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カテゴリ:なな猫のあれこれ読書日記
小説集『稚児ヶ淵』を入手。
潮流社刊のこのシリーズ、 造本としてもとてもすてきな、わたしの好きなシリーズで 既に 「未刊ソネット集」 4000円 「詩人薄命」 3500円 「感泣旅行覚え書」 3500円 の3冊が出ているのですが この小説集『稚児ヶ淵』も、これから読み進めるのが楽しみな一冊です。 巻頭に載せられた「紙漉町」、その冒頭の一節を ちょっと書き抜いてみたいと思います。 はっきりとおぼえてゐる。秋の深くなつた晴れた朝に自動車に乗つて 僕は病んだからだのものうい目で萎れた花とかつてあこがれた人を見つ めながら去つたのだ。ふたたびする事を天に許されて、僕はふたたびか へつて来た、すぎ去つた年月はもの悲しく季節の歌をくりかへし、そぐ はないままの僕の姿にすべて見失つたさびしいこころをよりそはした。 白い雲は旅の道と梢と鳥と僕の姿をざわざわまぜて行つてしまつた。何 を考へ、何をしてゐたのだらうか。紙漉町と名のある悲しい町よ。 なんだか立原道造の匂いがすると思っていたら、 巻末、坂口昌明氏の「編者識」で、 「執筆が作者と接触を深めつつあった立原道造の夭折と 重なる時期になされた可能性が高く、その影響を考慮せざるを えない」とあって、意を強くした思いでした。 さらに、付録の論評と回想の中の、山崎剛太郎氏の文章から この詩人が太宰治に心酔していたことがわかり さらに、不遜にもわが意を得たような錯覚に陥ったなな猫でした。 家で、また通勤電車の道すがら これから楽しい時間が流れそうです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006年05月13日 19時57分09秒
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