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カテゴリ:保護
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「猫の部屋」に訪れた新しい出会い 台風の直前、Sさんに捕獲され 病院で待つ司令塔Aさんの元へ運ばれたのは 小さな女の子でした 捕獲器に入ったままの彼女を 病院まで届けてくださったカニバケツさんに 名付け親になっていただきました いくつもの候補の中から 一生懸命考えて選んでくださった名前 「ちなつ」 夏の終いに来た子だから...と カニバケツさんは笑っておられました その可愛らしい名前は 「猫の部屋」の子が持つ苗字と合わせた時 より美しい響きになりました 「中之島ちなつ」 それが小さな彼女の名前です 私と第二秘書が 初めて、彼女に会ったのは 台風も過ぎ去った翌週の土曜日でした 捕獲直後、手術まで終えて 火曜日に「猫の部屋」へ来たちなつ 茶白部屋に置かれたケージの中 大きな耳をペタンと下げて 縞模様の体を小さくするのを見た時 ちなつが話しに聞いていたよりも 幼かったことを知りました 「小さいね...」 「うん、聞いてたより小さい...」 確かに顔立ちは しっかりしていましたが 被毛は、子猫特有の手触りでした 威嚇する時に見えた歯は小さく 少し触ると乳歯なのがわかりました 目の色は赤みがかったカッパー たぶん色が変わり始めたくらいの頃 威嚇したり、叩いたり 精一杯抵抗する彼女を抱き上げ 体重を量ったところ、1kgちょうど 普段、大きな猫ばかりを撫でている手には 頼りなく感じてしまうほどでした 事情があり、早めの手術になったこと どうしても必要だといわれた耳先カット 思いきり下げた耳に入ったしるしと 強ばっている小さな背中が 痛々しく見えました 「猫の部屋」に来た日には 見ているとご飯も食べなかったちなつ 怖がる様子、威嚇する様子 お当番さんからの報告でも やはり人に馴れている猫には思えませんでした ただ、警戒心はあるものの 叩くことも、噛みつくこともしない 小さな威嚇を繰り返しながらも その後、どうすればいいのかわからず 困っているような様子 自分の置かれた状況に 戸惑っているように見えたそうです ちなつを捕獲した後も もうボーダーライン周辺に猫がいないか 捜索を続けていました 猫らしき姿を見た、猫の声を聞いた... いくつか情報も入りましたが どれも不確かだったり、時期が少し違っていたり 彼女と結び付けられるものはありませんでした そして、やっぱり 他の猫が姿を現すこともなかったのです --- もう、どこかに行ってしまったのかもしれません... --- ずっと見回りを続けていたSさんは そう言っておられました 猫という動物は 基本的に単独で生活するといわれます ただ、それは環境によって かなり変わるものだと思います 例えば、街中のほんの小さな場所 多くの車や人に追われる場所だったら... とにかく、生きていくために 早々と別れるしかない親子やきょうだいは たくさんいるでしょう けれど、もし許される環境だったなら... 大きくなってからも 母親やきょうだいたちと離れることなく ずっと一緒にいることを 選ぶのではないかと思うのです かつての公園内には いくつものコミュニティがありました そのひとつひとつは 親子であったり、きょうだいであったり 血縁関係のある猫たちが中心となって 形成されていたものです 途中でやってくる 新たな猫たちを受け入れながらも 彼らは、ずっと一緒に暮らしていました そして、それが許される環境は おそらく近隣の地域にもあったはずです 昔、工事に追われて エリア内に逃げてきた猫たちがいました 今の茶白きょうだいです そして、二年前には 出産と育児のため、静かな場所を求めて 居着いた親子がいました れんと、ほたるとみこ... ただ、大きさから考えると ちなつの誕生日は夏に入る前 もしも、あの場所で 育児をする猫がいたなら 必ず誰かの目にとまっているはず... 今は餌をあげる人もいないエリア内で あの日まで姿も見せずに暮らしていたとは どうしても考えられませんでした あの、発見された時の どこか落ち着いたような様子 そして、あの大きさになるまで 人との接点があったようには思えない様子に ひとつのイメージが浮かびました 彼女は、どこか別の場所で育ち あの場所まで移動してきたのではないか 無理矢理、誰かに連れてこられたのではなく いつも守ってくれる母猫と一緒に 彼女は、どこかへ移動する途中に 親とはぐれてしまったのかもしれない... あの日、取り乱して 鳴き叫んだりしなかったのは… まだ、自分の状況が 理解できていなかったからか? それとも、まだ近くに 大好きなお母さんの気配が残っていたからか… 今もまだ、ちなつに繋がる情報は なにもありません そして、ボーダーライン周辺で 知らない猫を見かけることもないままです 「ねぇ、ホント、どっから来たの」 「もしかして、お母さん待ってた...」 ケージに向かって話かけると やはり体を精一杯小さくするちなつ 「あれからも、ずっと探してるんだけどね...」 「どこにも、だれもいないんだ…」 そっと、扉を開けると 小さくシャーと威嚇する声 けれど、やっぱりその後 しっかりした目鼻立ちの顔に浮かぶ 不安げな表情 「ごめんね…お母さん、見つけられなくて」 「ここで一緒にいよう」 片隅で震える彼女に ゆっくり手を伸ばしてみると… ぽてぽてと二度 手の甲をかすめたのは 小さくて暖かな肉球の感触 「んんっ今のはなんだ」 「ふふっ、もしかして…」 それは、緊張で少し湿った猫パンチ たぶん、それがあの時 彼女にできた精一杯の攻撃 その後は、やはり戸惑ったように 隅っこで耳をさげたまま うずくまっていました 「きっと、まだ守られてたんだろうね」 「うん、そんな感じする」 下がった耳の付根、小さなおでこ 顔のまわりから喉元、首... 母猫がグルーミングするように 指先で撫でていくと 強ばった体から少しずつ 力が抜けていくのを感じました そして、ずっとぺたんと寝ていた 大きくて長めの耳が元の位置に戻った頃... 聞こえてきたのは ゴロゴロと喉を鳴らす音 「大丈夫、大丈夫だよ…」 「もう怖がらなくていいからね...」 小さな頭を片手で包み込みながら 親指でおでこを撫でていると... いつの間にか、ちなつは 手に顔をうずめてウトウトしだしました 手のひらに乗る柔らかな重みと ゆっくりと繰り返す寝息 それは、今ここに彼女が存在する証 まだ小さくて、ひとりぼっちだったけれど それでも、ちゃんと生き抜いて ここで巡り会ったのだから... ちなつをたくさん愛してくれる人を探そう もう、これからは 下手くそな威嚇も、不器用な猫パンチも しなくてもいいように... 思いきり甘えて、喉を鳴らして ずっと、幸せを感じていられるように... ちなつの未来を探したい... そう思ったのです 「中之島公園猫対策協議会HP」 「中之島公園の猫たち」 nakanoshima_cats@yahoo.co.jp 夏の終わりに出会った子猫ちなつ 「猫の部屋」の末っ子です すでに秋も深まり 保護から1ヶ月半が経過しました 現在、生後3ヶ月半 元気にすくすく成長しています ちなつの里親さん募集を開始します 詳細は「里親さんになるために」をご覧ください 皆さん、彼女に幸せな未来が訪れるよう 応援していただければ嬉しいです どうかよろしくお願いします 猫 ボランティア・保護活動ランキングへ 人気ブログランキングへ ブログランキング参加中 …といいながらも、やっぱりまだ更新停滞中 ちなみにTwitterはこちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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