2103150 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

のぽねこミステリ館

のぽねこミステリ館

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

のぽねこ

のぽねこ

Calendar

2024.07.06
XML

島田荘司『改訂完全版 御手洗潔のダンス』
(島田荘司『島田荘司全集IX』南雲堂、2024年、5-219頁)


 御手洗潔シリーズの短編集です。
 3編のミステリに加え、ボーナス・トラック「近況報告」の4編が収録されています。
 それでは、簡単に内容紹介(2007.02.24の記事をほぼ再録)と紹介を。

―――
「山高帽のイカロス」1982年5月。御手洗たちの事務所へ、一人の青年が訪れた。空を飛ぶ人ばかりを描き、自分自身も、自分の別居中の妻も空を飛べると語っていた画家、赤松稲平が失踪してしまったという。赤松とともに飲んだ夜、赤松は具合が悪そうで、いつもかぶっている山高帽を忘れて帰ってしまった。そこで、帽子を彼のアパートにとどけたが、ドアは内側から鍵がかけられていてあかない。しかし、中から声は聞こえる。心配するうちに声が聞こえなくなり、体当たりしてドアをあけると、そこには誰もいなかったという。
 数日後、赤松の遺体が発見される。彼のアパートの部屋(四階)よりも高い位置にある、部屋の近くの電線に乗っていたのだった。まるで、空を飛んでいたかのように、両手を広げて。

「ある騎士の物語」石岡の先輩である秋元静香と、その友人である4人の男性が15年前に経験した事件について、石岡は話を聞く。事件の数年前から、藤堂という商才のある男とともに、4人はクイックサービスという、いまの宅配便のはしりのような仕事をはじめた。四人は全員バイクが好きで、その腕を仕事にいかしたのである。藤堂に秋元静香という恋人もでき、秋元の弟もクイックサービスで働き始め、生活は順調だった。しかし、秋元の弟が暴力団関係者に殺されてしまう。時を同じくして、藤堂が失踪した。藤堂の裏切りを憎み、秋元は彼を殺したいと切望する。藤堂に渡るはずの拳銃を手に入れた秋元は、それを藤堂に渡しに行って殺すというが、約束の時間に、彼女も、四人も藤堂と会えるはずがなかった。にもかかわらず、藤堂は銃殺されていたという。

「舞踏病」198811月。おでん屋の主人が、御手洗のもとを訪れた。主人は、一月70万円と2階のトイレ・バスの工事費を払うから一ヶ月だけ老人を二階に住まわせて欲しいという奇妙な依頼を受ける。悪い条件ではないため、老人を住まわせたのだが、老人は夜な夜な踊り出すというのである。さらに、依頼した男―老人の息子という―は、仲間とともに、毎日何度も老人のもとを訪れる。気になった主人が隠れて話を聞くと、毎回のように、「例のものはどこだ?」と老人に聞くのだという。このことに興味をもった御手洗は、さっそく調査に乗り出す。

「近況報告」1990年現在の、御手洗さんの様子を石岡さんが語るボーナス・トラック。なぜ東京に住んでいるのか、趣味、部屋の間取りなどなどが紹介されます。
―――

 本作を読むのはトータル3回~4回目になると思いますが、前回の記事が2007年ですので、17年ぶりの再読となります。
「山高帽のイカロス」は謎の提示も伏線の妙も抜群で、きれいな謎解きが楽しめる作品。
「ある騎士の物語」は感動的な話という印象を覚えていましたが、どちらかといえば後味が悪い作品でした。
「舞踏病」はあまり覚えていませんでしたが、奇妙な踊りを踊る老人や、男の不可解な行動と、どれも興味深い謎で、物語に引き込まれます。
「近況報告」は、全集版あとがきによれば、同人誌の作者たちにあてたメイルのような感覚で書いた作品とのこと(819-820)。御手洗さんの戦争への思いなど、ある意味では今回の再読で一番興味深く読んだ作品です。
 事件の時代背景は1980年代と40年近く前のことですが、ミステリとしては今なお古さを感じない、面白い作品集です。

(2024.06.22読了)

・さ行の作家一覧へ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2024.07.06 12:51:01
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(さ行の作家)] カテゴリの最新記事


Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

My favorites♪ torezuさん
姫君~家族 初月1467さん
偏った書評ブログ mnmn131313mnmnさん
海砂のつらつら日記 kaisa21さん

Comments

 のぽねこ@ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
 シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
 のぽねこ@ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

© Rakuten Group, Inc.
X