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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:スペイン映画
カナダのとある町、誰とも言葉を交わすことなく、ひたすら工場で働くハンナがいた。 ある日、働き過ぎが問題となり、無理やり1ヵ月の休暇を取らされたハンナは、宛てもなく長距離バスに乗り込む。 旅先でひょんなことから、看護師を必要としている男と出会った彼女は、海に浮かぶ油田掘削所でジョゼフという男性の看護をすることになるのだった――― お世話になっている、ベティさんおすすめの作品です。 「死ぬまでにしたい10のこと」が記憶に新しい、サラ・ポーリーとイザベル・コイシェ監督コンビ。 サラは子役からの女優さんで、本作では「ドーン・オブ・ザ・デッド」「死ぬまでにしたい10のこと」をしのぐ演技で好演していました。 掴み所のない、不思議な物語の始まり、そして次第に明らかにされる、主人公たちの苦しみ・・・ 重い主題を、あまり重苦しくせず、さらりと描いていくタッチは変わりませんでした。 ただ、主人公の過去は謎めいていて、いざ秘密が明らかになるまでは、暗く意味深。 海上の孤立した場所は逃げ場がなくて、彼女の心のように寂しげで寒々としています。 孤独に黙々と働いてきたハンナは、なぜ、看護師の仕事を引き受けられたのでしょう。 看護師として立派に役を果たせるというのに、なぜ何年も、工場勤めに甘んじてきたのでしょう。 大火傷を負ったジョゼフの看病を通して、過去の秘密が明らかにされていきます。 そして、ジョゼフもまた、怪我のワケを自らの過去を、彼女に知られるときがくるのでした。 秘密を話せる相手は、信頼できる人――― ジョゼフは、少しずつ彼女の嘘を見破り、心を解きほぐして、互いの気持ちを通わせていきます。 そのやりとりは温かくて微笑ましいものでした。 男と女の機微、女性の監督さんらしさが、でていると思います。 頑なだったハンナが、ジョゼフにだけ心を開いていったのは、きっと彼の目が見えないから。 素顔を知られたくなかった、目を見ては言えなかったことも・・・彼には安心して告白できたのでしょう。 もう会うこともないと思っての告白・・・・ 秘密がどれだけ重くても、たじろいでも、一切を引き受けようとしたジョゼフの強さが素晴らしかった。 クロアチアが出てきたとき、一瞬、その飛躍に驚いたけれど、それでも大きな大きな辛い過去として、彼女が背負っているものがズシンと心に堪えました。 同じ女性としてもそうですが、カウンセラーが言った言葉はそのまま、現実の問題として提起されていたようです。 だからといってプロパガンダ映画としてではなく、ひとりの女と男の再生の物語として、私は観たいなと思いました。 演技派ティム・ロビンスのジョゼフ役は素晴らしかったです。 その存在感に負けないサラ・ポーリーはさらにすごい。 不思議な幼い女の子のナレートが、謎を残しますね。。 あんなことがなかったら、普通に生まれてくるはずだった娘の言葉だったのでしょうか・・・。 分かりませんが、ハンナが幸せになれたとき、去っていくその声が、正体不明なのにわけもなく切なかったのは、たしかです。 監督・脚本 イザベル・コイシェ 製作 エステル・ガルシア 製作総指揮 ハウメ・ロウレス 、アグスティン・アルモドバル 撮影 ジャン=クロード・ラリュー 出演 サラ・ポーリー 、ティム・ロビンス 、ハビエル・カマラ 、エディ・マーサン スティーヴン・マッキントッシュ 、ジュリー・クリスティ (カラー/114分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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