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行きかふ人も又

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2007.09.06
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カテゴリ:スペイン映画


  事故で四肢麻痺となった主人公ラモンが、法律では認められていない尊厳死を求めて闘う姿を、周りの人々との交流を含めて描き出すヒューマン・ドラマ。
実在の人物、ラモン・サンペドロの手記を元にしています。

人の介助がなければなにもできない自分を、26年間ベッドの上で見つめてきた主人公が、今の生き方は尊厳がない――そう宣言して死を選んでも、許せる気持ちになりました。
誰よりも自分を見つめた上で望むなら、どこの誰が来てなにを言おうとも、決心が揺るがないのは当然です。


家族や友人を愛し、愛され、甥っこを我が子のように慕ってきたラモン。
車椅子にすがって希望にすがって生きるのはいやだ・・・
そう言って彼はベッドの上で26年間を過ごすのです。

裁判を見て、同じ障害を持った神父が言います。
「生きろ」
ほとんどの人間が、同じように、生きて欲しいと願います。
どんな障害があろうと、頑張って生きている人がたくさんいるのに、ラモンの言い草は許せない―――そう感じる人も多いのかもしません。
でも自分が同じ立場なら、辛抱のリミットが、26年という歳月できっと来るだろうと、思えてなりませんでした。


車椅子を拒否したのは、間違った選択のように一瞬思えます。
けれど、もし外へ出ていても彼は変わらなかった気がしてなりません。
誰かの手を借りなければ何も出来ない、そのことに変わりはないから。
ラモンにとって、その虚しさは、変わることがない現実でした。

尊厳死は、彼の人生において、逃げではないはず。
頑張っている人に対して失礼だとしても・・・・
26年は本当に長い。
もう頑張った、ここまででいい。そう思えるほどラモンは頑張って生きたのだと、伝わる描き方になっていました。


裁判を手伝うという女性弁護士フリア(ベレン・ルエダ)は、登場から何かを抱えていることがわかります。
ラモンと心を通わせ、自らも病に侵されていることが皆に知れる展開。
脳血管性痴呆症という、彼女も不治の病で、「一緒に死のう」と約束するに至るまで、揺れる男女の心が繊細に描かれていました。


終盤、裁判に負け、合法的に死ぬことはできなくなったラモンは、結局、理解ある友人の手を借り、青酸を飲んで死ぬことを決意します。
彼を支えてきた家族の面々が、死に場所となる部屋へと旅立つラモンを見送る、その辛い場面に泣けてきました。
そして、共に死ぬ約束のフリアが夫の説得に負けて生きることを選んだ時・・・一人になってしまったラモンの悲しみが胸にせまります。




‘尊厳死’を実行したラモンと、絶望的な未来でも家族のため生きることを決めたフリア。
どちらが幸せだったのかは、もちろんわかりません。
ただ私には、ラモンが家族や友人に愛されていたからこそ、自殺を許し手伝ってもらえたのだと思えます。
愛されていたから死ねたのでしょう。

フリアはラモンほど、家族に愛されていたのでしょうか。
それもわかりません。
生きて、痴呆の症状が進行し、記憶を失くしても、愛してくれる人のために生きる、それはわかる。
でも自分の尊厳は?
その‘尊厳’というものさえ、分からなくなっても?
人間は、自分以外の人の為だけに、生きていけるものなのか、考えさせられる作品でした。



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監督・音楽 アレハンドロ・アメナーバル
製作総指揮 アレハンドロ・アメナーバル 、フェルナンド・ボバイラ
脚本  アレハンドロ・アメナーバル 、マテオ・ヒル
出演  ハビエル・バルデム 、ベレン・ルエダ 、ロラ・ドゥエニャス

(カラー/125分)









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Last updated  2007.09.13 10:22:10
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