|
テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:アメリカ映画
1968年6月5日、アメリカ大統領のカリフォルニア州予備選挙で勝ったロバート・ケネディ上院議員が暗殺されるまでの16時間前からを、暗殺の場所ロスアンジェルスのアンバサダーホテルに偶然に居合わせた人たちに目を向けて描かれています。 ロバート・F・ケネディは、1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領の実弟で愛称ボビー。ジョン・F・ケネディが大統領在職中に凶弾に倒れ、その後アメリカは「もし彼が生きていたならば…」と言うような、暗い部分へと突入するのです。1968年当時のアメリカは人種差別はもちろん、ヴェトナム戦争、貧困などの問題を抱えていて、キング牧師は暗殺され、人々の間では「ボビーしかいない」という、アメリカの最後の希望だったようです。当時43歳だったボビーが民主党の予備選挙で大票田のカリフォルニアで勝利し、歓喜のスピーチを終えた直後、彼も又、兄と同じく凶弾に倒れてしまうのです。 映画は、そこに居合わせた22人を描いた群像劇です。倦怠期の裕福な夫婦、兵役を逃れる為に結婚しようとしている若者、引退したドアマン、落ちぶれた歌手とマネージャーの夫婦、ホテルの支配人夫婦、不倫相手、厨房のメキシコ人、黒人、LSDでハイになってしまった若者など など。彼らはそれぞれ悩みを持ち、葛藤しながらそこにいるのですが、未来の大統領になるかもしれないボビーの演説を聴き、しばし酔いしれ、悩みを忘れてしまうくらいに高揚し、歓喜の渦の中に引き寄せられているところへ悪夢が…。 当時のアメリカの背景がわかるようなエピソード作りで、当時の映像を交えながら、切れ切れのようでいて、それぞれのキャラクターの背景もわかるように描かれてていると思います。結果は判っているので、ボビーのスピーチの辺りから、これから起こるであろう悲劇を想像しながら画面が進んでいくのを、緊張して観ていました。多くの人のエピソードがめまぐるしく動いているようで、実はそれは最後のクライマックスへ向って行く為のプロローグなのです。何故彼らがこのエピソードの中の人物に選ばれたかが、最後にわかります。 エミリオ・エステヴェスが監督、脚本で、このオールキャスト、親子共演。エミリオもデミ・ムーアの夫役で出ていますが、この人は作り手の方で才能があるのかもしれません。 小学生の頃「勇気あるケネディ兄弟」という本を読んで感銘を受けました。ケネディ兄弟の死には謎も多いし本当に因縁のある一族だとは思うけど、それにしても、もしこの兄弟が暗殺される事がなかったら、アメリカは又違う国になっていたかもしれない、と誰もが思うことをやはり考えてしまいます。現在実際にアメリカはキャンペーン中。もしオバマ氏が大統領になったら人種問題で暗殺されるだろう、と懸念している人は多いようです。そういう声を聞くたびに、アメリカって国は…とよその国ことながら残念に思います。 厨房のフィッシュバーンが壁に書いた文字、そして、ボビーの実際の演説が心に響きます。 BOBBY 2006年 監督/脚本:エミリオ・エステヴェス 出演:アンソニー・ホプキンス、マーティン・シーン、ウィリアム・H・メイシー、シャロン・ストーン、デミ・ムーア、ヘレン・ハント、ハリー・ベラフォンテ、クリスチャン・スレイター、イライジャ・ウッド、リンジー・ローハン、ローレンス・フィッシュバーン、アシュトン・キャッチャ 他 DVD お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[アメリカ映画] カテゴリの最新記事
|
|