真夜中の一人の部屋
画面に向かって
キーを叩くその向こうに
君がいる
触れることが出来ない
遠い距離の向こうにいる
映像の君が私と話す
遠いけど近く
近いけど遠い
「会えないけど
笑う顔が見たいから
声だけじゃ見えない
あなたの笑顔が見たいから」
君からもらったツールを
訳が分からないまま接続して
ああだこうだと携帯で話しながら
設定をするパソコンの画面
何度つなげてみてもうまく行かなくて
放り出しそうになりながら
やっと見ることが出来た
久しぶりの君の姿
少し痩せたかな
髭が伸びてる
髪形も変わったな
プレゼントしたネックレスも
ちゃんと着けてくれてる
君だけが会いたいわけじゃない
私だってやっぱり
声だけよりも見える君が嬉しい
だけど今 画面に映る私は
毎日 日付けが変わる頃に
やっと終わる仕事や
土日も休むことのない仕事に疲れて
くたくたに見えてるんじゃないかな
そんなことを気にしながら
それでも君に会いたくて
オンラインで君を呼ぶ
時折 笑い転げたり
拗ねてふくれたり
真剣になって涙ぐんだりする
画面の中の私を見つめて
抱きしめたい
君は言うけど
どんなにレンズに近づいても
君に触れることは無く
フレームからはみ出すばかり
これが私たちを隔てる
距離と言う名の越えられないものの正体で
今は変えられない事実
嘆いても
これが真実
だけど前よりも君に近づけたから
今日の終わりに必ず伝えよう
君から そして私から
心の奥があたたかくなる
「愛してる」という言葉を
今日も距離を隔てた画面の向こう
煙草の煙と一緒に
私の笑顔を待つ 世界に一人の
君がいる
ネット詩誌 MY DEAR
新作紹介掲載作品
主催者・島様に感謝