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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:ヨーロッパ映画
≪出張中に変な事するから、ずうっと出張してなくちゃならなくなったパパの話≫ 1950年のサラエボ。6才のマリクはサッカーが大好きな少年。両親と映画好きな兄、そして祖父と一緒に愛情に包まれて過ごしている。しかしある日突然父親ミーシャが逮捕された。実は出張中愛人の体育教師にふと洩らした国家の政治批判が原因だった。 父は収容所へ入れられ、地方の鉱山で強制労働をするはめになった。マリクの母セーナはそんな父の事を、「パパは出張中よ」と子供達に言っていた。 ちょっと調べてみたら、当時のユーゴスラヴィアはチトー大統領の下ソ連の共産主義とは違う路線を歩もうしていたらしい。ただ、やはり密告等ははびこっていて、父親の愛人が密告した相手がミーシャの義理の兄、つまり妻の実兄。愛人は後にその義兄と結婚するという複雑な関係なのだ。 家族を逮捕するなんて、と父親からも兄弟からものけ者にされてしまう兄だが彼は党優先。しかし、彼も叉その事は心に大きな傷を負う事になる。愛人も然り。 マリクの目から見たストーリーなのだが、父親の不在、それに伴う周りの大人達の微妙な変化はマリクにも夢遊病という心の痛手を負わせる事になる。 父親の出張は長く、その出張の途中から家族はサラエボから遠く離れた地方の町で一緒に暮らす事になるが、そこで出会った少女マーシャへの淡い想い、そして別れと、マリクも2年間で少し大人になる。彼女との最後のシーンがジワーッとくる。 ただ、このパパはねー。懲りないというか、冒頭で何となくイヤな奴と思ったが、途中一生懸命に家族を守り見直したのに、叉あれだもの。まっ、もちろん最後は家族の元に収まるのだけど、マリクはどう思ったのか、彼と父親との関係はもう今までのようにはいかなくなる事は確かでしょう。 映像は50年代を意識したのかとても古っぽくて、時代、場所を反映して暗い感じがするが、マリクのポチャッとした無邪気な可愛らしさとヤンチャな感じで救われる。 彼の最後の笑みは何なのか? 1985年カンヌ映画祭グランプリ受賞作品。 1985年 ユーゴスラビア OTAC N'A SLUZBENOM PUTU 監督:エミール・クストリッツァ 脚本:アブドゥラフ・シドウレ 出演:モレノ・デバルトリ、ミキ・マイノロヴィッチ、ミリャナ・カラノヴィッチ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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