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カテゴリ:アメリカ映画
≪愛よりも仕事への忠実さを貫いたある執事の物語≫
これは『眺めのいい部屋』の監督、脚本家で、日系英国人作家のカズオ・イシグロ氏の小説の映画化です。 いろんな人に以前から薦められていたのですが、やっと観る事ができました。 物語は1950年代の終わり。イギリスのオックフォードにあるダーリントン・ホール。以前の主ダーリントン卿の時代から執事としてこの屋敷に仕えているスティーヴンは、新しい主アメリカ人の富豪ルイスの下でも相変わらず執事として働いています。かつて多くの使用人たちで溢れていた屋敷も今ではスティーヴンの手にも余るほど。そんな時、かつて一緒に働いていた女中頭のミス・ケントンから手紙が来ます。そこには近況、そして離婚するような雰囲気の内容が書かれていました。ルイス氏の家族ももうすぐ屋敷に到着するし、又有能なスタッフと共に働けるかもしれない、という期待を持って、スティーヴンはミス・ケントンの所へ訪ねる事に。彼は自分の過去を回想しながら旅をします。 執事とはかくあるべき、という行動、言動、全てをここで見ることが出来るのではないでしょうか。スティーヴンは主人に、仕事に忠実な為に、時には非情とも思えるほど自分の気持ちを押し殺し、冷静に行動します。それが執事たるもの、だから。 しかし、自分の半生を振り返ってみた時、後悔もあるのです。 過去の映像が主で、時折現在のスティーヴンスを映しながら、「もしあの時こうしていれば」と言う彼の悔いを垣間見るようで、ちょっとつらい。それは、自分の父親への態度にしても、ミス・ケントンへの想いにしても、ナチ容認派であったダーリントン卿への態度にしてもそうなのですが、自分が信じて疑わなかった行動も、“もしかしたら”今は違う人生を歩んでいたかもしれない、という後悔。 しかし、絶対にわかっていてもそうは出来ないというのは、仕える側の鉄則。 今ダーリントン卿は亡くなり、新しい主人はアメリカ人。いろんな意味で解放されたスティーヴンの心は本当に自由になったのだと思えます。そういう気持ちでミス・ケントンにも会いに行ったのでしょうが、そこでは又別の事情が待っていた。バス停でのシーンはもらい泣きしてしまいました。お互い、わかっているのになぁ…。 過去のスティーヴンの部屋でミス・ケントンに本を取り上げられるシーンも、切なくて心に残ります。 いろんな映画に執事は出てきますが、執事を主人公に、そしてこういう内面を持った一人の執事の役は、正に名優ホプキンスがはまり役。抑圧的なスティーヴンのはずなのに、ホプキンスが演じると決してそうではないと思うのです。 今は亡きクリストファー・リーヴが、ルイス卿で、彼の雰囲気は屋敷に新しい風を運んできた自由な雰囲気が似合っていました。懐かしいです。 執事の仕事へのプライド、そして英国人が階級や伝統にこだわり、縛り付けられる様子がよく描かれている、素晴らしい作品でした。 自分の半生も過ぎ残りの人生の方が短くなってきている。タイトルも趣深く、未読ですが、これは言うまでもなく原作が素晴らしいのだと思います。 THE REMAINS OF THE DAY 1993年 監督:ジェームズ・アイヴォリー 脚本:ルース・プラヴァー・ジャブヴァーラ 原作:カズオ・イシグロ 出演:アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン、ジェームズ・フォックス、クリストファー・リーヴ、ピーター・ボーガン、ヒュー・グラント 他 本 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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