さて、今日の千秋ちゃんは・・・?
< 終身パートナー検索します >その2 ・ されど温泉郷 (9) 新築の、箱庭のようなその家は、木や塗装の臭いを残したままやはり林の中に 忽然と建っていた。ただ周囲に広い空き地が確保されているのが救いだった。きっとこれから 少しずつ整備されて行くのだろう。良く解釈しよう。約7,000ヘクタールの民有林の一部はこのブタ男が所有しているのだ。信じられないが事実だった。祖父母が開拓使として本州からこの地に渡ったと言う。皆が木を切り、根株を掘って、真剣に牧草地や畑地を耕している時この男の祖父母や両親の代では 何をしていたのだろう。木を残したからと言ってキノコを栽培している風もないのだ。自然保護団体からは 表彰されるに違いない。 一番安い予算で、ローンなしで建てた、と男が自慢するその家は夢に見た 床の間のある和室すら見当たらない。台所と一体になった10畳ほどの居間は千秋の住むマンションよりも粗末な代物だった。ベランダもなく、南向きの高窓の辺りに手入れされずに伸び放題の観葉植物が無造作に置かれてある。天井まで伸びて、つかえて首が曲がっている。根元で枯葉が数枚、惨めに朽ちかけている。まるで・・・お化け屋敷だ。―― こ、これが~、自然を愛する、と言うことなの ――家具らしきものも見当たらない。中央に 980円くらいで売っていそうな折り畳みのテーブルがポツンと置いてあった。寂しい。男やもめにウジ新築でも・・・やっぱりウジだ。帰るのなら今だ!もう、良いではないの、千秋。さあ、帰ろう!!そかし・・・・「はいんな」男の短い言葉に 千秋は操られたように居間に上がるのだった。居間に通された千秋は、テーブルを挟んで男と向き合った形で座った。―― ローン組んでもいいからもっとマシな家建てろよ ―― 台所に、ふっと若い女の子が現れた。インスタントラーメンを作り始める。娘は交通事故で死んだ、と言ったはず・・・。女の子は千秋に麦茶を入れてくれた。精一杯のおもてなしである。「父さん、買い物に行ってくるね」そう言うと、女の子は軽自動車で出かけて行ってしまった。ブタ男は、チラッと流し目で女の子を見送って「アルバイトの女の子だよ。もう、今月で契約切れる。また、新しい子、募集しなきゃなんない」と言った。―― あんな可愛い娘が、あのみすぼらしいウシ小屋でアルバイト!?――「でも、父さん・・・って」「ああ、アルバイトの子は、皆、オレの事そう呼ぶんだ。みんな、内地から来るから、千歳の飛行場まで送り迎えするんだ」可愛そうに・・・もし、それが本当なら千秋のように勝手に素敵な妄想の世界で夢を描き北海道の大地に憧れてやって来たに違いない。現実のギャップを見てどれ程のショックを受けたことか・・・・ ブタ男の目が気のせいかギラギラして来た。分厚い唇が唾液で濡れて光って見える。今にも 吸い付かんばかりに思えるのは千秋の思い過ごしだろうか・・・。「うちの庭に、温泉湧いてるんだ。将来、温泉、作ろうと思ってる。家の前の道も、近々拡張される。そしたら・・・・etc」先ほどまでの無口な男とは思えないほど、急に喋り出した。あ~やって、こ~やって・・・夢を語り続ける。「牛舎は、建て替えないんですか?」千秋は、言葉の合間を縫って問いかけた。「いや、まだまだ、収入が足りない。2千万は行かないとダメだ。ウシも、もっと飼わないといけない」―― 温泉の夢より先に、牛舎ではないの?大切な収入源でしょ。ウシさん、可愛そうだから、無責任に増やさないで ――ブタ男の目は 千秋を凝視し、ますます鋭く、ギラギラと不気味な光を放ち上目使いになる。口調はいたって穏やかだが、高ぶりは隠せない。怪しい気配が否応なしに漂って来る。それは紛れもなく50代の男として最期にもてるエネルギーが凝縮された欲情にも似た危険なオーラを発進させている。今にも襲い掛かってきそうなまさにスタートラインで待機中のランナーのように・・・・( つづく ) 千秋、危ないよ~逃げようよ~ということで・・・また クリスマス準備に行ってきま~す~ 精神的に立ち直ったらやっぱりランキング参加してる方が楽しく感じられまして~~再び登録です~気まぐれ、ですので~~よろしかったら、また、ポチ! お願いしますね~~