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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:アメリカ映画
≪収容所しか知らない少年が、希望を求めて旅に出る≫
これは児童文学として書かれた本の映画化だそうです。 第2次世界大戦後のブルガリア。父親が政治犯としての容疑の為家族から引き離され収容所で育った12歳のデビッドは、ある人の指示で収容所を脱走しデンマークへ向かう事になる。ブルガリアからギリシャへ、そしてイタリアへと孤独な旅は続くが… イデオロギー戦争とでもいいますか、当時ソ連の圧力下にあった周辺諸国も弾圧された人達が警察に捕まったり、収容所送りになるという話はよく聞いていました。今となれば夢のような話ですね。そんな時代に12歳の少年がブルガリアからデンマークまで行かなくてはいけないのです。 最初は何故この少年がこの収容所にいて、指示を受けるある人とは誰なのか、何故デンマークまで行くのか、と謎があるのですが、少しづつその謎が解けていきます。 ギリシャからイタリアそしてスイスへ入るのですが、どの景色も素晴らしく美しくてこの風景を見ることが出来るだけでも一見の価値ありです。 ただ、この少年が持ち出したものと言えば、ある人から渡された手紙、僅かなパン、ナイフ、羅針盤と一かけらの石鹸だけ。一文無しの彼は一度も何も盗みもせず、又さまざまの国での言葉の壁にぶつかるわけでもなく、いろんな事を上手く潜り抜けていくのですが、収容所の生活しかしらない12歳の少年の行動にしては少し出来すぎている感があります。 それに、過酷な収容所での生活のわりには実に品のある(まあこれはどういう生活をしていても生まれ持ったものですからどうこう言えませんが)、お坊ちゃまに見えてしまうのがリアリティに欠ける要素かもしれません。 しかし何も信じてはいけない、誰にもこの事を言ってはいけない、というある人からの指示、そして恐ろしい収容所での生活を経験してきた事を物語る黒く暗い瞳と、笑う事を知らない少年を巧く演じていたと思います。 ラストが急展開であっけない感じですが、これは脱走して一人旅をする過酷な物語と言うよりも、孤独で誰をも信じる事が出来なかった少年が、旅の中で出合った人々により温かい心を取り戻すお話と考えればいいのかもしれません。全体的に物足りない印象は否めないものの、観ても損は無い、という映画だと思います。 新人の子役をカヴィーゼルやブロウライトと言った脇がしっかりと固めた、アメリカ映画とは思えない作品でした。 I AM DAVID 2004年 監督/脚本:ポール・フェイグ 原作:アン・ホルム キャスト:ベン・ティバー、ジム・カヴィーゼル、ジョーン・ブロウライト DVD 本 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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