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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:ドイツ映画
表現主義の代表作と評される、陰鬱で捻じ曲がった奇妙な古典の名作。 脚本を書いたのはチェコ出身の詩人ヤノヴィッツと、オーストラリア人の役者兼漫画家C・マイヤー。どちらか一人か、二人揃ってか、軍医だった一次大戦のとき、精神科医に嫌な思いをさせられたとか。それで精神科医を思い切り皮肉った脚本が出来上がったのだそうだ。 このままではまずいと後付けされた冒頭とエンディングのオチが、余計に不気味な後味を残す結果となった、面白い作品。 北ドイツのとある町。フランシスは友人アランと共に、カーニバルで見世物小屋を出しているカリガリ博士の『眠り男ツェザーレの予言小屋』を覗く。アランがふざけて尋ねた自分の寿命に、「明日の朝」と答える眠り男。翌日・・・アランは本当に何者かに殺されて死ぬ。フランシスは殺人の謎を追うのだった―――。 1919年とは思えないほど良くできている。構成だって見事で、フランシスとアランが恋する女性をうまく登場させて、古典映画特有の緩慢さを感じず飽きない。怪しきカリガリの正体が分るラストは、何も知らないと本当にサプライズだ。 フランシスが犯人と睨んだカリガリの後をつけると、精神病院に辿り着き、院長室に乗り込むと・・・。 ここからはご覧になってからのお楽しみ。 夢遊病者を使って実験を重ねた伝説のカリガリ博士。そのカリガリに成りきり事件を重ねていた男。 彼の異常な心理と行動は、今の時代でさえ通用する普遍のものだ。なにかに魅了され周りが見えなくなると人間は過ちを犯すことがある。現代に置き換えれば、研究に没頭するあまり、命を命と思わないで度の過ぎたクローン実験に夢中になる科学者なんかもいて、双方さして違いはないような気がする。 かなりダークなお話で1919年にすでにこの内容。精神医学の先駆国ドイツならではといえるのかもしれない。 すべて室内での撮影で、背景には湾曲した模様があちらこちらに描かれ、張りぼての建物は歪んでいる。不安を煽る、狂った奇妙な世界。カリガリ博士も、眠り男(ファイト)もとびきり不気味だ。 いたるところに病んだ精神の表現がされ、表現主義的なセットや工夫で溢れている。 カリガリ博士と後のヒトラーを結びつけて見たドイツ人もいたそうだけれど、それはまた別の話なのだそうだ。 監督 ロベルト・ウイーネ 製作 エリッヒ・ポマー 脚本 ハンス・ヤノヴィッツ カール・マイヤー 出演 コンラート・ファイト ヴェルナー・クラウス リル・ダゴファー フリードリッヒ・フェーヘル (モノクロ/サイレント/67分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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