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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:ドイツ映画
別館ブログにアップした『メトロポロリス』ですが、『死ぬまでに観たい映画1001本』に選ばれていることもあって、こちらにも。 すこしだけ、追記して。 映画史初のSF大作で、空想科学の世界を見事なセットと特撮で表現した、サイレント時代の金字塔。 2026年の未来社会、人間は、地上の楽園で暮らす支配者層と、地下の工場で働く労働者層にわかれていた。そんななか、労働者の娘マリア(B・ヘルム)の希望ある演説はみんなの心の支えだった。 地下に降りて労働者たちの現状を目の当たりにした、社長の息子フレーダ(グスタフ・フレーリッヒ)は、彼女とすぐに愛しあうようになる。 そこに社長と科学者が、マリアの顔を持つ人造人間を送り込み、ストライキの抑制を図ろうとするのだが・・・。ロボットは造反を起こし、労働者たちのストライキが扇動されて、地下工場は大パニックに陥ってしまう――。 ドイツ表現主義の作品といっていいのだろうか。 『カリガリ博士』ほどの、ねじ曲がった歪な不気味さはないものの、20年代製作とは思えないほど、スケール大きな近未来の悪夢が壮大に描かれていた。 労働者の娘マリアと、ロボットを二役で演じたB・ヘルムの演技たるや、見事というしかない。怖ろしい形相で皆を扇動する、彼女のギャップが一番おそろしい。 そして、地下工場の造形がまたすごいのだ。チャップリンの『モダン・タイムス』(1936)はここからインスピレーションを得たのかもしれないよ。そんな大がかりなセットと、機械にコキ使われる人間の非力さや虚しさが、いっぱいに表現されていた。 心優しい御曹司とマリアの恋は、定石どおりに実るハッピーエンド。物語ぜんたいも協調という形で、案外かんたんに収束はするが、文明社会にたいする警鐘は、いまなお褪せることなく、観る者を不安感に陥れる。すごい映画だった。 フリッツ・ラング監督が同名で90分の作品に作りなおした1984年製作『メトロポリス』も、いつか観てみたい。 彩色されて、現代的音楽がつけ加えられた復刻版というのだから、そそられないわけがない。 ちなみに、人造人間マリアのダンスはある意味で特筆事項か。まるで古代エジプトの宴のダンサーなのだった。裸に近い出で立ちで、腰をくねくね踊るなんて、とても20年代とは思えない。しかも豪遊の場は“ヨシワラ”。日本の遊郭は、どれだけ諸外国で有名だったのだろう。 監督/ フリッツ・ラング 製作/ エリッヒ・ポマー 脚本/ テア・フォン・ハルボウ フリッツ・ラング 音楽/ ゴットフリート・フッペルツ 出演/ アルフレート・アーベル ブリギッテ・ヘルム グスタフ・フレーリッヒ (モノクロ/104分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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