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テーマ:猫の気持ち(26)
カテゴリ:保護
「母を呼ぶ声…その1」はこちら
「母を呼ぶ声…その2」はこちら 「子を呼ぶ声…その1」はこちらをご覧ください あの日の朝 丸いカゴに入った 小さな小さな子猫たちは まだ、おぼつかない手足を震わせながら 鳴き叫んでいました それは、彼らの この世のすべてだった存在を呼ぶ声 きっと、生まれて間もない彼らは あんなに大声をあげて 鳴き叫んだことなどなかったはず いつも、そばには 彼らの小さな体を抱きしめて 深い愛情を注いでくれた存在がいたのだから… 子猫たちが母を呼ぶ声は 部屋の中にも聞こえていました ただ、あの時 部屋の中にいた仲間たちは 誰も騒ぎませんでした 悲痛な叫び声が響き渡っていたけれど 静まり返った部屋からは 誰の鳴き声もしない… 少し疲れたのか 子猫たちの声が弱くなってきた頃 静かだった部屋から 『にゃあ』という鳴き声が聞こえました それは高く澄んだ声 たった一声『にゃあ』とだけ… あの時… 秘書たちは、他の猫が鳴いたのだと思ったけれど… 少し経ってから、その鳴き声が 本当は誰のものだったかに気付いて 胸が苦しくなったそうです 秘書たちがキジ猫に会ったのは 7月5日、土曜日の朝 子猫たちと出会う 30分ほど前のことです 前日、捕獲されたSさんから報告を受け 司令塔Aさんは、この日の午後に 手術を予約をしていました 病院に送り出すため 普段より早めに到着した「猫の部屋」 扉を開けたとたん 作業場に置かれた捕獲器の中に 猫の姿が見えました 「ああ、ほんとに小さい…」 「うん、全部が小さいんだ…」 いちばん奥の隅っこで 固まっていたキジ猫は、とても静かでした 大きな目だけを見開いて 秘書たちを眺めていました 緊張しているからか 少し強ばった表情だったけれど 顔立ちはあどけなく 頭も体も、とても小さい 確かに、まだ大人にはなっていないくらいの 大きさにも見えたけれど… 「でも…子猫ではない気がする」 「私もそう思う…」 毎晩、ご飯をあげていたSさんにすら 近寄らせることを許さず すぐに逃げ出していたキジ猫 初めて間近で見る姿に もっと、よく観察しようと 捕獲器の中をのぞき込んでみて 秘書たちは気付いたのです 小さな体が小刻みに揺れていることに… 「あ…怖いんだね」 「ごめんね…」 鳴き声ひとつあげず 暴れたり、威嚇したりせず ただ、静かに視線を合わせたまま 体を震わせて怯える姿 今まで外で暮らしてきて この子は、どれだけ大変だっただろう 人の気配がすれば 慌てて逃げ出して、姿を隠して… こうして体を震わせながら 気付かれないように 息をひそめていたのだろう ひとりぼっちで生きていたんだろうか… ほんの少しだけでも 心安まる時間はあったんだろうか 怯えるキジ猫の姿に 秘書たちは、切ない気持ちになりました 何かがおかしい… 子猫たちに会った時から 秘書たちは違和感を感じていました 発見された公園のシルバーさんから話を聞き 彼らのいた場所を調べてみて その違和感は、どんどん大きくなりました こんなに小さな子猫たちが 周辺に響き渡るほどの声をあげて ずっと呼び続けていたのに… そばに母猫の姿がない 鳴き声に呼応することもない どこをさがしても気配すら感じない… 一瞬、頭の中に ひとつの仮説が浮かんだけれど… 母猫は、どこかに隠れているだけかもしれない あたりが静かになれば姿を現すかもしれない まだ、その可能性は捨てきれないと 秘書たちは考えていました けれど… 時間をあけて、何度も 現場周辺を歩き回ったけれど 結局、子猫たちの母猫が姿を現すことは ありませんでした 「やっぱり、確かめよう…」 「うん…」 翌日、日曜日のお当番さんたちからも 特に気になる報告はなかったため… 秘書たちは、司令塔Aさんに連絡し 大至急、病院の先生に 確認してほしいことがあると伝えました あのキジ猫は何歳くらいなのか 出産経験はあったのか 授乳中ではなかっただろうか… その時点で、キジ猫が メスであることはわかっていました 最初は、単なるひとつの仮説 推測の域を出ない話でした けれど、それが事実だと仮定して 今までの状況をあてはめてみると… まるで、パズルのピースが ひとつずつ埋まっていくような感覚になりました Aさんが手術してくださった先生と話したところ… あの日は、かなり多くの予約が入っていて 次々と手術を行っていたため 先生は、詳しく覚えておられなかったようです ただ、子猫ほどの大きさだけど あのキジ猫は、そこまで若くはない 完全な成猫であること もちろん、1才に満たない年齢でも 妊娠、出産は可能なのだから あの子が何度か出産を経験していても おかしくはないと言われたそうです また、ひとつパズルのピースが 埋まったと思いました 新しく「猫の部屋」の仲間になった キジ猫が戻ってくる日 秘書たちは、最後の確認をしようと 考えていました 送迎をしてくださった お当番のカニバケツさんには キャリーではなく、捕獲器で連れて帰ってきてほしいと お願いしてありました そして… 病院へ行った時と同じように 捕獲器に入った彼女が 「猫の部屋」に帰ってきました ケージに移す前に 捕獲器を高く上にあげて 下からお腹を確認してみると… 「ああ…やっぱり…」 「お母さんだったんだね…」 まわりの毛が抜けて 少し赤みの残った乳首 とても小さいけれど膨らんだお乳 もう、ほぼ覚悟はしていたけれど… 彼女が子育てしていた証を 目の当たりにした時 秘書たちには、あの子猫たちの 叫んでいた声が聞こえるような気がしました あの日、母と子は こんなにも近くにいたのに… 引き離してしまったという事実に 涙がこぼれそうになりました 「中之島公園猫対策協議会HP」 web@nakanoshima-cats.com 「中之島公園の猫たち」 nakanoshima_cats@yahoo.co.jp シルバーさんが子猫たちを連れてきてくださった時 まだ、彼らは生後2週間ほどでした 誰も気付かなかったとはいえ… とても残酷なことをしてしまいました… 今も、彼女の高く澄んだ鳴き声を聞くたびに 秘書たちは、たまらない気持ちになるそうです 次回は母と子の近況をお伝えしたいと思います あと少し、お付き合いください 猫ボランティア・保護活動ランキングへ 人気ブログランキングへ どうか、この母と子にたくさんの幸せが訪れますように… 応援よろしくお願いします お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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