『 写楽殺人事件 江戸川乱歩全集13 』
『写楽殺人事件』が江戸川乱歩賞を受賞したときの選者のコメントなどが書かれていたので借りてみました写楽殺人事件○写楽はは誰かという謎をめぐる仮設検証プロセスは抜群に面白い○殺人事件のトリックが安易で新鮮味に欠ける○狭義のミステリーを今後も書き続ける才能があるか受賞後に不安を残す以上のような内容が選者の方々の総評でした。写楽の時代の謎が楽しすぎて現代のミステリーが軽く感じてしまうのは確かでした。しかし最後の今後については全くの杞憂となりました。これほどの才能豊かな方とはだれもが思わなかったことでしょう。確かにいろいろな賞の受賞風景やコメントなどを見ると必ず「今後に…」「今後も…」、と表彰する側の作家さんたちが必ず語りかけているのを見ます。一度受賞して消えゆく作家さんはとても多く書き続けるということの大変さがわかります。高橋さんの話としては『鉄壁のアリバイを崩す。密室殺人の謎を解く。読み手としては、そのほうが好きだけれど書くとなると、殺人の動機の解明の方に心が動く。犯人が殺人という究極の手段を選ばざるを得なかった異常なシチュエーションを解くことを目指している』ということでした。1947年 (昭和22年)8月6日 岩手県釜石市生まれ 早稲田大学商学部卒 浮世絵研究に携わり美術館勤務後アレン短期大学講師に就任1983年 第『写楽殺人事件』で29回江戸川乱歩賞受賞84~85年河北新報に伝奇SF『総門谷』を執筆(アイデアは10年前より) 主人公の名「霧神顕」は作者がかつて使用していた筆名 86年『総門谷』が吉川英治文学新人賞受賞 『北斎殺人事件』日本推理作家協会賞受賞 探偵は塔馬双太郎となる 89年『広重殺人事件』 88年『歌麿殺贋事件』『パンドラ・ケース』 89年『南朝迷路』 90年『即身仏の殺人』他の浮世絵ミステリーは美術探偵「仙堂耿介」の91年『春信殺人事件』、90年『北斎の罪』(短編)、2002年『ゴッホ殺人事件』最後にあった解説の杉江松恋さんのコメントです。津田良平と塔馬双太郎は東北人の二つのあり方を表している。津田は中央にコンプレックスを抱き、どうしても同化できない本来の意味での東北人。塔馬は(東京生まれに設定されているが)中央に魂を売り故郷を捨てた東北人である。その関係を念頭において三部作を読み返すと、また違った発見があるのではないか。特に二人の最後の共演である『広重殺人事件』があのような悲劇的な結末を迎えたことには、作者の秘められた意志が感じられるのだが。。。本来の意味での東北人というのはどうかと思いますが、ドールシリーズとこの『写楽殺人事件』しか高橋さんの本を読んだことのない私には、興味深いものがありました。悲劇的な結末ってどんなでしょう~!!(笑)。