|
テーマ:おすすめ映画(4068)
カテゴリ:アメリカ映画
≪暑い夏の日の午後、犬達は牙をむいて狼になった≫
事実をベースにした作品で、私がアル・パチーノを好きになった作品でもあります。 1972年8月の暑い日のニューヨーク。閉店直前の銀行に3人の強盗が押し入るが、1人はすぐに怖気づき逃げてしまい残ったソニーとサルは行員たちに銃口を向け金庫へと案内させる。しかしその日の金庫の残金はわずか1100ドル。途方にくれる二人のもとへ警察から「銀行を完全に包囲した。武器を捨てて出て来い」との電話がかかる。追い詰められた二人は支店長と行員達を人質にした。ニューヨーク市警の刑事の必死の説得にもかかわらず2人の要求通りに事は進んで行き、マスコミや集まった野次馬達からは英雄視され始め、銀行の中では人質との間に奇妙な連帯感も生まれ始める。 身内の誰に聞いても、「そんな事を出来る人ではない。でも最近変だった」と言う言葉が返ってきた犯人のソニー。実父母からもお金を当てにされ、妻子があるにも関わらず男性と結婚したりといろんなプレッシャーから起こした事件なのですが、ソニーは誰のせいでもないこれはおれ自身の責任だと言い切ります。でもそのプレッシャーの要因でもある家族や妻達は、結局あなたを愛していると言いながらも自分の事で精一杯の人たちなのです。孤独を感じながら、そして又同じように孤独なサルと一緒に成功するか死ぬかしかない、と言う状況に陥って遺言状を行員に代筆させるシーンは哀しいものがあります。 無謀で計画性に乏しい銀行強盗。そこを見抜いた人質たちから説教気味に問われたり、強盗犯と人質とのおかしな連帯感。サルの妙に神経質で、ソニーとのやり取りの間の取り方など前半はコミカルに感じられる部分も多くあります。 外へ出て警察と交渉する時は群集たちへ向かって「アッテカ!」の連呼。次第に群集たちもソニーに味方するかのような言動を投げかけます。 しかし最後は今までの連帯感は何だったのか?と言う結末。こちらを見向きもしない人質達。自分がどんなに大変だったか。こんな目にあったのよ。良かった、良かった。と言っているような彼らの後姿を見つめるソニーが又孤独で哀しい… アル・パチーノを最初に知ったのは『ゴッド・ファーザー』でしたが、この『狼達の午後』でのパチーノがより好きです。マイケルとフレドの兄弟がここでは強盗犯になり、ソニーやサルと言った名前に反応してしまったりもしましたが。 パチーノのちょっとした目配り、警官と交渉する際高揚した時の唇、歩き方、母親や妻達と電話する時の苦悩する姿、そのどれもに心惹かれます。そして若い頃のパチーノは本当に美しい。年齢を重ねていく毎にそれに合う役でどの作品も好きですが、この作品での彼は特に好きです。 原題 DOG DAY AFTERNOONの"DOG DAY"とは夏の暑い日のこと。そこを「狼たち」とした所に邦題のつけ方の上手さを感じます。ちょっと負け犬にも感じられるソニーとサルでしたが、負け犬が牙をむいた狼に変身したことを表したのかもしれません。 うだるような暑さと全体にみなぎる緊張感、犯人と人質との間の心理、群集心理、警察との駆け引き、犯人の心理など上手く連鎖させ、それに俳優達の上手さが加わった秀作だと思います。 DOG DAY AFTERNOON 1975年 監督:シドニー・ルメット 脚本:フランク・ピアソン 出演:アル・パチーノ、ジョン・カザール、チャールズ・ダーニング、クリス・サランドン、ペニー・アレン お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[アメリカ映画] カテゴリの最新記事
|
|