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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:ソ連・ロシア映画
タルコフスキー監督の長篇第1作。 ドイツの侵攻を受けた村で肉親を亡くし、斥候となった少年の運命を描く―――。 少年は村で凄惨な光景を目の当たりにしたに違いありません。両親は殺され、心に深い傷を負っていることは、明らか。 そんな彼が、あえて学校へ行くことを拒否して、大人に交じって戦いに出る思いが、痛いほど伝わってきました。 戦争映画ですが、戦闘シーンや残酷な場面は、あえて描かれません。 あるのは、親代わりの大人たちに囲まれた少年の、斥候としての立派な姿だけ。 しかし大人たちは、子どもは学校へ行くべきだと言いきかせ、彼のことを思うがゆえに任務から外し、戦場を追わせるのです―――。 戦争によって負った心の傷を、命がけで戦うことでしか癒せなかった、少年の思い。 精神力も自立心も勇敢さも、感動的だったけれど、あまりに悲しい性と思えて仕方ありませんでした。 骨と皮だけの細い体で、必死になって戦っている姿は、大人以上に凛々しくて立派なのが、なお更に悲しい。 抵抗空しく、戦場を後にした彼の運命は、しかし明るいものではないという皮肉。 戦争の虚しさを、無駄のない人間模様で描いた素晴らしい作品でした。 血なまぐさい描写は避け、タルコフスキー監督らしい幻想的なイメージが、巧みに挿入されているのがいい。 指揮官たちの人間模様・恋愛模様もさりげなく盛り込まれ、やはり水のイメージが強く、画面は生命力に溢れていました。 勝手な主観ですが、大好きなA・ワイダ監督を思い出しました。 無論、こちらはソ連映画らしく、ワイダ作品はポーランドで、お互いの国のカラーは強く出ているのですが、同じ戦争の描き方という面では、あえて血みどろにしない幻想的なに描かれ方が似ているようで。 後のワイダの名作『コルチャック先生』で感じた、救いのなさを、ラストのファンタジックな幕切れに、再び感じました。見事な演出。 監督 アンドレイ・タルコフスキー 脚本 ウラジミール・ボゴモーロフ ミハイル・パパワ 音楽 ヴァチェスラフ・オフチンニコフ 出演 コーリャ・ブルリャーエフ ワレンティン・ズブコフ E・ジャリコフ (モノクロ/94分/ソ連) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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