中之島公園の猫たち-SAVE THE CATS IN NAKANOSHIMA PARK-

いろんなことがあった８月も終わり…
いよいよ9月ですね
台風など、本格的に天候が気になる季節を迎えます

｢猫の部屋｣での生活も、9ヶ月目に突入
｢何だか、ずっとバタバタしてたよね｣
｢ここまで来るの、アッという間だったような気がする｣

昨年末から始まった仲間たちの保護活動
毎日バタバタと目まぐるしくて、いろんなことがありました。
秘書たちには、時間の流れがやたらと早く感じるようです
｢去年の今頃は、まだ何も知らなかったもんね…｣
｢まさかこんなことになるとは、誰も思ってなかったよ｣
｢まあ、これも乗りかかった船だし｣
｢何と言ってもコイツに出会ったから…だね｣
秘書たちの目の前には、きょとんとしたお顔のふさこちゃんがいました。

職場近くの中之島公園剣先に､第二秘書が初めて訪れた時
忙しい仕事の合間、息抜きをするにはぴったりの場所だと思ったそうです
まわりは高いビルに囲まれ、たくさんの車が行き交うオフィス街
しかし、剣先に一歩入ればそこは別世界
緑が多くて、すごく落ち着ける場所でした。
ベンチに座り、川を眺めているだけでホッとしたのだそうです
その話を聞いた第一秘書も剣先を訪れるようになりました。
まさか二人とも、その何年か後に…
今のような状況になることなど考えてもいなかったことでしょう


ある日のお昼休み
いつものように第二秘書がベンチに座っていると、１匹の猫が近寄って来ました
白い体にキジのぶち、
愛嬌あるお顔、丸々とした体つき
目の前にちょこんと座り、ジッと秘書を見つめ
『うにゃー（何か食べる物くれ）』
そう言ったのだそうです

「それ、本当に食べ物をくれって言ってたの」
「間違いないあれは絶対にそう言ってる」
第二秘書の話を聞いて、最初は笑っていた第一秘書でしたが…
その後、その猫に会って思わず納得したのだそうです
「…あの子、本当に言ってたね」

秘書たちに直談判しにやって来た猫
それがふさこちゃん
剣先一、食いしん坊の女の子
何があっても食べ物がある場所から離れない根性ある性格です
食べ物を持っている手を目で追って、絶対に視線を外さず
『うにゃーうにゃー』
ふさこちゃんの視線が痛くて、そそくさとベンチから立ち去ってしまう人も
秘書たちも目の前でお昼ご飯を食べるのを躊躇したこともあったそうです


ふさこちゃんと出会った当時、
果たして食べ物をあげていいのか悩んだと秘書たちは言います
お昼休みや仕事の合間にしか来られない自分たちが、食べ物をあげることは無責任なことではないか…
それにどうやら面倒を見ているホームレスのおじさんがいて、ご飯をきちんともらっているようだということにも気が付いたのです
こうして毎日諦めずにやって来るふさこちゃんと秘書たちとの根競べは、少しの間続きました

ある日のこと
第二秘書はいつものようにやって来たふさこちゃんが何か引きずっていることに気付きました
お日様が当たるとキラキラ光るもの
「なに、それ…」
よーく目をこらしてみて、第二秘書はやっと気付きました
それは長い長い、５ｍほどもある釣り糸でした
驚いた秘書が、いったいどこから続いているのかを目で辿ると…
それはふさこちゃんのお腹からでした
糸がついたままの釣り針が、ふさこちゃんのフカフカのお腹に刺さっていたのです
「…どうしよう」
捕まえようと思っても、ふさこちゃんは捕まらず
釣り針が刺さって、長い釣り糸をくっつけたまま…
「うにゃー（だから食べ物をくれって）」
仕方なしに第二秘書は、持っていたパンをちぎってあげたそうです。
釣り針が刺さっていることを気にすることもなく、いそいそと近寄って来たふさこちゃん
とても嬉しそうにパンを食べました
ふさこちゃんが真横に来てくれたところまでは良かったのですが…
当たり前のことですが、キャリーも何も持っていない第二秘書
その日は結局、どうすることも出来ず…
ともかく長く引きずっていた釣り糸だけを短く切ったのだそうです


次の日も、ふさこちゃんの柔らかそうなお腹には釣り針が刺さったままでした
近くに来て、足元に座るのですが…
体を触ろうとすると逃げてしまいます
何度トライしても捕まらず
会社近くの動物病院を調べ、すぐに病院に連れて行こうと考えていた秘書たちですが…
その日も泣く泣く断念せざるを得ませんでした

そして３日目
ドキドキしながら公園に行った秘書たち
いつものように駆け寄ってくるふさこちゃん
「うにゃー（今日も何か食べ物くれる）」
恐る恐るお腹をのぞき込むと…
そこにはもう釣り針はありませんでした
「あっ取れてる」
「よ、良かったぁー」
その時もふさこちゃんは、きょとんとしたお顔で秘書たちを見つめていたそうです。

「あの時、ふさこのお腹から釣り針を取ってくれたのは誰だったのかな」
「スロープ下のおじさんかもしれないよ」

私や仲間たちの面倒を見ていたホームレスのおじさんは、静かで口数の少ない人でした。
でもとても優しくて、私たちのことを大切にしてくれました
「橋の上から下に落とすか、川沿いに河岸を伝って中に入るか…
何とかして食べ物だけは持って来ようと思っています」
工事の準備期間に入り、先にスロープ下から立ち退いたおじさん。
毎日、自転車で剣先にやって来てくれました
秘書たちが缶詰やドライフードを持って行くたびに…
「いつもありがとうございます」
おじさんは優しく、そう言っていたそうです。


「あの時からさ、今ここにいること、もう決まってたのかもしれないよ…」
「うん、そんな気がする」

ふさこちゃんと初めて会ってから、私やモデルちゃん、ちびたちゃん、みさえちゃん…
剣先の猫たち全員と仲良くなった秘書たち
そして今…
剣先エリア以外の仲間たちとも出会って、仲良く過ごしている秘書たち

「もしかして私たちのこと…
この子たちが選んでくれたのかもしれないよ」
「だったら期待に応えて、いっぱい頑張らないといけないね」

猫の連絡帳 食いしん坊ふさこちゃん あまり食欲がなく、元気がありません お口の調子が悪いのかな 現在、ワンルームにて様子を見ています