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2024.07.20
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島田荘司『改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木』
(島田荘司『島田荘司全集IX』南雲堂、2024年、395-809頁)


 御手洗潔シリーズの長編第4作(島田荘司さんの全集版あとがきによれば、「御手洗新作第三弾」。『異邦の騎士』はデビュー前の習作のため)です。
 それでは、内容紹介(2006.01.09の記事をほぼ再録)と感想を。

―――
 1984年。石岡和己が、まだ​『占星術殺人事件』​と​『斜め屋敷の犯罪』​しか発表しておらず、御手洗潔の名前がそれほど有名ではなかった頃。石岡本人に、女性から電話があった。読者だという彼女は、初対面で収入などを聞いてきて、石岡にはその意図が分からなかったのだが、その後、彼女が結婚したいと思っていたという男―藤並卓が、奇妙な状況で死亡したことをニュースで知ることとなる。
 台風が過ぎたある朝、暗闇坂の下にあるおもちゃ屋の主人が、暗闇坂の上の方にある藤並家の洋館の屋根の上に、人間が座っているのを発見する。卓の死体だった。
 目立った外傷はなく、警察は心不全ということで片付けようとしていたが、御手洗は不審な点を指摘し、事件に注目する。被害者の死亡推定時刻に、彼の母親が、藤並家敷地内に生える巨大な楠の下で、頭部を強く打って倒れていたこともわかる。
 この楠には、様々な噂があった。枝にぶらさがるずたずたになった少女の死体。洞に耳をあてると、楠が食べた人々の声が聞こえ、死体も見つかるという。
   *
 戦後しばらく、藤並の敷地には、外国人のための学校があった。創立者は卓たちの父親、ジェイムス・ペイン。卓の死体が座っていた屋根には、もともとにわとりの像があった。その像も、事件を境に行方がわからなくなっていたのだが、この像は、羽を動かし、またそれと同時に、音楽を奏でる仕組みになっていた。ペインは非常に規則正しい生活をしており、毎日正午にこれを鳴らしていた。この行動にも御手洗は意味を見出していく。
 また、殺した少女を壁に塗りこめたというおとぎ話のような奇怪な物語を手掛かりに、御手洗たちはペインの故郷であるスコットランドにまで向かうことになる。
―――

 前回の記事が2006年ですので、18年ぶりの再読です。いやはや、何度読んでも面白いです。
 残酷な刑罰の話(ノベルス版にあった関連図版は、今回の全集版にはありません)や、巨大な楠にまつわる惨たらしい事件などなど、ぞっとするような描写も多いですが、「人喰いの木」の様々な謎や冒頭の奇妙な死、おとぎ話のような事件と、多くの謎が提示され、そしてそれらが論理的に解明されていく流れが鮮やかで、物語にぐいぐい引き込まれます。
 事件関係者への御手洗さんの優しさもうかがえる、素敵な物語です。

(2024.07.02読了)

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Last updated  2024.07.20 12:08:27
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