々の声が聞こえてくるような感じで終える。・　「我が子ゆゑに捨てん命。露ほども惜しからじ」という言葉に象徴されるように「海士」は母性愛があふれ出すような曲。戦が絶えない時代、病気がはやれば次々に家族が死んでいく時代、死が身近な時代だったからこそ祈りが生まれた。能は人の心は何なのか、愛するとは何なのかという本質を描いている。日本人が何を大切にして生きてきたのかということが能を見るとわかる。〈装束について〉・　前シテは深井(ふかい)か曲見(しゃくみ)という少し年たけた女性の面をかける。・　前シテの着付けには白い生地に金箔を型押しした摺箔(すりはく)を着て、その上から縫箔(ぬいはく)を腰巻(腰巻)にする。腰巻とは着付けをして両袖を脱いだ形。　縫箔は繻子(しゅす)か綸子(りんず)。この時持ってこられていたのは繻子だった。それに金箔を型押しし、刺繍を施す。紅(あか)が入ってない着物なので、無紅(いろなし)、無紅縫箔という。これに対し、紅が入っているものを紅入(いろいり)という。能では紅は若い人に用いる。少し年たけた女性には無紅を用いる。紅入は10代までであり、20歳になると無紅になる。　その上から水衣(みずごろも)という薄い衣を掛けて海士の感じを出す。・　後シテは泥眼(でいがん)という面をかける。白目の部分に金泥を塗ることによって、光が当たるとぎらっと妖しく輝く。これは霊(りょう)の面によく用いる。暗闇でろうそくの光で見ると、怖い。「葵上」のシテ（六条御息所）という嫉妬に狂った女の役にも用いる。それなのに、なぜ「海士」の龍女の役に使うのかというと、龍女という面もあるのだが、現存している物があまりないからである。だから、龍女の面に近い表現ができる泥眼を用いる。京都の野村美術館には素晴らしい龍女の面を所蔵している。「海士」のために龍女の面が作られたのか、それとも他の曲に用いられていたのかはわからない。・　後シテは黒垂(くろたれ)という髪の毛を付け、龍戴（りゅうたい）を乗せる。先生方は「海士龍（あまりゅう）」と呼んでいるらしい。これは雌の龍だが、雄の龍よりも小ぶりで、何となく優しい顔つきである。「春日龍神」の小書にも海士龍を使う。・　後シテはまず摺箔を着る。ただの摺箔ではなく鱗箔(うろこはく・りんぱく)。三角つなぎの金色模様で、龍女の鱗を表している。鱗箔は「葵上」「道成寺」にも用いられる。日本では女性の嫉妬が激しくなると蛇に変わる。それを表現するために鱗箔を用いる。　そして、大口(おおくち)という大きな袴を用いる。緋大口(ひのおおくち)を履くことが多いが、最近は浅葱や萌葱などの大口も用いる。　その上から舞衣(まいぎぬ)を着る。身幅が二幅、袖が二幅ずつで大きい。これを毎回太い針で縫って、舞い手の体に合わせて糸で止める。この時持ってきた舞衣の生地は絽だった。夏だから絽というのではなく、舞衣や長絹(ちょうけん)は絽か紗でつくると決まっている。絽とは、縦糸は全部あるが、横糸を所々抜いてある布のこと。透ける素材なので、着付けに金箔を用いた着物を着、普段は隠れているのがふとした時に少し見えるのが美しい。　この日の会場は百貨店の中にありました。開演前に百貨店をぶらぶらすると、チョコレートがまだたくさん売られてましたので、一つ買って私の能の先生にあげました。好きな人にあげる日なのだから、別にあげてもいいんです。和物っぽく、鳥獣戯画の絵が箱に描いてあるやつにしてみました。

  2007年02月14日

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  謡の声の出し方

  謡をしていると、声の出し方についてよく注意されます。習い始めに言われたことと同じ事です。 　　声を作らず、地声で出す。　　母音を意識して謡う。　　口を閉じ、鼻から体の奥深くへ息をたっぷりと吸い込む。　　体の中へ息を溜め、息と声を力強く出す。　　姿勢を良くし、上半身に息を共鳴させるように出すときれいに遠くまで聞こえる。　　高い声や低い声が出なくても、出すように努力をすると出るようになる。↑CD「観世流謡曲名曲撰」（三）土蜘蛛／橋弁慶／竹生島　観世流二十五世宗家観世元正監修

  2007年02月13日

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• 稽古94回目

  ■謡…「船弁慶」５回目伝へ聞く陶朱公は勾踐をともなひ。会稽山にこもりゐて。種々の智略を廻らし。終に呉王を亡ぼして。勾踐の本意を。達すとかや。然るに勾踐は。二度代を取り会稽の恥を雪ぎしも。陶朱攻を成すとかや。されば越の臣下にて。政事を身に任せ。功名富み貴く。心の如くなるべきを。功成り名遂げて身退くは天の道と心得て。小船に棹さして五湖の。遠島を楽しむ。かゝる例も有明の。月の都をふり捨てゝ。西海の波涛に赴き御身の科のなき由を。嘆き給はゞ頼朝も。終にはなびく青柳の。枝を連ぬる御契り。などかは朽ちし果つべき。たゞ頼め。・今回の注意点１、8ｳ「伝へ聞く～達すとかや」は、マワシの頭をもっとふくらませて謡う。イロは全部つけなくても良いが、つけても良いということは大きく歌ってほしいという意味。２、8ｳ「勾踐をともなひ」の「ひ」は機械的に音階を上げ下げしないで、もう少しイロをつけた感じで歌う。３、8ｳ「されば越の臣下にて」の「越」の含を正しく謡う。４、9ｵ「功成り名遂げて」の謡い出しが低い。５、9ｵ「かゝる例も有明の。」は、シテらしく謡う。・感想　はじめに高く謡いすぎたのか、「功成り名遂げて」以降が少し謡いにくかったです。声が高くなると、ますます声が軽く聞こえるのが悔しいです。■仕舞…「高砂」キリ４回目今回の注意点１、「松風も」ではなく、「松影も」。２、「声も澄むなり」でサス時、扇を右へやる時の動作が大きすぎる。３、「青海波とはこれやらん」は顔を正面に向けたまま。左腕を張る。４、「悪魔を払い」の左右左と下がるときの歩幅が大きすぎる。・感想　一通り習いました。次回で終わるそうです。「悪魔を払い、をさむる手には寿福を抱き」のタイミングが合いません。「悪魔を」を３足しか出ないと、もうはじめから決めておいた方がいいかな。

  2007年02月07日

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• 稽古93回目

  ■謡…「船弁慶」４回目いかに弁慶。静に酒をすゝめ候へ。畏つて候。げにげにこれは御門出の。行末千代ぞと菊の盃。静にこそは勧めけれ。わらはは君の御別れ。やる方なさにかき昏れて。涙に咽ぶばかりなり。いやいやこれは苦しからぬ、旅の船路の門出の和歌。たゞ一さしと勧むれば。その時静は立ち上り。時の調子を取りあへず。渡口の郵船は。風静まつて出づ。波頭の謫所は。日晴れて見ゆ。これに烏帽子の候召され候へ。立ち舞ふべくもあらぬ身の。袖打ち振るも。恥かしや。今回の注意点１、7ｳ「畏つて候。」はしっかりと謡う。・感想　今日は珍しくすんなりといきました。　この「船弁慶」に入ってからは、私が通しで一度謡い、その後先生の注意を受け、それから次回までの宿題の部分を先生に謡っていただき録音するという方法です。それまでは、まず先生がお手本を謡い、それから私が通しで一度謡い…(以下同じ)という形式でした。　8ｵ、「取りあへず」の節回しはこの曲と「江口」「花筐」にしか出ないという珍しいものだそうです。■仕舞…「高砂」キリ３回目今回の注意点１、「声も澄むなり」のサスは腕を広げてから足を出すのではなく、手と足を同時に動かす。２、「松影も映るなる」は、「松影も」くらいまでは顔を動かさない。３、「それぞ還城楽の舞」は、もっと奥まで進み、「さて万歳の」の時には舞台の中央でいる。４、「小忌衣」の「も」を引きながらサス。・豆知識　「寿福を抱き」は、一度腕を下げてから右左と出る時に腕を上げる方法と、腕を下げずにそのまま右左と出る方法とがあります。能をよくわかっている人が見ている場合は後者を、あまり知らない人が見ている場合は前者を選ぶこともあるそうです。

  2007年02月02日

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• 稽古92回目

  ■謡…「船弁慶」３回目いかに此屋の内に静の渡り候か。君よりの御使に武蔵が参じて候。武蔵殿とはあら思ひ寄らずや。何の為の御使にて候ぞ。さん候只今参る事余の儀にあらず。我が君の御諚には。これまでの御参か返す返すも神妙に思し召し候さりながら。只今は何とやらん似合はぬやうに御座候へば。これより都へ御帰りあれとの御事にて候。これは思ひも寄らぬ仰せかな。何処までも御供とこそ思ひしに。頼みても頼みなきは人の心なり。あら何ともなや候。さて御返事をば何と申し候べき。みづから御供申し。君の御大事になり候はゞ留まり候ふべし。あら事々しや候。たゞ御留りあるが肝要にて候。よくよく物を案ずるに。これは武蔵殿の御計らひと思ひ候ふ程に。わらは参り直に御返事を申し候べし。それはともかくもにて候。さらば御参り候へ。いかに申し上げ候。静の御参りにて候。いかに静。この度思はずも落人となり落ち下る処に。これまで遥々来りたる志。返す返すも神妙なりさりながら。はる遙々の波濤を凌ぎ下らん事然るべからず。まづこの度は都に上り時節を待ち候へ。さては実に我が君の御諚にて候ふぞや。由なき武蔵殿を恨み申しつる事の恥かしさよ。返す返すも面目なうこそ候へ。いやいやこれは苦しからず候。たゞ人口を思し召すなり。御心変るとな思し召しそと。涙を流し申しけり。いやとにかくに数ならぬ。身には怨みもなけれども。これは船路の門出なるに。波風も。静を留め給ふかと。静を留め給ふかと。涙を流し木綿四手の。神かけて変らじと。契りし事も定なや。げにや別れより。勝りて惜しき命かな。君に二度逢はんとぞ思ふ行末。今回の注意点１、4ｵ、「いかにこの家の内に～」のは、弁慶が主人義経の命令で静のところに行ったところ。静を呼び出すように謡う。この時弁慶はこれから静に重大なことを言わなければならない。だから「いかに」は一大決心した弁慶の心を表現する。右に「カカリメニ」と書いているように、気合いを掛けて謡う。乱暴に言うとか、強く言うわけではない。２、4ｵ、「武蔵殿とはあら思ひ寄らずや」は、横に「閑カニ」と書いてあるが、静(シテ)にとって武蔵(ワキ)が来ることは喜ばしいことではない。そういうことを聞き手が感じ取れるように謡う。３、4ｳ「余の儀にあらず。我が君の御諚には」は、「。」で少し間を取る。武蔵にとっては「我が君」の意向でこれからの行動の全てが決まるから。４、5ｵ「御供とこそ思ひしに。頼みても頼みなきは」も、「。」で少し間を取り、改めて謡う。５、5ｵ「人の心なり。あら何ともなや候」は「イ」で色をしっかりと付ける。６、5ｵ、「あら事々しや候」は最初を強く謡う。そして最後まで息の強さを保って謡う。最初の字を「あーらー」と伸ばさない。７、5ｳ、「いかに静」、は子方だから特にいろいろあるわけではない。子供の持っているエネルギーを全部声に変えようというつもりで謡う。謡い始める前にいっぱい息を吸う。「。」のところでもいっぱい息を吸う。８、6ｳ、「さては実に我が君の御諚にて候ぞや。」ここまでは静は弁慶の謀だと思っていたが、実際に義経に帰れと言われてしまった。そういう心情を表す。シテらしく、女性らしく、ゆったりと。９、7ｵ「これは船路の門出なるに。」は、「門出」で締め、また「なるに」でも締める。次に地謡になるから。10、7ｵ「波風も～」は、もっとさらっと謡う。11、7ｵ「神かけて変らじと」は直前の「木綿四手の」と同じ音程で謡う。・感想　今日は稽古不足でした。前回の稽古からの間隔が短いのと、諸事情のためです。　稽古不足だと、謡本の符号を読むことにとらわれて登場人物の心情についての解釈と表現がおろそかになるし、何よりも喉が謡いを忘れるので、謡い続けていると声が不安定になります。■仕舞…「高砂」キリ２回目今回の注意点１、「住吉の」の謡いは「の」を伸ばす。２、「声も澄むなり住吉の」でサシテ正ヘ出、左足カケ橋掛ヲ見る時は、サシた時に右腕を必要以上に前へ持って行かない。そうすると橋掛ヲ見る時にあまり右腕を動かさずに済む。３、「松風」ではなく「松影」。４、「松影も映るなる」は、右方向へ体を向けすぎない。少し体を右へ向け、適当なところで止めて、顔だけ右を向く。顔は扇が指した延長線上を見るように向ける。５、「さて万歳の」は前へ意識を持って進む。６、「小忌衣」の謡いは最後を長く伸ばす。７、全体的に“ためるところはためて”動く。動き始めはゆっくり、動き出すと早く。動き出したら謡いにまにあわせるように動くのではなく、謡いより先に行くくらいの感じで動く。一つ一つの動きに間を取る。「それぞ還城楽の舞」も、同じテンポで動かない。はじめはゆっくりと、後になるほど早く動き、謡う。早く動く時は決して大股にならず、一歩一歩を小さく出す。８、シテの役は住吉明神という和歌の神様。若い神様なので、きびきびと舞う。・感想　初めに「げにさまざまの舞姫の。声も澄むなり住吉の。松影も映るなる青海波とはこれやらん」と謡いながら舞わなければいけないのが、慣れないうちは少し難しいです。家で暗記していったつもりが、舞いながらだと次の謡いが出てきませんでした。別にそのことで先生に怒られるということはありませんが、自分が不便です。　「高砂」は私の他に２人、一緒に同じスピードで習っています。その２人は元々２年間限定ということで習い始めたのですが、この３月で約束の２年間が来てしまいます。先生は２年間という限られた時間を考慮し、よく演じられる曲を教えてこられました。「高砂」もよく演じられる曲の一つです。　私がその２人と同じものをするのは殆ど偶然ですが、一緒に習う人がいるのは私にとってはたいへん好都合です。一緒のものをするからといって、グループレッスンではないので、個人レッスンを３人それぞれが受けることになるからです。稽古は他の人のも自由に見学できるので、きちんと見続けると、通常の３倍の稽古をしていただくことになります。自分の番の時に理解が不十分だったとしても、別の人の稽古を見て理解することができます。先生の舞を正面から客観的に見ることもできます。自分が注意を受けた箇所を、別の人に別の表現で教えているのを聞くことができます。横で一緒に舞うことで、お手本を見ながら回数を多く舞うことができます。

  2007年01月31日

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• 稽古91回目

  ■謡…「船弁慶」２回目頃は文治の初めつかた。頼朝義経不会の由。既に落居し力なく。判官都を遠近の。道狭くならぬその前に。西国の方へと志し。まだ夜深くも雲居の月。出づるも惜しき都の名残。一年平家追討の。都出でには引きかへて。ただ十余人。すごすごと。さも疎からぬ友舟の。上り下るや雲水の身は定めなき習ひかな。世の中の。人は何とも石清水。人は何とも石清水。澄み濁るをば。神ぞ知るらんと。高き御影を伏し拝み。行けば程なく旅心。潮も波も共に引く大物の浦に、着きにけり大物の浦に着きにけり。御急ぎ候程に。これははや大物の浦に御着きにて候。其存知の者の候ふ間。御宿の事を申しつけうずるにて候。いかに申し上げ候。恐れ多き申し事にて候へども。正しく静は御供と見え申して候。今の折節何とやらん似合はぬ様に御座候へば。あつぱれこれより御返しあれかしと存じ候。ともかくも弁慶計ひ候へ。畏つて候。さらば静の御宿へ参りて申し候ふべし。今回の注意点１、全体的にもっと息の強さを感じさせる謡をして欲しい。２、ワキ(弁慶)はもっとどっしりと謡う。特にシテ(静)が登場するまではどっしりと謡う。３、2ｵ「頼朝義経」の「頼朝」も気を抜かずに謡う。４、2ｵ「判官都を～」は子方で高めにさらっと謡うが、これもちゃんと力を入れた息で謡う。５、2ｵ「まだ夜深くも」は右に「サラリ」と書いてはいるが、「まだ夜深くも」という情景が聞き手の頭に浮かぶような謡いをする。６、3ｵ、「大物の浦に着きにけり大物の浦に着きにけり」は、一度目の「大物の」が終わったところで心持ち間を置く。「つきにけりだいもつの」と完全に続けない。７、3ｳ、「いかに申し上げ候。恐れ多き申し事にて候へども。」は、弁慶にとっての主人義経の恋人静を連れて行くのをやめるよう進言しようとしているところ。弁慶は言いにくいことではあるが、今日こそはと一大決心をして言い始めるところなので、「いかに申し上げ候。」の後、少し間をとる。８、4ｵ、「畏つて候。」は、義経の「ともかくも弁慶計ひ候へ。」を聞いて、内心「してやったり！」と喜んで言うセリフ。そのために3ｳ「いかに申し上げ候。恐れ多き申し事にて候へども。」以下、主人にこれこれと申し上げたのが受け入れられたのだから。もっと大きく謡う。９、4ｵ、「さらば静の御宿へ参りて申し候ふべし。」も、もっとしっかりと謡う。・感想　レコーダーに録った自分の謡を聞くと、自分の声の軽さにびっくりします。　上に書いた注意点は先生が言葉で説明してくれたもののメモですが、実際には私と一緒に謡って下さることで、「こう謡うのですよ！」と言外に教えてくださることも多いです。そういうのはなかなか文字化しにくいので、謡本の方に書き込んでいます。傍線を引いたり、文字を囲ったりして。そんなでも、次見た時に、「ここは注意されたところ！」と思い、考えながら謡うことができます。　今日のお稽古は45分くらいでした。長い。でも有難い。足が痺れきって、なかなか立てませんでした。でもだいぶ正座に慣れて、痺れが取れるまでにそう時間がかからなくなりました。■仕舞１…「巴」６回目今回の注意点１、力強く構える。２、はじめの謡いをもっと力強く謡う。３、「四方を払ふ。八方払ひ」は長刀の末の方を掴んだ右手を上に上げ、刃が足下に近くなるようにする。そうでないと、万が一、手が長刀から外れた時に、観客の首を薙ぎ払うことになってしまう。４、右左右左ト四ツ共ニ取直シは、下から上へ、腰から、切り払うような動作をする。・感想　ああ、よかった。なんとか覚えられて。一応、今回で終わりました。　「巴」は２分10数秒の舞です。■仕舞２…「高砂」キリ1回目今回の注意点１、「高砂」キリの最後の部分「千秋楽は民を撫で。万歳楽には命を延ぶ。相生の松風颯々の声ぞ楽しむ颯々の声ぞ楽しむ」の部分は附祝言(つけしゅうげん)で謡うくらいおめでたい曲。だから、格別に力のある声で謡い出す。２、開は、1足目はまっすぐ引く。2足目は斜めに力強く引く。・感想　「高砂」を初めて見たのは2003年に放送された「第30回NHK古典芸能鑑賞会」です。観世流宗家の観世清和さんがシテで、能をしていました。笛の旋律がきれいで、何度もその部分だけ聞きました。　次に見たのは2004年9月の発表会で、私の他の方がしていた仕舞です。勇ましくてかっこいい舞でしたので、いつか自分も習いたいと思いました。(ちなみにこの方が発表会でなさる仕舞を見ると何故かいつも、私もいつか！と思ってしまいます。)　その次に見たのが2006年10月28日の舞囃子です。シビレました。　今回から習えて嬉しいです。先生に型付(かたつけ。謡本の右注に型の名前が書いてあるもの)をコピーさせていただくと、意外と短いのに驚きました。

  2007年01月24日

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• 長刀のコツは大根の輪切り

  初謡会で、助っ人に来て下さった先生とお話ししました。今習っている仕舞「巴」で、長刀を払う動作がなかなか格好良くいかないことをぼやくと、「縦にした大根をいかにきれいに切るかということを想像するといいですよ」という助言を頂きました。なるほど、わかりやすい。大根ですか。「…そのためには、必ずどちらかの手を腰につけて、腰からずばっと持って行くといいですよ。腕だけじゃなくて」とも。合戦において長刀は馬の胴体をなぎ払うような使い方もしたらしいですねと申し上げると、「それは内臓がすごく出そうですね。どばー！と」と仰っていました。きっとそうでしょうね。昼食後、日当たりの良い応接室でのなごやかな会話でした。

  2007年01月15日

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  初謡会で甲羅干し

  初謡会の午前の部が終わり、昼食も済み、みんなで応接室へ行きました。誰が呼ぶでもなく、１人、また１人と日当たりが良い窓側でたたずんでいました。遅れて入って来た先生が見るなり仰いました。「どうしたの、みんなして甲羅干しして！」甲羅干し？先生。それを言うならひなたぼっこ。

  2007年01月14日

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