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カテゴリ:ソ連・ロシア映画
ロマン・カチャーノフ監督の1967年~72年に製作された短編アニメーションを三本観ました。 どれも一遍が10分で、DVD『ミトン』に収録されているものです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ミトン」 犬を飼いたくて仕方ない小さな女の子アーニャは、雪道で赤い手袋を子犬に見立てて遊び始めます。すると突然、その手袋が本当の子犬に生まれ変わるのでした―― 小さな子供とその母親の何気ないやりとりをファンタジックに描きます。 台詞のない人形アニメーションでありながら、ぬくもりを感じてほのぼのとさせてくれます。 女の子の犬が欲しくてたまらない気持ち、優しい気持ちがすごく伝わる。 真っ赤なミトンが、突然子犬に生まれ変わって動き出すという、なんとも微笑ましい小品でした。 毛糸の質感が見た目にもぬくもりを感じます。 粘土を使うクレイアニメーションとはまた違い、使う素材によっていろんな表情を楽しめるのもいいところですね。 ミトンが子犬に…それはつかの間の夢でした。 けれど、少女には確かに見えている大切な子犬。 そっとミルクをあげるその姿は、お皿と小さなミトンなのだけれど・・・ ものを何かになぞらえて遊ぶこと、幼い頃には誰でも一度はしたはず。 懐かしい気持ちになります。 「ママ」 小さな坊やを一人寝かせ買い物に出かけたママは、いろいろ悪いことを想像しては、坊やが気がかりで・・・。 背景にはモノに乏しく行列しないと商品が買えなかった当時の社会情勢があります。 「ミトン」に比べてちょっと暗く、当時のソ連の様子を垣間見るような小品でした。 こちらも無声ながら、テーマである母親の愛はいっぱいに感じられました。 買い物の列に並んだお母さんは、家で寝ている坊やが、泥棒に襲われてはいないだろうか、窓を開けて危ない目にあってはいないだろうか・・・ そう、心配でなりません。 この気持ちすごくわかる。 悪いことを想像したら、いても立ってもいられないほど。列はまだ長く、何度も何度も時計を覗き込むママは、思わず悪い出来事を想像してしまうのでした。 カミソリをいじり、泥棒に襲われ、窓から落ちそうになる坊や! どれもリアルに描かれてるので、ママの留守中、坊やがひとりしてる悪さかと思ってしまったのは私です・・ 親の知らないところで、子どもはじつはこんなことをしていたりして――という内容かと。 それはとんだ履き違えで、母が帰って、坊やの無事を確認したとき思わず流れる安堵の涙があまりに純粋で清いので、上のような解釈をしていた自分にエンガチョでした。 母の人形が青白くて不気味なのが、ちょっとこわい。 とてもハラハラする作品です。 「レター」 先の作品より更に暗く切なくなってくる物語。 戦地に赴いた父からの手紙が突然送られてこなくなり、手紙を楽しみにしていた少年と母親は不安を募らせますが…。 全体に不安な気持ちを増す青い色使いで、母と子の悲痛な思いと安堵を描いた作品でした。 こちらも国柄や時代を感じさせる重さがあります。 楽しい気分で観る子供向け作品にはとどまっていない、大人が見ると胸に詰まるような、そんな作品。 この悲壮感、「ミトン」で温かくなった心が急降下でした。 沈み込んだ母は、子どもの面倒をみるどころではありません。 少年はふとベランダから切り離されて飛びだしたテラスに乗り、橋に佇んでいるお母さんを家につれて帰る――というなんとも幻想的で象徴的でもある物語でした。 ついに、二人の元へは元気なお父さんからの手紙が届き、安堵感でいっぱいのハッピーエンドではありますが、今では作られないような切実なテーマ性にハッとさせられるかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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