捨ててしまったあの人の日記の、特に最初の頃は「癌」でも「ガン」でもなく、

　　　　　　　「cancer」と書かれていた。

　　　　　　　”検査の結果は、ステージ4のcancerとのこと”というふうに。

　　　　　　　やがて確実に自分の命を奪う「がん」という病の名を、

　　　　　　　心理的に書きたくなかったのかもしれない。

　　　　　　　　　　　「どうしてガンて、”いかにも”な感じの響きがする名前なんだろね。

　　　　　　　　　　　こう…もっとかわいい名前にしたらいいのに。”ぽん”とかさ」なんて彼が言うから、

　　　　　　　　　　　「ははは…いいね～それ」なんて笑ってたんだけど、ガン告知されて衝撃を受けない人などいない。

　　　　　　　　　　　まだ30代だった彼にとって癌の告知は、冗談じゃなく「ガーン！」という衝撃だっただろう。

　　　　　　　　　　　「衝撃」という点では本人だけでなく、知らされた周囲の人間も皆同様で、

　　　　　　　　　　　擬情語で表現するならやはり「ガーン！」かな。

　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　私には短かった。二年間は本当にあっという間だったけど、

　　　　　　　　　　　　　　　　闘っていたあの人にとってはどうだったろう。

　　　　　　　　　　　　　　　　それから私に流れた時間が長くて長くて長くて、飽きてしまった。本当にこの余命を、

　　　　　　　　　　　　　　　　まだまだ時間が欲しいのに叶わない人にシェアできたらいいのにと心から思う。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　もうすぐ行くので、その時どこかで迷っていたら、後ろからむぎゅ～でよろしく 。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その腕があるのかどうかは知らんけど…

★　Sasha Sloan - Dancing With Your Ghost　　★