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2006年10月13日
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カテゴリ:ショートショート
 

 

 

 

  突然の電話のベルで起こされた。

 まるで闇を切り裂くような、けたたましい

 音にたたき起こされたのだった。

 私は枕もとのスタンドライトに手を

 のばして、とにかく明かりを点けた。

 目覚まし時計を見ると、12時すぎだった。

 こんな時間にいったい誰なんだろう。

 半分寝ぼけまなこで受話器をとった。

 「すみません、こんな夜分に。

 Aさんにたのまれまして。

 ちょっとAさんに代わりますから」

 聞きなれない女の声だった。

 Aというのは、私の学生時代の婚約者だったのだ。

 それで、私はすっかり目が覚めてしまった。

 「俺だよ、あの頃はよかったなあ」

 その声は、3年前と変わってはいなかったが、

 かなり酔っ払っているのか、ろれつがまわらなかった。

 私は絶句した。

 死ぬの生きるのとさわいだあげくに別れた元の

 婚約者から、今頃になってあまりにも唐突な

 電話だった。

 それも、よりにもよって、私が結婚してまだ

 3ヶ月そこそこだというのに、こんな電話を

 してくるなんて、どういう神経なのだろうか。

 「困るわ、今頃になって」

 それだけ言うと、私はあわてて電話をきった。

 その当時は、携帯はもちろんコードレスも

 なかったから、場所を変えて話すことが

 できなかった。

 「誰からの電話?」

 案の定新婚の夫にそうきかれて、

 「間違い電話よ」

 と、とりつくろったものの、私は心臓が凍りつくかと

 思えるほど、どきりとした。

 それは、忘れたはずの過去からの悪魔の声の

 ように、思えてならなかった。

       (完)

 






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Last updated  2006年10月13日 13時12分28秒
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