米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』
~創元推理文庫、2024年~
<小市民>を目指す小鳩常悟郎さんと小佐内ゆきさんが活躍する小市民シリーズの四季四部作最終巻です。
受験を前にした冬、たい焼きを買った小佐内さんに付き合って、堤防道路を歩いていた小鳩さんは、車に轢かれてしまいます。
一命をとりとめた小鳩さんですが、お見舞いに来た堂島さんとの会話から、3年前―中学3年生の頃、同じ道で、同級生が同じように車に轢かれた事件を思い出します。
轢き逃げ事件の真相を解明しようと動き始めた小鳩さんは、そのときに小佐内さんと出会います。そして2人で事件の捜査を進めるのですが、一本道の現場、轢き逃げした車の進行方向にあるコンビニの防犯カメラの映像には、なぜか轢き逃げ車両は映っておらず…。
3年前の事件を回想する小鳩さんですが、一方、小佐内さんは、今回小鳩さんが轢かれた事件の捜査を進めていて、小鳩さんが眠っているあいだに、メモを残していきます。
小市民になろうと決めたきっかけの事件と、今回の事件の真相は……。
四季四部作最後の事件にして、二人の出会いの「エピソード0」も描かれる豪華な物語です。
ちょっと書きにくいですが3年前の事件に引き込まれているうちに、現在の事件も急展開するという仕掛けもあって、驚きが味わえます。
このシリーズは最初からビターな印象が強く、本作ももちろんビターな要素はありますが、ラストのどこか切ない味わいもあり、コミカルな掛け合いもあり、全体を通して楽しめました。
(2024.07.05読了)
・や・ら・わ行の作家一覧へ