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カテゴリ:アメリカ映画
全米初のセクシャルハラスメント集団訴訟に勝利した、ひとりの女性労働者の実話をベースに映画化された作品です。 夫の暴力に耐えかねて、父親の違う二人の子供を連れ故郷の北ミネソタの町に帰ってきたジョージー。昔の事が原因で父親との確執、周囲からは冷たい視線を投げかけられる。一人で子供を養うために彼女は賃金のいい鉱山で働き始めるが、そこで待ち受けていたものは… この映画の事噂には聞いていましたが、ひどい!映画の質ではなくて、ジョージーが受けたセクハラが悪質極まりないもの。実際はどこまでが本当だったかはわからないけど、セクハラはもちろん、そこを通り越してまるで虐待。気分が悪くなる程でした。 しかし、ジョージーが入っている簡易トイレを倒すような、まるで子供がするような馬鹿げた事を平気でやる大人の男達に、軽蔑を通り越して哀れみを感じてしまうほど。いくら自分達の職場を脅かすからと言って他の諸々の事を含みここまでやるとは、男性が、女性が云々ではなくて、人間性の問題でしょう。それと地域性。 あんな美人が、いかつい荒くれ者の多い男達の中で働くのは確かに危うい事だし、何もそんな所で働かなくても、と最初私自身も思いました。でも、一人で子供二人を養っていく覚悟のシングルマザーには、あの場所はどうしても必要だったのです。 男性達からのセクハラもさることながら、女性労働者も保身の為にジョージーに協力をしてくれない事も又別のショック。普通多くの女性は、彼女らのような行動を取るのも仕方のないことだとも思います。自分だったらどうするか…やっぱり泣き寝入りなのかもしれません。 でも、それでは前には進めない。やっぱりジョージーは立ち上がったのです。 法廷シーンは、それはないだろう、と思えるような事も多々あり、それほど劇的だとも素晴らしいとも思えませんでした。それよりも家族愛だったり、友情だったりする部分の描き方が良かったと思います。父親のジョージーに対する、そして息子の母親に対する気持ちが、随分とあっさりと変化して行ったところもちょっと物足りなさがありましたが、それを差し引いても感動的なものでした。もちろん、そこに至るにはジョージーの諦めない、強い姿勢があったからこそなのですけど。 シャーリズ・セロン熱演が光ました。一人立ち向かう強い姿の中に時折見せる弱さ、母親としての子供達への眼差し、娘としての父親への思い。しかし、それに負けずとも劣らず脇役が良かった。頑固だが本心は娘を思いやる父親のジェンキンス、二人の間に立つ優しい母親のスペイセク、そして親友役のマクドーマンドとその夫役のショーン・ビーン。特にビーンがジョージーの息子に話すシーンが一番印象に残っています。 そしてもう一箇所。父親が「自分の娘がジョージーと同じ立場だったらどうする?」と皆に問いかけるシーン。結局そこなんですよね。自分がその立場だったら?と問いかけると決して安易な行動や言動は出来ない。私達の普段の生活でもそこが大切なんだと、その場面を観ながら相槌を打っていました。 『クジラの島の少女』と同じ監督なのですね。あののんびりとした南の国のちょっぴりファンタジック話から一転、アメリカの社会的問題を扱っていて、同じ監督だとは意外でした。 実際の法廷論争は10年近くにも及んだとか。しかし、一人の女性の勇気ある行動が現在のセクハラ問題や女性の立場を改善するきっかけになったのだと思います。そういう意味でも、多くの人に観てもらいたい作品です。 NORTH COUNTRY 2005年 監督:ニキ・カーロ 脚本:マイケル・サイツマン 原作:クララ・ビンガム、ローラ・リーディー・ガンヌラー 出演:シャーリズ・セロン、フランシス・マクドーマンド、ショーン・ビーン、リチャード・ジェンキンス、シシー・スペイセク、ウディ・ハレルソン DVD お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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