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カテゴリ:アメリカ映画
≪信念山をも動かす≫
観終わった感想は上のようなものでした。 これは以前から観たいと思っていた映画で、いつもレンタル待ちでずっと観られずにいましたが、昨日テレビ欄を見て偶然に放映を知りました。 1983年、銀行員の父オーグストの仕事の関係でアフリカで暮らしていた5歳の少年ロレンツォ・オドーネは、父の転勤で今度はアメリカに移り住んだ。しかし、しばらくしてロレンツォの奇行が目立ち始める。検査の結果、副腎白質ジストロフィー(ADL)という難病で生命の宣告をされる。不治の病、医者にも見離された息子の命を救う為に、医学の知識が何もない両親は必死に治療法を探し始めた。 この副腎白質ジストロフィーというのは、簡単に言うとDNA情報の異変によって引き起こされる遺伝子病。血清中の極長鎖脂肪酸の増加によって発症するらしく、その増加を抑える事が大切なのだと気づいたオドーネ夫妻は、抑えるためには何がいいのかを独学で調べます。そしてたどり着いたのが、俗に言う『Lorenzo’s Oil』です。 この映画は両親オドーネ夫妻がそのオイルを見つけるまでの、そしてその効果を見るまでの実話の映画化作品です。 この病気は、女性は異常遺伝子の保有はするけど発症することなく、母親が保因者で息子に遺伝し発症する。体内の長鎖脂肪酸を代謝する酵素が先天的に無いので、脂肪酸が神経細胞に蓄積し、最終的には神経系が機能を失い死に至る難病です。かなり医学的に難しいのですが、映画ではその説明もわかり易く、観ているだけで自分なりにある程度理解できました。 父親役のノルティ、母親役のサランドンの演技はもちろん素晴らしかったのですが、ロレンツォ役のザックくんが、本当に、何と言っていいか、そこに彼ロレンツォがいるようで、心が泣いてしまいそうでした。 この作品が云々と言うよりも、実際にオドーネ夫妻の執念とも言うべき姿に多くを感じました。母親の、時にエゴの塊のような姿を見るに忍びない。しかし、あの姿にも理解できます。息子の憎き病は自分の遺伝子がもたらしたもの。自分の姉妹の子供達に発病していないことなど、罪悪感にさいなまれるのも、息子を必死で守り抜くのにそれを少しでも否定するもの、人はいらない、と思うのも無理はないのです。 一方医者、研究者に任せるより他ないと思っている家族会の会長夫妻。彼らは苦しむ息子の最期を見たからこそ、患者の命を延ばしても苦しめていいものか、と問いかけます。彼らの気持ちも又理解できます。 研究者、医療の現場に任せておけば臨床実験がいつになるかはわからない。そんな事をして何年も待っている間にも息子症状は悪化している。焦り、不安、そういうものが入り混じる中で、信念を持ち続けたオドーネ夫妻。そして、効果をもたらす所までやり遂げた。これは親だからと言ってみんなが出来る事では決してないのです。どんなに子供に対する愛情があっても、あそこまでやり抜けるかは。そこをやり抜いた彼らに、ただただ感服します。映画もそのあたりを決してお涙頂戴ではなく、夫妻の格闘する様子は、時には緊迫感を持ったサスペンス映画のようにも感じられました。 現在の『Lorenzo’s Oil』ですが、神経症状が出てしまった患者に対して、進行を止める、改善すると言う意味での効果は難しいというのが実状だとか。 そして、現在のロレンツォの事が気になってちょっと調べてみました。彼は2007年5月29日に29歳の誕生日を迎えたそうです。今年30歳になるのですね。多くの科学者、医療従事者のおかげで彼はここまで来ました。だけど、その人たちを動かしたのは言うまでもなく、ご両親の愛情があったからこそ。そして、その愛情にロレンツォは応えたのですよね。 彼の母親ミケーラは2000年にガンで亡くなっているようです。ロレンツォをおいて逝くことは、どんなに辛かったでしょう。 多くの難病が存在する現代。医療、科学の現場の実状も描かれていて、もどかしさも覚えました。 LORENZO’S OIL 1992年 監督:ジョージ・ミラー 脚本:ジョージ・ミラー、ニック・エンライト 出演:ニック・ノルティ、スーザン・サランドン、ザック・オマリー・グリーンバーグ、ピーター・ユスティノフ、キャスリーン・ウィルホイト、マドゥカ・ステディ 他 DVD DVD ロレンツォのオイル 命の詩 【ユニバーサル・セレクション 1500円 第4弾】 (4/10 発売予定) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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