『 間宮兄弟 』 江國香織
兄・明信、35歳、酒造メーカー勤務。弟・徹信、32歳、学校職員。2人暮らし。読書家、母親思いで、マイペースで人生を楽しむ兄弟だが、おたくっぽいと女性にはもてない。しかしそんな兄弟の純粋な感性は次第に女性たちの心を動かすことになる……。“そもそも範疇外、ありえない、いい人だけど、恋愛関係には絶対ならない”男たちをめぐる、江國氏の最新恋愛小説。そんな紹介文や映画のコマーシャルなどから、少々変わったオタク兄弟の物語…というイメージが私の中にありました。『今返却されました』という図書館の棚にポツリとおいてあったことから偶然手にして読み出したら『神様ありがとう~!!』と無神論者でありながら思わず心で叫んでしまった本でした。変わったどころか,キチンと仕事はこなし迷惑をかけるわけでもなく、人の悪口も言わずご飯も自分達で作り、多趣味で凝り性で季節感あふれる生活を送っている…。母の誕生日もけして忘れず必要とあらばお金を惜しまない。見方を変えると、二人はいいとこのお坊ちゃま風ではないですか。昔だれかに『彼氏が彼氏自信の親への態度は将来自分に向けられる態度だから要チェックだよ』と言われたのですが、彼らと結婚したらそれはそれは幸せ者として一生を二人で送れるのではないでしょうか。ある日彼らは二人でテーマを決めて本を選び一日中読書にふけります。またある日はレンタルビデオ店で一時間かけて映画をそれぞれ数本選び昼も夜も見続けます。花火をしようと誘いそれならば浴衣だ、と一式仕立てたりします。野球でひいきのチームはスコアまでつけながら見ます。壁一面の本、そろったオーディオ機器、鉄道模型、年季が入っていてもきれいに使われている各種ボードゲームに百人一首…。なんてうらやましい生活なのでしょうか。苦手なことが多くてもその中から自分にできる仕事を選び、その仕事に誇りを持っている兄弟。なんだか人間としてとてもうらやましくなるのでした。間宮兄弟。生活に余裕ができたら、自分の時間が多くなる頃、この兄弟のように節度を持って生きていきたいな。この兄弟のように今は人とうまく関われなかったらオタクとよばれてしまうのでしょうか。人の本質を見るよう努力して生きてゆきたいものだと思うのでした。