巻の壱・その6
「そうだな、やっぱ猪突猛進てのがお前らしいよ」澄ました笑みを浮かべながら、先輩が言う。「はい!・・・でも先輩、ハメられた事はチャラにはしませんからね」「へっ、根に持ちやがって」さて、決心したはいいが・・・ん~・・・「さてと」また少し考え事をしている僕を横目に、くノ一が席を立つ。「あたしはそろそろ行くね。」「あぁ、時間取らせてしまったみたいだしな。」「冴羽さんのせいじゃないですよ、このまた何か頭を悩ませていそうなバカ侍のせいですから」何がバカ侍だ、全く。「そうそう、あとで薬師と蛍蟲を狩りがてら、採集しに行くんだけど、同伴してくれるよね?」蛍蟲というと・・・確かあの近くだと稀少な植物や木材があるって話だな。最近、一緒にどこかへ行くことなかったしな。「あぁ、最近一緒にどこへも行ってなかったもんな。付き合うよ」「そうこなくちゃね。」「いつ頃行くんだ?」「多少準備もあるし、酉の刻に那古屋の城門でどう?」「了解」それだけ伝えると、くノ一は風のように去っていった。「じゃ、俺もそろそろ行くぜ」「はい」「がんばれよ、バカ弟子」「う~、先輩もいつまでもバカバカ言わないで下さいよ・・」「バカはバカでも、お前はいい意味でのバカだよ」「なんですか、それ?」「ま、気にすんな。んじゃまたな。たまにはそっちから俺の屋敷にでも顔出せよ」「はい、今日はありがとうございました。」そうして、くノ一、先輩と別れた僕は、一先ず夜盗の駆逐を終えたことを農民に伝えるために、茶屋を後に・・・「お客さーん」ん?「すみません、さっきのくノ一の方、お客さんから代金貰えと・・」・・・・あのクソくノ一!そうして、気づけばかなりの量を食べていたらしいくノ一の代金も支払い、僕は茶屋を後にした。(どーすれば団子代だけで300文も行くんだよ!)