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東京なな猫通信

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2005年04月17日
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「東京・文学散歩ノオト」なんて銘打っておきながら
あまり読書ノートになってない最近の『なな猫通信』ですが
大体、偏愛の度が濃すぎるもので
結局いつも同じようなものしか読んでなくて
たいした記事にもならないなと。


なな猫の中でずっとブームの立原道造はもちろんのこと
堀辰雄と、なぜか毛色のまったく違う太宰だけは
けっこう毎日のようにあれこれ引っ張り出しては
代わる代わる読まない日はないといっても過言じゃない。
あ、「レベッカ」のD・デュ・モーリアも偏読してるもので
最近またネットで古い作品集を1つ買って読んでます。


で!
やっとまたタイトルにたどりついたところで
『細雪』。
これがまた、定期的に訪れる、なな猫偏読の一冊なんです。
言わずと知れた、谷崎潤一郎の長編ですね。

               sasameyuki

これ、全巻まとまってすごい分厚くなってる中公文庫なんですけど
なな猫の実家に昔あって、なな猫が中学生くらいからぼつぼつ読み始めた
中央公論社の日本文学全集の一冊に
この谷崎の『細雪』が入っておりまして、
そのとき見た、その挿絵、田村孝之介画伯の、
あの絵じゃないと、もう読むのイヤだ。
なんて思ってたなな猫に、中公文庫がプレゼント。
まさかそんなわけないけど、見つけたんですね、同じものを。

      sasameyuki no e1  ssameyuki no e2
左は、駅で電車を待つ美しい三姉妹が人の眼を惹いているところで
右は古い道修町の薬問屋でしょうか。丁稚さんがいたりして。

「こいさん、頼むわ」で始まる、この『細雪』。
芦屋とか神戸とか大阪、京都といった
阪神間の奥様風俗がレトロで面白く
なによりも、あの船場言葉、また古い関西弁。
「~でっしゃろなあ」とか「待ち遠やわ」、「~に違いない思うててん」、
「うちをどないぞ思うてるなら、思わしといたらええのんに」だの。
「住みゃはっても、ええのんとちがうかしらん」とかね。


なな猫は岡山育ち。
関西弁じゃないんですけど
岡山はテレビがもろ関西系だったので
松竹新喜劇やら藤山寛美 やら吉本で育ちまして
いまの関西弁ともちょっと違う、昔の関西弁が耳の中にまだ残ってて
昔は毎冬、家族で大阪や奈良・京都まで
漫才や都おどりを観に行ったりもしてたもので
あのはんなりべったりのイントネーションが
なにやら嬉しくも懐かしい感じなんです。


それに、『細雪』といえば着物に帯、
それから「吉兆」とか「与平」の寿司とか
御室の桜とか、そう、あと、歌舞伎に舞、「十日戎」とか「黒髪」とか。
そういう、日本。
その美しさをなな猫に教えてくれた一冊でした。
銀座も、軽井沢も、イギリスの田舎地方もいいけれど
戦前の日本の関西、神戸
その、今じゃもう残ってないような不思議がいっぱいの世界に
ときどき浸りたいなな猫です。


            





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Last updated  2005年04月17日 13時58分53秒
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