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2008.06.24
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しょんぼり重そうなので、スルーしていたけれど・・この映画は凄い。
 何かに依存してしまう人間の弱さと、俗に言う普通と普通じゃない、そのボーダーライン
 みたいなものの曖昧さみたいなものも感じてしまう。
 強烈に人間の脆い場所を突いてくるような映画だ。
 
 かちんこ「ピアニスト」
 2001年 フランス/オーストリア
 監督    ミヒャエル・ハネケ
 出演    イザベル・ユペール 、ブノワ・マジメル ほか 
  ピアニスト  
 
 あらすじ ↓
 ウィーン。小さい頃から母親に厳しく育てられたエリカ。
 40歳を過ぎてウィーン国立音楽院のピアノ教授となった今でも母と二人暮らし。
 ある日、エリカは私的な演奏会の席で青年ワルターに出会うが・・・
 
 感想 ↓
 超エリートの音楽学院、1日8時間練習するのが当たり前の世界ですから・・
 こういう独特な世界に属しているというのは、それだけでも想像を絶するプレッシャー
 だろうし、才能を持った子の親も独特です。
 映画の中で登場するピアニストの女の子の母親は、今でいうモンスターペアレント、
 自分の子どものために自分の全てを捧げていると考えている親。
 
 そういう環境の中、ナイーブな音楽家たちにピアノを教える教師が、この映画の主人公。
 彼女は、教師になるまでにきっと、ここに通う生徒たちのように、他のことには
 目もくれずに、ひたすら音楽に没頭した人生だったと想像される。
 
 そして、彼女の母親を見ると・・強烈な圧迫感。子どもに依存し、子どもを縛り、
 40過ぎた子どもを一人の大人(女性)として扱っていない・・
 
 こんな環境で育ったら、病むのは当然。彼女の自分を保つための自虐的ともいえる
 行動は、あまりにも可哀想すぎて、見ていて辛い。

 その中で突如として彗星のように現れるワルター(ブノワ・マジメル)。
 独特な空間の中にあって、他とは違う空気を持っている人。
 
 主人公のエリカは感情は全て音に託し、普段の生活では感情を表さないとうか
 自分の操れる音楽(世界)の中に全て封印してしまっているかのよう。
 それとは逆に、人に対してストレートに感情を現すワルター。
 
 これは、何か波乱がない訳ありません・・・・
  
 以下ネタバレ ↓反転表示

 ピアノを教える途中でエリカがワルターに言います。
 「シューベルトの強弱はとても極端だったのよ。あなたは極端なのが、苦手みたいね。
 シューベルトはとても醜かったのよ。あなたにはわからないでしょうね。」
 
 グサリとくる台詞。でも、的確。そりゃぁ判らないだろうな、あの美しく才能もあるワルターには。 
 鬱積された苦しみなんて・・・
 
 ワルターがシューベルトの音を操れないのと同じように、エリカは結局、ワルターを操れません。むしろ、操られてしまうというか、彼女にとっての絶対的な何かを
 粉々に崩されてしまったような感じ。

 もしかしたら、ワルターもエリカと関ったことで病的になってしまったのかも?しれないな・・
 あんなクワセものだったのか、アイツは・・いや、やっぱりエリカの極端とも
 いえる愛情表現で、あっち側に入ってしまったのかもしれない。
 
 強(エリカ)弱(ブノワ)のぶつかり合いだったものが・・逆転してしまった感じ。
 それは、エリカは・・どうなってしまうんだろうと、嫌~な予感もはらみながらのラスト。

 もう、ラストは・・強烈。 でも他に方法はなかったような・・・

 あのお気楽なワルターを見たときに、何かが崩れてしまったのでしょうね。
 
 彼女はいつものように、自分流のやりかたで、精神のバランスを計りたかったのか、
 それとも、純粋にワルターを失った(操れなかった)絶望感でのあの決断なのか・・
 
 彼女の精神状態が深すぎて、痛すぎて、掴めなかった。 


 しかし、エリカを演じたイザベル・ユペールのあの能面のような表情で、感情を
 現さない演技、物凄いけれど。

 これは、ブノワ!!! こんなブノワ見たことないぞ~(王は踊るも良かったですが)と
 思えるほどの魅力。

 これは、カンヌ納得。すごい映画です。気力吸い取られますが、なんか普通の映画じゃない。
 2、3歩あっち側に足、突っ込んだ感じ。 気力のあるかたのみに、オススメします。





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最終更新日  2008.06.24 09:44:54
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