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2008.09.30
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カテゴリ:ソ連・ロシア映画

 いままで鑑賞した2作品が無性に眠気を誘ったタルコフスキー。作品自体は好きだった。三本目のこちらは案外眠くならず、しかもしっとりと胸に響いてくる、タルコフスキーの自伝的な作品。
母の思い出、妻への愛と別離、戦争・・・意識下の過去と現在の心象風景が、水と火をモチーフにした幻想的なイメージで綴られる。

カラーとブルーがかったモノトーンが、シーンによって使い分けられている。夫婦の出会いから別れを、時間を遡って描く主題のほかに、少年の頃の思い出や、母親の記憶や、古い記録映画の映像を挿入した、監督自身の物語。ノスタルジーと家族への思いに溢れている。
初めてタルコフスキーを観たとき観念的であると教えられてから、この言葉以外に適当な表現が浮かばなくなってしまった。とにかく観念の世界。心象を描くのでとりとめがないけれど、ほかにはない魅力が映像の端々にある。

幻想世界を彷徨っているのに、時々ありありと感性を刺激されるから面白い。目を見張る映像が美しい。火と水、とくに多用される水のイメージは大きい。自分も持っているアニミズムの思想にしっくりと同化していく感じが、心地いいのかもしれない。
どんな人も感情も自然の中の一部分――そういわれているみたいで、自然と同調していける確かな包容力があった。飛びきりの悲劇だって、死に直面したって、何かに守られているような根本的な温かさがタルコフスキー作品にはあるみたい。冷たい雨が降りしきっていても、人の温かみを感じて。

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本編のなかで、ロシアのことを考察したシーンが印象的だった。
プーシキンの手紙の一節をつかったシーン。たぶん監督自身の少年時代を描いた場面で、その少年は朗読する。
「ロシアは歴史的に無価値・・・教会の分裂は欧州からロシアを引き離した・・・他のキリスト教国とは全く異なるキリスト世界を形成した・・・・」云々。
確かに、広大なロシアは欧州であって欧州でないような感じがする。歴史に疎い私には、ロシアの歴史上の存在位置さえわからない。
監督はプーシキンの手紙を引用して、そんな微妙な位置にある祖国を描きたかったのかもしれない。そしてそれこそが自らが生きた国であって、ロシアンカラーに染まっているのだから面白い。

ほかにも本編で使われる印象的な詩は、詩人である監督の実父のもの。朗読は監督が務めている。もう忘れてしまったけれど、いい詩だった。ロシアには有名な詩人や文豪がたくさんいて、凍えた大地が生んだそれらの作品を、フト手にとってみたくなるような、そんな余韻があった。

死ぬまでに観たい映画1001本



監督  アンドレイ・タルコフスキー
脚本  アレクサンドル・ミシャーリン  アンドレイ・タルコフスキー
撮影  ゲオルギー・レルベルグ
音楽  エドゥアルド・アルテミエフ
出演  マルガリータ・テレホワ  オレグ・ヤンコフスキー

(カラー/106分)







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Last updated  2008.10.16 21:23:58
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