ブッシュ大統領の南米訪問
本年の3月中旬にブッシュ米大統領は、中道左派ながら穏健派のブラジル、ウルグアイ、親米政権のコロンビア、グアテマラ、メキシコの中南米5カ国を歴訪した。豊富な石油資源を背景に米国を激しく批判するベネズエラのチャベス政権など中南米で強まる反米の動きに歯止めをかけることが狙いのようだ。またブッシュ大統領は米州自由貿易圏構想(FTAA)を念頭に「面倒をみるのは米国であることを理解してもらう」として親米諸国への支援策を強化する方針だ。中南米のリーダ格で「2050年の経済大国BRICs」の一角を占めるブラジルは、今まで米政権の外交政策や市場経済主義に厳しい批判を浴びせてきた。しかし最近、ブラジルとベネズエラによる南米政治の主導権争いによって、ブラジル国民の中にチャベス大統領に対する反感が芽生えている。そのタイミングを狙ってブッシュはブラジルに接近したようだ。かつてチャベス失脚を狙ったクーデターに失敗したブッシュ政権が戦略を転換し周辺諸国の懐柔に乗り出したのだろう。ところでブッシュ大統領は2005年11月にはアルゼンチン、ブラジルなど中南米諸国を訪問し、すぐその後、日本、韓国、中国など東アジア諸国を訪問している。恐らくロックフェラーの「世界政府」構想に向けてNAFTA(北米自由貿易協定)を中南米にも拡大した米州連合を意識しているのだろうか。またアジアにおいてもASEAN10カ国と北東アジア3カ国(中国、朝鮮、日本)による東アジア連合を目指し、EU連合やロシア・中央アジア連合とともに4大経済圏の実現を目指しているのかも知れない。そしてそれぞれの経済圏の盟主が国連安保理国になるとすれば、日本も東アジア連合の盟主たる姿勢を示さないと安保理国にはなれない。